11話:王の素質(1)
「うちの部下に石を落とさせたのは伏線じゃなくて予算の問題ですよ。それにボスはライヒ様ですが」
シェーンは人の言葉で言うがドリットとフェルスは上級魔族に会った興奮から話を聞いていない。
「俺たちも楽しめそうだ」
ドリットが魔弾を撃とうとしたとき、シェーンは粘着質の液体を放つ。
地面に触れるとどんどん巨大化していく。
「魔弾か。それは見たかな」
魔弾を一発。
しかし、勢いよく地面に当たる。
「それは狙った獲物に必ず当たるというもの。地面のも私だからね、魔弾は意味ないと思うの」
「スライムの王、喋れるのか」
ドリットは魔弾を持って走り出した。
何度撃っても地面に当たる。
「くそ」
「諦めるのは早いわ。地面全体がスライムならすべて焼き払えばいいもの」
フェルスが杖をシェーンに向ける。
轟音とともに巨大な火の塊が形成されると、落下して爆風を生んだ。
「一撃で地面に撒いた私の一部と部下の半分がやられた。私、このままじゃ」
シェーンが地面に手を付けると紫色のスライムが出てきた。
スライムが飛ぶと大切そうに持つ。
「力借りるね」
シェーンが微笑むと紫色のスライムは跳ねる。
「シェーン様!」
シェーンの手から紫の雲が出る。
「ドリット、もう撃てるでしょ?」
「いや、まだそこら中にスライム王の破片が。それにあれ、毒スライムの技を借りて」
「そんな温いものではないわ。ドリットくん、魔弾使いなさい」
「使ってるが」
「属性を。スライムは魔法に弱いわ。魔弾避けとして撒いてある王の欠片を燃やしなさい」
「分かったよ。代わりに毒をなんとかしろよ」
「燃やすわ。スライムは炎が苦手だもの」
杖を回しながら炎を放つ。
紫の雲に着くと勢いを増していく。
「私まで燃える気はないわ」
「今度こそは俺にも頼むぞ」
「ドリットくん、今回だけはね」
フェルスとドリットを包むように靄が現れる。
炎はどんどん熱くなる。
そのときだった。
「痛いっ。ってスライム?」
フェルスは後ろから倒れた。
どうやらスライムが豪速で飛んできたらしい。
炎が消えた。
「炎は私も使えるわ。こんな感じの子、見たことないかしら」
シェーンが抱えていたのは紫色と赤色のスライム。
ドリットは目を開いて魔弾を構える。
「炎を使うスライムもいるわ」
「それには驚いた。本当よ?」
フェルスは笑った。
シェーンの腹部に穴が空いた。
その穴は光っている。
「光属性?」
シェーンは膝をつく。
「あなた、人の言葉に慣れてますね。何のためかは分かりませんが。だから私たちもですよ。私が炎魔法を使ってるのにドリットくんまで使わせる必要ないですよね、あははは」
「魔弾避けを燃やした一瞬、ようやく隙ができた。常時物理攻撃無効、そして属性持ちスライムの力を借りることでさらに魔法も無効化できる。しかし遠くまで飛ばしてしまったものは自分の欠片にも無効化を付与できない。欠片は炎の魔弾で消せる。あとはスライムで存在しないだろう属性で攻撃。光は魔族の天敵だからな」
ドリットは再び魔弾を構えた。
フェルスは杖を構える。
「勝つぞ」
「もちろん」
シェーンは明らかに対応速度が落ちていた。
ドリットの魔弾を急所に受けている。避けられないとはいえ、ダメージが少ない部位で庇えるはずだ。しかし、フェルスの魔法攻撃に対応すれば隙が生まれるのは仕方なかった。
「「シェーン様、俺たちが先に」」
魔弾はともかくフェルスの魔法攻撃ならとスライムたちが犠牲になる。
一撃ずつスライムが灰になって。
「「俺たち、シェーン様に死んでほしくないです。あのときみたいに」」
「ロートさん、ブラウさんがやつらに殺されています。意識の途切れ方的に魔弾です」
「私も意識を繋げてたわ。心配しないで三方は蘇るから。『蘇生の核』、怖がることなんてないでしょ?」
スライムの言葉に優しく答える。
ただおかしかった。
その言い方はまるで。
「「シェーン様、いなくなるつもりですか?」」
「あー、えっと。どうしたの、みんな」
「三方は蘇るってまるで、シェーン様は死んだら消滅するって」
「「なんだって!」」
「もしかして急に岩のトラップとか他の罠のためのスライムの増員、しかも『蘇生の核』を大量に準備できたのって。ゴブリンさん、オークさん、リザードマンさんの武器が良かったのって」
「バレちゃった? 私」
シェーンは涙を流した。
「私、また何かやっちゃいました?」
スライムが地面から次々と現れる。
他の階層で待機していたスライムたちがシェーンの言葉を聞いて集まってきたらしい。
「「絶対死なせない! シェーン様」」
スライムは冒険者を睨みつけた。
魔弾と魔法攻撃が来る。
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