3話:迷宮会議(2)
ライヒの家にて。
「ライヒ様、あれでは雇用募集の意見も出ないと思います!」
「僕らで決めればいい。予算も明らかに足りないんだ。さっさと倒された方がいい。『蘇生の核』は雇用するすべての魔族に必要なんだ。僕にもシェーンにももちろん購入しておく必要がある。力のある魔族の『蘇生の核』はより純度の高く高価なものが必要だが、複数蘇生して迷宮で戦う必要がない。僕やシェーンは一度でも討たれれば仕事は終わりだ。死んでもどうせ蘇る」
「そうですけど、私は迷宮を守りたいです。どうして負ける前提ですか? ライヒ様にはがっかりです。ご褒美の膝枕今日からしませんから。せっかくスライムのふわふわと人型ゆえの温もりを持った最も幸福なひと時を味わってもらう予定だったのに」
ライヒは首の裏に手を置く。
「もう少し詳しく」
「だから幸せなひと時を提供するつもりだったんですから」
「膝枕しろ」
「どうして? 今日のライヒ様にはがっかりなのでしませんよ?」
「そうか、分かった」
「分かってないと思います。死ぬんですよ、ライヒ様」
「どうせ生き返るだろ」
シェーンは粘着質を操って水のような塊を作る。
塊でライヒの頭を包んだ。
気泡が塊の表面に向かって浮いてくる。
全く抵抗をせずに窒息を待つライヒ。
シェーンは俯いて塊を割った。
ライヒは断続的で詰まったような呼吸を繰り返す。
「死ぬってことは苦しいってことですよ。スライムちゃんやリザードマンさん、オークさんは何度も死んだことがあります。私たちよりも慣れていますがそれでも怖かったそうです。私は一度だけ討たれたことがあります。冒険者を殺せずにいつの間にか隙を作ってしまって魔法で一撃」
だから逃げようか提案したんだが?
ライヒは思う。
それと同時にシェーンには譲れない思いがあることも分かっている。
「だからさっさと倒されて日常に戻った方がいい」
「違うんです。ライヒ様、死ぬのは怖いですよ? 痛くて復活するまで心細くて。ライヒ様には死を味わってほしくないです」
「分かった。これからどうするか考えさせろ」
「そうしましょう、ライヒ様。はい! 来てください!」
シェーンは正座をした。
つまりはそういうことだ。
だがなぜだ? 今日はしないのではなかったのか?
ライヒが躊躇っていると、シェーンはライヒの腕を引いてライヒを横に倒した。
「ライヒ様、難しいことを考えすぎです。もっと簡単に生きましょう、楽しく冒険者を返り討ちです。私、結構強いと思うので期待しててください」
「そうかよ」
「言い返す力が弱くなりましたね。今ならライヒ様の首を落とせそうです」
「随分物騒なことを言う部下だな。信頼できる者を集めたつもりだったが?」
「それだけ膝枕でふにゃって弱くなってしまうライヒ様も素敵です」
「そもそもシェーンの方が強いと思うが。僕の道具の意思を聞く力なんて殺しには向いていない。前の時代の石碑の文字を解読する、それくらいしか使えないだろ」
「いいえ。ライヒ様は強いです。私を迎えに来てくれたので」
「なんだそれ」
「観念しましたか?」
シェーンはライヒの頭を撫でる。
ライヒは目を瞑った。
「勝ちに行くぞ。シェーンが言いたいことが分かった気がする」
「良かったです、ライヒ様」
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