10話:冒険者(4)
「下の階層行くぞ! あ、階段あった」
「気を付けろ!」
「何が?」
「大きな石じゃねえか! 上から降ってくるぞ」
階段を見つけると、フェルスははしゃぎながら行ってしまった。
案の定石が降ってきて。
魔弾で撃って砕いた。
ドリットは欠片が頭に当たってこぶができる。
なお、フェルスは風魔法で防いでいた。
やけにドリットに落ちた欠片は威力があったが。
フェルスは気づいていないのか鼻歌を歌っている。
「よく響くな。天井高そうなのに」
ドリットは天を見上げる。
地面からギルドの二階までの高さよりも高いだろう。
階段が二階建て民家の数倍の高さはありそうだ。
ドリットの視線の先には動く液体が見えた。
待て。
「スライムが石を落としてきたらしい」
「この迷宮やっぱり変だ。あらゆる罠が原始的。私たち、魔族の家にお邪魔しちゃったのかな? さあ勝負って感じではない。下級パーティなら」
フェルスが言いかけてやめる。
それだけの気配があった。
人の影が見える。
恐る恐る近づく。
迷宮に残る中級者パーティの一味か。
ドリットは否定する。
魔弾をその影に向けた。
「生きているのか、そいつらは」
ドリットが問う。
ドリットの前には粘着質の液体で身体を包まれた人たちが横たわっていた。
その影はフェルスより数歳年上くらいの女性に見えた。
人の世界ならまさに恋愛適齢期であり結婚適齢期であるだろう。
「冒険者さん。私ね、驚いた。私の部下を簡単に仕留めてしまうのだから」
女性から液体が溢れてくる。
あれはすべて。
「スライム? 魔族か。フェルス鑑定しろ。少なくとも俺はこいつを知らない」
フェルスは杖を掲げる。
「分かった。スライムクィーン? ぼけた字で浮かんでる。これって」
「どうした?」
「数回しか見たことないけど間違いない。こんなところの迷宮でどうして?」
「一体何があった」
「名前持ち。上級魔族だ。中級者が負けたのはこいつだ。名前はシェーン、全スライムの王様。だから、てきとーな罠ばかり。スライムが石を投げきたのはスライムの王のアピール。ここはスライムのダンジョンだったってこと! おそらく迷宮ボスはこいつよ!」
フェルスは興奮した様子で早口になる。
スライムの王は喋っているがフェルスはそれどころではない。
ドリットも楽しそうな相方を見て嬉しそうに魔弾を構えた。
「退屈なまま終わってしまうと思ってたぜ。スライムの王か。俺たちも楽しめそうだ」
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