第11話 追手の混乱
既に第5王女が隣国に渡った事を知らない追手達は、未だ、国境から300km手前の町で捜索を行っていた。
SIDE 第一騎士団副団長ランソール
「どうだ、何か見つかったか?」
私は戻って来た部下達に王女の手掛かりが無かったか確認するが、
「全く駄目です。銀髪碧眼なんて少女は珍しいですから目立つ筈なのに目撃情報は一切ありません。どうした事でしょう」
「何処にも立ち寄らず、誰にも目撃されないなんて事が可能なのでしょうか?」
そんな部下達の報告に私も頭をかしげる。
「解らん。しかし、現に手掛かりすら掴めていない以上、何かしらのスキルで移動しているのだろうなぁ」
そんな私の言葉に、一人の部下が、
「それにしても、食事はどうしているのでしょう。連れ去った人物がいたとしても既に7日間も経っています。2人7日間分の食料ともなればソロソロ食料も底を付いている筈ですよね。森で何やら採取して凌いでいるのでしょうか?
しかもあの大河をどういう経路で橋を渡らず進んだのでしょう」
そうなんだ、私もあの大河をどうやって渡ったのかが気になっている。それとも未だ大河を渡ってはいない?
「とは云え、帝国に向かっていると王女を追えと命令を受けている以上国境までは進むしかない。後は後続部隊に任せて先を急ぐぞ」
「「「「「「「「了解です」」」」」」」」
また1名を残して国境に向かって先に進む。
翌日の夕方には次の町に到着するがやはり手掛かりが見付からない。
「どんなスキルを使えば、食料も無く手掛かりも残さないで進めるのだ。本当にこちらの帝国に進んだのか?」
私の独り言を部下が拾って、
「副団長、先ずは領主の所へ向かいましょう。そして、寝る所を確保してから皆で今後について検討会をしましょう」
「そうだな。ここで考え込んでも仕方無い。移動しよう」
聞き取りをしていた城門の屯所を出て領主のいる館へと向かい、この地を収める子爵に挨拶と兵舎への宿泊をお願いして、快諾されると晩餐の招待を丁重にお断りして兵舎に案内して貰い、鎧を脱いで皆を連れて町の食堂へと繰り出した。
部下の一人が子爵の騎士から広くて美味しい店を聞いて来たと言うので先導させ、その店へと入る。
「酒はエールだけだぞ。食事は任せる」
「了解です」
こうして、エールが木のジョッキで出され、いくつかの料理が並ぶと、
「取り敢えず、3分2まで工程が終了したが何の手掛かりも無い。しかし、ここまでお疲れさん。乾杯」
「「「「「「「「乾杯」」」」」」」」
ここまでの強行軍で疲れていると思い、部下達に
そして自分の席に戻ると、エールを飲みながら手掛かりの無さを思案していると、隣に座っている部下から、
「しかし、どんなスキルや魔法を使えば手掛かりや目撃されずに進む事が出来るんでしょうかね。認識阻害?隠形?それとも幻覚系の魔法とかですかね?それを使ったとしても持続は良いとこ1時間でしょう。何かしらの手掛かりはが残る気がするのですが」
それを聞きた反対側に座っている部下が、
「そうなると、第5王女は文字化け職業だからもしかすると膨大な魔力を所持していて、それで様々なスキルや魔法を習得出来るとすればどうでしょうか。もしかすると大賢者の上位互換職業だったりして。まさか転移スキルを習得したとか」
それを聞いた別の部下が、
「そんなもんあるわけ無いだろ。転移なんて膨大な魔力と想像力と長い詠唱が必要って聞いたぜ。しかも大賢者の上ってそれはもう魔神じゃねぇか。人じゃなくなってるぞ。無い無い」
「だよなぁ。現実味が無いよなぁ」
そうなのだ、職業授与を受けてその後直ぐ、幽閉されていた王女にはスキルや魔法を勉強する機会も訓練する機会も与えられてはいないと聞いている。結局結論が出ないまま店を後にし兵舎へ戻ると、そのまま就寝となった。
翌朝、陽の出と共に騎乗すると、国境に向けて出発する。西への街道の町に寄っては手掛かりを探し、王都を出発して10日目に
そこで門番に、
「銀髪碧眼の10歳〜11歳ぐらいの女の子がここに来なかったか?」
「銀髪碧眼の少女でしたら、4日前に冒険者ギルドカードで入って行来ましたよ。この国じゃ銀髪は珍しいですからね。覚えています」
「なに!ギルドカードを見たのだな。名前はエリナベルではなかったか!」
「名前までは覚えていませんが、同じ年頃の男の子と一緒に帝国のギルドマスターへ手紙を届ける依頼を受けたと言ってましたね」
ようやく、手掛かりを見付けたが、4日も前の事であれば既に帝国に行ってしまっているだろう。私達は、国境の検問所へ向う。
案の定、既にその日のうちに出国していた。
「副団長、これではどうしようも有りませんね。我々が越境する訳には行きません。王都へ戻り、報告しましょう」
「そうだな、王都から国境まで10日で辿り着いたんだ。これだって充分早い到着だ、それより早く進まれたら、どうにも出来ない。仕方ないが戻って報告しよう」
言葉とは裏腹に私は嬉しくって仕方が無かった。この失敗を理由に責任を取って騎士団を辞職し私の愛した女性の忘れ形見を追い掛けようと、心に誓った。
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