第10話 エインヘリアルシステム

「それで? 俺達が入れ替わるにはどうすればいいんだ?」


 イグニスが首から下げたオーブに問うと、『今から俺の言う通りに操作してくれるか?』と頼んできた。


『ヴァルキリーのシステムの中に〝エインヘリアルシステム〟っていうのがあるはずだ。先ずはそれを起動させてほしい』

「わかった、探してみるよ」


 素直に返事をしたものの、そんなシステム名は聞いた事がなかったので、イグニスは半信半疑のまま手を動かし続ける。


「エインヘリアル……エインヘリアル……あった!」


 イグニスがエンターキーを押すと、モニターに〝EINHERJARエインヘリアル SYSTEMシステム〟という文字が浮かび上がったが、すぐに三角形の記号と〝WARNING〟という文字が大きく表示される。


 その後、モニター上に見た事のない文字で書かれたウィンドウが何個も表示され、イグニスは驚いて「わっ!?」と声をあげてしまう。


「な、なんだよこれ。注意書きが読めねぇんだけど……」

『遥か昔、地球で使われていた古い言語で〝パイロットとオーブの魂を入れ替えますか?〟って書かれてるんだ。もしかしたら、ヴァルキリーには俺達が知らないシステムがまだ搭載されてるかもしれないぜ?』


 愉快そうに笑う声が聞こえてきたが、イグニスは興味本位でヴァルキリーのシステムを弄らないようにしようと心に決めたのだった。


「それで? 次はどうすればいいんだ?」

『パイロットがオーブとシンクロした後に〝エインヘリアルシステム〟を起動させるだけだ』


 イグニスは拍子抜けしたかのように「え、そんな簡単にできるのか?」と聞き返していた。


「俺、さっきの話を聞いて完全同調フルシンクロしたら入れ替われるって思ってたんだけど……」

『俺は一時的にって言ったはずだぜ? 完全同調フルシンクロはパイロットとオーブの意識が重なってる状態で、根本的には入れ替わってないんだ。だから〝エインヘリアルシステム〟を使って中身を完全に入れ替えるってわけ』


 イグニスは完全同調フルシンクロをした事がなかったので、オーブの言っている事に多少の疑問を抱きつつも、「成程。じゃあ、さっさとやろうぜ」と軽い感じで声をかけると、『さっきまでの反応とはえらい違いだな?』と返されてしまった。


『さっきまでそんな口約束、信用できるかよ! って言ってたくせに。随分と積極的になったじゃないか』

「うっせぇよ。さっき二人で助けるって決めただろ?」


 照れ臭そうに言うイグニスの台詞を聞いたオーブは『あぁ、それもそうだな』と嬉しそうに口角を上げたような気がした。


『さぁ、始めよう。心を落ち着けて集中するんだ』


 目を瞑ったイグニスはオーブに意識を傾け始めた――。

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