第8話 逃亡5日目とスレイプニルとの出会い
王都から逃げ出して5日目の朝を迎えた。これまでの4日間で夜通し走り続けて600km以上を走破した事になる。流石に体力、魔力共に復活出来そうに無いので、森に入って寝床になりそうな場所を探して眠りたい。
そうして、森の奥へと進んでいると泉とその脇に洞窟を見つけた。
エリナベルと俺は、迷わず洞窟に入るとそこは入口から想像出来ない程の広い空間が広がっていた。
奥行きがあり人が5000人入ってもまだ余裕が有りそうな程の広さがあった。
「凄いわね〜。しかもあっちから光が差し込んでいるわ」
「本当に凄いね。こんな洞窟なのに生き物が居ないのが逆に怖いけど。取り敢えず、隅っこで休もう」
「そうね。流石に疲れてしまったわ。少し眠って体力や魔力を回復させましょう」
俺達は、入って来た入口から離れて左側にあった凹みに腰を落ち着けて、王宮から頂いて来た毛布を地面敷いて横になり眠った。
眠っていると誰かに身体を揺すられる感じがしたので目を開けると馬の顔がドアップで目の前にあった。俺はびっくりして、
「うわっ!」
と叫び飛び起きた。俺の叫び声でエリナベルも起きて、
「キャ〜〜」
と叫びながら俺に抱きついて来た。
そこに居たのは漆黒のスレイプニルだった。
体高は3m頭の高さは地上4m全長は7m程の巨体がそこにはあった。その後ろにはポニーの様な子供のスレイプニルが後ろに隠れている。
〘これこれ、煩くしないでうちの子がびっくりしてるわ〙
「エリナベル、今何か聞こえてけど」
「アステルも?私も聞こえたわ。もしかして貴方が喋っているの?それに後ろにいるのが、貴方のお子さん?」
〘そうよ。私達はスレイプニルの親子よ。貴方達、神の愛し子ね。気持ち良い魔力が漏れ出ているわ。貴方達だったら従魔契約してあげても良いわよ〙
「えっ。俺、テイム覚えたっけ……。あっ!そうか、エリナベルのウルフとのテイムを見たから覚えたんだ。エリナベル、俺がスレイプニルと従魔契約しても良いか?」
「構わないけど、連れて旅に行けるの?」
〘問題無いわよ。貴方達この場所から移動したいのでしょう?私なら魔力さえ貰えれば何処までだって、連れて行ってあげられるわよ〙
〘かあしゃん、どっか行くにょ?〙
〘貴方も一緒に行くのよ〙
「エリナベルは子供と契約すれば?」
「私は良いけど」
〘そうしてくれれば私も嬉しいわ!息子と離ればなれにならなくて良いもの〙
「そう云う事なら宜しくお願いします」
「では、俺から」
スレイプニルの額に手を当てて魔力を流しながら「テイム、ソレイユ」と唱えると、朝顔の花びらの様な紋様が浮かび上がった。
その後、スレイプニルと繋がった感触を覚えた。
「上手く行った様だ。君の名はソレイユだ。俺の名はアステルだ。宜しく」
〘私はソレイユね。良い響きの名だわ。さあ貴方も契約するのよ〙
ソレイユは、子供をエリナベルの前に誘導して来る。スレイプニルの子供は
「可愛いわ〜。それじゃあ契約しましょうね。〝テイム ヘクトル〟」
スレイプニルの子供の額に5つの桜の花びらを
〘かあしゃん、何か気持ち良かったよ〙
〘そうね。気持ち良かったわね。それで貴方はヘクトルという名が付いたからこれからはヘクトルと呼ぶわね〙
〘僕はヘクトル!〙
〘そう。ヘクトルよ〙
「ヘクトル、私はエリナベル。宜しくね」
〘エリナベル?分かった!〙
「ソレイユ、ここは君等の住まいなのか?」
〘そう云う訳では無いけど、仮住まいしているわね。元々、大型獣が住んでいたみたい。多分、グリフォンだわ。上に穴が空いているもの。この環境なら子育てには申し分ないわ〙
「ところで、貴方達の食事はどうすれば良いの?」
「私達の食事は、契約者の魔力よそれを私達に触れて流して貰えれば良いわ。それが出来ない時は薬草か魔物の魔石ね」
「そうなんだ。分かったわ」
「それじゃあ。流してあげるよ」
俺はソレイユの首に触れて魔力を流すが直ぐ流れなくなった。
「えっ、もう良いのか?」
〘充分頂いたわ。〙
「私も、ヘクトルにあげるわね」
エリナベルもヘクトルの首に手を当てて魔力を流すが直ぐに止まる。
「思っていたよりも少ないわ」
「本当にそうだね」
〘では移動しましょう〙
「夜になりそうだけど移動して大丈夫なのか?」
〘問題ないわ。だって私達幻獣なのよ。そんなに睡眠は必要無いわ〙
「えっ。スレイプニルって幻獣なの?」
〘そうよ。魔物や魔獣は人の言葉を念話する事は出来ないわよ。出来るのは幻獣か神獣ね。それじゃあ早速移動しましょう〙
ソレイユはそう言うと、足を折って俺たちが乗りやすいようにしてくれた。2人でソレイユに騎乗すると立ち上がり洞窟を出る。
ヘクトルもしっかり後ろから付いて来る。
外に出るとソレイユは徐々に加速して行く。それに合わせてヘクトルも加速する。
そうして、俺が進むよりも早く疾走するソレイユ親子に感謝しながら、ふと向かい風を受けていない事に気付く。
「ソレイユもしかして、風の障壁を掛けているのか?」
〘そうよ。早く走る為には当然でしょう〙
それで、ヘクトルが真後ろにピッタリと追従している訳だ。そんな事を感心していると、後ろに乗っているエリナベルが俺に寄り掛かって来た。多分寝てしまったのだろう。
揺れもそれほど酷く無く、
俺は、エリナベルの腕をしっかり掴んで振り落とされない様に気を配った。
「ソレイユ、もう少し右の方角にズレて移動してくれ」
〘分かったわ〙
そうして西の街道に少しずつ近づきながらも森の中を疾走して行く。そしてとうとう森を抜けて草原に出る頃には、東の空が明るくなって来た。そして
「ソレイユ、ここら辺りで良いよ。俺達はあの先にある町の向こう側に行く。何とか回り込んで来てくれないか?」
〘分かったわ。私たちにはテイムの繋がりがあるからそれを辿って会いに行くからあちら側で落ち合いましょう〙
〘あぁ。また後で〙
こうして、草原で降ろしてもらうと国境の町へ2人で歩み始めた。
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