第15話 帝国の冒険者ギルド
翌朝、陽差しを浴びて目を醒ます。隣を見るとエリナベルはまだ寝ていた。起こさない様に起きて身支度をすると部屋を出て、1階に降りる。既に食堂では食事をしている冒険者の装いの人が何人かいた。
カウンターにいる女性スタッフに、
「すみません。201号室に泊まっている者ですが食事って出来ますか?」
「おはようございます。うちは冒険者の方が泊まっているから食事は早めに出していますから直ぐにご用意出来ますよ。ご用意しますか?」
「相方が来てからもう一度伺います」
「ではお待ちしてますね」
俺は部屋に戻ると、エリナベルが起きていたので、
「おはようエリナベル、もう朝食食べれるって。食堂を観に行ったらもう既に冒険者の人が何人も食事してた」
「おはよう。アステル。冒険者って早起きなのね。私も早く起きれるように頑張らないと…。でもこのベッドの誘惑には逆らえる自信が無いわ」
「除々に慣れていけば良いよ。今までの生活が酷かったのだろうから。俺は支度出来ているから、先に降りて食事頼んでおくね。鍵を掛けて降りて来て」
「うん。分かったわ。急いで支度して食堂に行く」
俺は先に降りて女性スタッフに、
「連れはもうすぐ降りてきますが先に食事をお願いします」
「分かりました。直ぐにご用意しますね」
そして出された食事は、鳥肉の入ったトマト煮スープと厚切り燻製肉を焼いたステーキと葉野菜にビネガーソースが絡めたサラダそれにバターロールパン。パンは2人分だそうで4個も置かれた。
それをゆっくり味わっていると、階段を降りてくるエリナベルを見付けて手を振る。
エリナベルも俺を発見して手を振り返して来た。そして女性スタッフに鍵を預けて木札を貰い、食事をお願いしてこちらにやって来た。
「お待たせ。朝食も美味しそうね」
「うん。美味しいよ。座って」
エリナベルが席につくと今日の予定を相談する。
「今日は、冒険者ギルドに行って手紙を渡したらどうする?」
「ギルドの講習があれば受けたいわ。私、何も教わって来なかったから、色々学びたい」
「そうだね。ギルドで相談してみよう」
「でも、アステルは講習を受けているのでしょ?どうするの?」
「ソレイユとヘクトルを登録出来ないか相談して出来たら2頭と魔物討伐に行きたいかな」
「そうね。ヘクトルと合いたいなぁ。街中に入れるか分からないから会っていないものね。近くにいるのかしら?」
「気配感知で探ったら東の森に親子で居る気配がするから、大丈夫だよ」
「そう良かったわ」
会話に夢中で食事を中断していたら、エリナベルの食事が届いた。俺達は食事を再開して食べ終えると冒険者ギルドに向けて移動を始めた。
宿屋前の裏通りから大通りに出て冒険者ギルドに入って行くと昨日とは打って変わって冒険が依頼探しに集まっていた。しかしピークは過ぎている様で、依頼の貼られた掲示板を見ている冒険者達はじっくりと掲示板を眺めて、並べられているベンチに座りながら予定を話し合っている冒険者達もいた。
俺達は総合受付の女性スタッフに声を掛ける。
「すいません。昨日、リスホルン王国の王都にある冒険者ギルドマスターからこちらのギルドマスターへの手紙の配達業務で来ましたがギルドマスターが不在だったので改めて今日来ました。これが依頼書です」
「拝見します。……依頼書とこの木札を持って〝1〟と書かれたカウンターに出して下さい」
依頼書と木札を受け取り、1番のカウンターにエリナベルと向かう。1と表示されたカウンターに居る女性スタッフに、
「総合受付でこちらに行く様に言われて来ました。木札と依頼書です」
「拝見します。木札はそのままお持ち下さい。報酬の引き換え札になりますので、……では手紙をお預かり致しますので提出をお願い致します。お預かりしましたら直ぐにギルドマスターへ届けて依頼書に受領サインを貰います。そして依頼完遂となりますので報酬をお渡し致します。」
「分かりました。これが手紙です」
女性スタッフに手紙を渡す。
では手紙を渡してきますのでそれまで、ベンチに座ってお待ち下さい。私は、ギルド職員のジュリアルと申します。お二人のお名前をお聞きしても」
「アステルです」
「エリナベルです」
「アステル君とエリナベルさんですね。後ほどお呼びしますので掛けてお待ち下さい」
そう告げてジュリアルは席を立ち奥へと引っ込んだ。
「アステル君、エリナベルさん。手紙の件でギルドマスターからお話があるそうです。執務室までご同行願います」
「「分かりました」」
ジュリアルの後に付いて扉を進むと直ぐに階段がありそれを上がっていく。3階まで上がると廊下の突き当たりにある。扉をジュリアルがノックする。すると扉の向こう側から、
「どうぞ」
と声がしてジュリアルが扉を開けて一緒に中へと入る。
「アステルさんとエリナベルさんをお連れいたしました」
「ジュリアル君、ご苦労さまついでに、お茶の用意をお願い出来ないかね」
「畏まりました。直ぐにご用意します」
ジュリアルはお茶を用意する為、執務室を後にした。
「アステル君、エリナベルさんだったね。そこのソファーに掛けて、少しお話をしよう」
俺達は応接セットのソファーに腰掛ける。ギルドマスターも対面に座ると、
「よく頑張ったね。事情は手紙を読んで理解した。私が生きているうちに2人の文字化け……。正確には神に祝福された職業に出会うとは思わなかったよ。おっと、自己紹介をしなくてはね。私はここのギルドマスターをしているフィリウス・フォン・ライプストールと云う。一応帝国から子爵位を賜わっている」
「ライプストールって、ここの領地のご領主様の……」
「領主は私の甥だね。私は先代領主の弟で、現役時代はA級冒険者だったんだよ。王都ギルドマスターのドラムスは私の冒険者仲間であり弟分でね。良く助けてやったもんだ。
そのドラムスが手紙で君達を助けてやって欲しいと書いて寄越している。それで提案なんだが、私のところに養子に来ないかい?」
まさかの提案だった。
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