第12話 初めてのお買い物

商業ギルドを出て、帝国通貨を手にした俺達は、先ず洋服を購入する為に古着屋を探す。

エリナベルの着替えを購入する為だ。

エリナベルは王都から逃げ出してから、何処にも寄らなかった為に、着替えを持っていない。道中、浄化を使っている為に着ているワンピースは汚れては居ないが、生地が傷んでいるし、成長しているので小さくなっている。


「それじゃあ、帝国のお金も手に入ったしお買い物をしよう!」


「えっ、お買い物ってお店で服を買ったりして良いの?私初めてだから緊張する」


「大丈夫!俺が付いているから。先ずは、エリナベルの肌着や洋服を買いに行こう」


「ぐふっ、着替えが手に入るなんて…うっ」


エリナベルは目に涙を浮かべて、下を向き肩を震わせて口に手を当てて鳴き声が出ない様に嗚咽していた。俺はエリナベルのフードを頭に被せて肩に腕を回し、支えながら歩幅を合わしてゆっくりと歩いた。

気持ちが落ち着いたのか、泣き止んだエリナベルに、


「これからは楽しい事しか無い様に、俺が頑張るから今までの事は忘れて楽しもう!先ずは、好きなだけ洋服を見て廻ろうか」


「ふ〜っ。泣いてしまってごめんなさい。今まで自分で服を選んで着るなんてさせて貰わなかったから、何故か悲しみが込み上げちゃって、もう本当に私を縛るものは無いのよね。これからが楽しみで仕方ないわ。私はもう1人じゃない!」


「そうだ!何があっても俺が側にいて何時までも守ってやる」


「ありがとう。アステル。」


「良し!早速、古着になっちゃうけど洋服を買いに行こう」


復活したエリナベルを連れて古着屋を探すと大通りから少し路地に入った所に、古着屋さんを見付けた。そこのお店に入って行くと、

白髪のお婆さんがカウンターの奥に座っていた。


「いらっしゃい。勝手に見ていって良いからね。購入する物はこっちに持ってきておくれ」


「「はい」」


「エリナベル、先に下着や肌着を買いなよ。その間に俺も、自分の分を探すから」


「分かったわ。それまで別行動ね」


エリナベルと別れて自分の分を探す。この古着屋は古着と云うより、古い生地を仕立て直した様な服を売っている様だった。袖や襟などに擦れて傷んでいる物が無い。男性用の下着もトランクス型の下着で腰回りに紐が通してあった。サイズは3種類しかなく色もクリーム色しか無いので一番小さい物を選ぶ。

少し大きいが充分履けるので、それを5枚取り出して、次にTシャツ型の肌着を見付けてそれもクリーム色しか無いが一番小さい物を3枚手に取るとお婆さんの所に持って行く。


「これください」


「はいはい。パンツは5枚で銀貨5枚だよ。綿シャツは3枚で銀貨6枚だ。」


俺はマジックポーチから銀貨11枚を取り出してカウンターに置く。


「はい。ありがとね」


購入した下着と肌着をマジックバックにしまって、ズボンを探しに戻る。エリナベルを見掛けたがワンピースを物色中の様だった。

俺もズボンを物色して、やはり大きいが黒と紺のズボン2つをキープしてシャツをを見るその中の一番小さいサイズを3枚キープすると黒のジャケットを1枚見付けてそれを持ってカウンターへと移動する。


「これで全部だね。ズボンが2つで銀貨10枚、シャツが3つで銀貨9枚ジャケットが銀貨7枚。全部で銀貨26枚だよ」


値段を聞いて、金貨3枚を取り出し、カウンターに置く。


「金貨3枚だね。それだと銀貨4枚のお釣りだね」


お婆さんは、カウンターの下から銀貨4枚を取り出すとカウンターに置く。俺は購入した衣類をマジックバックに収納して、お釣りを、皮袋を取り出し仕舞った。店を見渡し、エリナベルを見付けると、側に移動して、


「エリナベル、俺の方は終わったよ」


「アステル。私、初めてだから色々あってどれが良いか迷っちゃう。アステル、こっちとこっちどっちが良い?」


白とピンクのワンピースを交互に身体に当てて尋ねてくる。


「どっちも似合っているから2つとも買いなよ。着替えはあった方が良いし、マジックバックだから持ち運べない事も無いから、お金に余裕も有るしね」


「えっ。良いの。」


はにかみながら尋ねて来る。


「良いよ。良いよ」


「じゃあ。この2枚買っちゃうね。それとこのスカートとこっちのスカートも」


黒のスカートとベージュのスカートをキープし、白とピンクのワンピースと重ねて持つ。それを、


「俺が持つから貸してごらん。未だ上着が必要だろ」


そう言って、エリナベルの持つスカートとワンピースを引き取る。


「ありがとう。シャツを観に行くわ」


エリナベルは手ぶらになり上着を物色する。

ブラウスを3枚と茶と紺のジャケットを持って、


「これで良いわ。支払いに行きましょう」


そう言って、カウンターに移動する。俺も後ろに付いて行く。


「決まったのかい」


「はい。これとアステル置いて。これで全部です」


「どれどれ。ワンピースが2つで銀貨14枚、スカートが2つで銀貨8枚、ブラウスが3枚で銀貨12枚、ジャケットが2つで16枚、合計銀貨50枚だよ」


「アステル、銀貨50枚って」


「金貨5枚だよ」


「ひっ。金貨5枚」


そう驚きながらマジックポーチから、金貨の入った皮袋を取り出し、金貨5枚をカウンターに置く。


「丁度だね。ありがとうね」


エリナベルは肩に掛けたマジックバックに購入した衣類を収納する。そして、軽く会釈をして店を出た。


「なんか疲れてしまったわ。アステル、宿に戻りましょう」


「そうだな。戻るか」


こうして、買い物を終了して、宿屋へと戻った。

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