第14話 妖精のお宿

広場には屋台があり、時間的にチラホラと買い物客も集まって来ている。


「エリナベル、先ずは宿の確保をしたい。その後に冒険者ギルドに行こう」


「そうね、休む所を確保しないと大きな街だから大変なことになりそうだわ。屋台で食べ物を購入した時に屋台の人におすすめを聞くのはどうかしら?」


「それ良いね。そうしよう。エリナベルは何が食べたい?」


「あの葉野菜と肉を挟んだパンが食べてみたいわ。ソースはトマトかしら」


「美味しそうだ、売ってるおばさんも人が良さそうだしあそこのパンを買って話しかけてみよう」


俺達は、丸パンを上下に切りその間に葉野菜と薄く切った肉をサンドしたパンを売っている屋台の前に行くと、


「2つ下さい」


と屋台のおばさんに言う。おばさんは、


「2つだね。今紙に包んであげるから待ってな。1つ500ファル銅貨5枚だよ」


俺はおばさんに銀貨1枚を渡す。


「はい。丁度だね。ありがとね。」


「すいません。俺達違う土地から来たので、宿屋を探しているんですが、何処か良い宿屋を知りませんか」


「それなら、あっちの大通りを行って3本目の路地を左に曲がって2本目の裏道を右に曲がって少し行くと《妖精のお宿》って宿屋があるからそこがおすすめだよ」


「3つ目を左に2つ目を右ですね。ありがとう」


「頑張って」


おばさんに聞いた宿屋を見付ける為にパンはマジックバックに仕舞い、大通りを進む、3本目の路地を曲がり、2本目の裏通りを右に曲がると、宿屋の看板が見えた。


「あった!」


声をあげるエリナベルの手を引いて、宿屋の扉を開けると、


「いらっしゃい。泊まりですか?食事はもうすぐ出せますけど待ちますか?」


「東の広場で聞いて来て、泊まりたいです」


「泊まりですね。部屋は空いていますよ。1人部屋ですか?2人部屋ですか?」


カウンターにいる若い女性から部屋の希望聞かれるとエリナベルが、


「2人部屋を1つお願いします」


と俺が言う前に言われてしまった。


「2人部屋ですね。1部屋で1泊16000ファルになります。金貨一枚と銀貨6枚ですね。夕食と朝食をつけると18000ファルになります。」


「今日から食事付で7泊お願いします」


「では126000ファル。金貨12枚と銀貨6枚を前金でお願いします」


エリナベルが出そうとしたのを止めて俺が金貨13枚をフロントに置く。


「金貨13枚ですね。銀貨4枚のお返しになります。夕食は、後1時間後に用意できますよ。お部屋は2階の突き当り201号室です。ようこそ。妖精のお宿へ、当宿は各部屋に浄化機能が付いたトイレと暖かいお湯の出る魔道具の付いた洗い場を完備しています。

ゆっくりとおくつろぎ下さい」


「「ありがとう」」


階段を昇り、突き当りの部屋を鍵を開けて、入室する。壁はクリーム色でベッドは2つあり。鏡台まであった。1人掛けのソファーが2つ対面で置いてありローテーブルも配置されている。扉が2つあり、1つはトイレでもう1つは洗い場になっていて、桶とたらいが置いてあり、壁に蛇口が設置されていてハンドルを回すと暖かいお湯が出て来た。エリナベルは


「座って用が足せるトイレに、お湯が出る洗い場があるなんて凄いわ、アステルここに逗留しましょうよ」


「うん。この街にいる限りここを拠点としようか」


「そうと決まればお金を稼がないよね」


「そうだね。頑張ろう」


「頑張るわ」


「宿の確保は出来たから、早速冒険者ギルドに行こう」


「そうね、仕事を終わらせないとね」


部屋を出て1階のカウンターで受付をしてくれた女性に部屋の鍵を戻す。


「今から冒険者ギルドに行きたいのだけど、場所知ってますか?」


「本部?それとも支部?」


「ギルドマスターに手紙を配達する依頼を受けてここまで来たので多分本部?」


「ギルドマスターなら本部ね。これ無くさないようにね。帰ってきた時このフロントへ出して下さい。鍵と交換しますので、冒険者ギルドの本部は、宿を出て左に真っ直ぐ行くと大通りに出ます、それを右に曲がって左手にある大きな建物が冒険者ギルドの本部ですよ」


「「ありがとう」」


木札を受け取って、宿を出ると左を向き道に沿って大通りを目指す。大通りに出ると左手に大きな建物がありその入り口の上に盾と剣と杖が交差する看板があった。


「ここみたいだね」


「お姉さんの言う通りにあったわね」


「入ってみよう」


「ええ」


扉を開けて中に入ると、両脇に帯剣した制服を着た警備の人らしき2人が立っていた。

こちらを一瞥すると直ぐにフロアへと顔を戻す。1階フロアに仕切りは無く、中央には円形のカウンターに〝総合案内〟と書かれた受付があったので、その前に移動し接客していない女性スタッフに、


「すいません。リスホルン王国の王都にある冒険者ギルドマスターからこちらのギルドマスターへの手紙の配達業務で来ました。これが依頼書です」


「はい、確認しますね。はい間違いありませんね。ですが本日ギルドマスターはご領主様に呼ばれてご不在です。明日の朝ならいますので、明日もう一度お越し下さい。」


「分かりました。明日の朝改めて来ます」


ギルドマスター不在との事で、仕方無く宿に戻る事にした。


「今日終わるかと思ったけど、こう云う事も有るのね。私の初仕事中々終わらないわ」


「そうだね。エリナベルは初仕事になるんだね。明日の朝もう一度来て、終わらしたら街を散策しよう」


「良いわね。明日が待ち遠しいわ」


空振りながらも明日を楽しみに宿屋に戻るのであった。



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