第9話 逃亡6日目と国境の町
スレイプニルのソレイユ、ヘクトル親子と暫しの別れをして街道を目指して2人で草原を歩く。
「
「あぁ。やっと辿り着いた。後は向こう側に行くだけだ。カバーストーリー覚えているかい」
「えぇ。私達の両親は冒険者のパーティーを組んでいて魔物にやられて全滅してしまった。残された私達は、帝国にいる親戚の所に向かうという設定よね」
「その通り。そしてこの依頼書を見せる。依頼内容は、帝国のギルドマスターに手紙を渡す依頼。あっ、エリナベルのマジックバックの中に、杖が入っているはずそれを出して持ってなよ」
「どうして?」
「駆け出しの冒険者が武器も持たずに街道を
エリナベルはマジックバックから杖を取り出す。少し捻れた古臭い杖に上には水晶のような透明な珠が埋め込まれていた。
そして、ローブの中で巻いていたマジックポーチをローブの上から腰に巻き直す。
俺もマジックバックから剣帯と短剣を取り出す。これも宝物庫から一番地味な何本もあった物を頂戴して来た。それを、マジックポーチをローブの上から巻き直して剣帯を装着して短剣を剣帯に通す。フードを頭から外して、お頭と顔が見える様にする。
エリナベルも同じ様にフードを外した。
国境の町の城門前には既に50人程の人々が検問を受ける為並んでいた。小一時間待ってとうとう俺たち番が廻ってきた。
「身分証を」
そう言われて、ギルドカードを出す。
それを受け取った門番は、直ぐ返して来て、
「行って良し」
と拍子抜けする程すんなり街に入ることが出来た。問題は国境の検問だろうと気を引き締める。
「多分、この検問より国境の検問が厳しいはずだから、気を引き締めて行こう」
「そうね。次が本番よね」
そうしてリスホルン王国国境用の依頼書を間違いが無いか確認し手に持つ、そして国境の検問へと続く行列に並ぶ。ここでも小一時間程待たされて、俺たち順番となった。
「身分証の提示と越境目的地を話せ」
俺とエリナベルはギルドカードを提出して、俺が越境目的を話す。
「帝国側の冒険者ギルドへ手紙を配達する依頼を受けてここに来ました」
「そうか、それを証明する物を持っているか?」
「はい、これが依頼書です」
門番にギルドの依頼書を渡す。門番はそれを見て、確認するとギルドカードと一緒に返してくる。
「行って良し」
ここでも、何の追求も無くすんなり通る事が出来た。残るは帝国側の検問だけだ。後200m程で、王国ともオサラバする事になるはず、ここでさっきの依頼書からイフリートリッツ帝国国境用に取り替える。そしてギルドマスター宛の手紙も依頼書と一緒に手に持って検問所の列に並ぶ。ここでも小一時間程待って順番が廻って来た。
「身分証と入国理由を話せ」
俺とエリナベルのギルドカードを提出し、冒険者ギルドへの手紙配達依頼を受けてやって来た事、両親が魔物にやられて親類の住むライプストール辺境伯領で冒険者をやって行くと告げると依頼書と冒険者ギルドマスター宛の手紙を門番に渡す。
「そうか大変だったな。これは返す。最後にこの水晶を触りなさい。」
と言われたので水晶を
「問題無し、行って良し」
と言われて、エリナベルは腰が抜けた様で杖で身体を支えながらトボトボと歩いているので、俺は身体強化を使いエリナベルの腰を抱いて支えて帝国側の国境の町へと入って行く。しばらく歩いて左に逸れるとその先には小綺麗な宿屋看板を見ると〝白山羊亭〟とあった。
「エリナベル、取り敢えず、この宿屋に一泊しよう。ソレイユ達とは明日合流する様にしよう」
「今までの苦労が報われたと思ったら腰が抜けちゃってごめんなさい」
「しょうが無いよ。あんな仕打ちを受けて、この1週間は追手を気にしながらの逃亡だったしね。その全てから開放されたんだ腰も抜けるよ。さあ、今日はゆっくりしよう」
俺達は、宿屋〝白山羊亭〟の扉を開き中に入ると、1階は食堂になっており、4人掛けのテーブルが並んでいる奥にカウンターがありそこに茶髪濃紺で少しポッチャリの30代女性が、
「いらっしゃい、食事かい?それとも宿泊かい?」
「一泊お願いします」
「そうかい。部屋は分けるかい?それとも1部屋でベッドが別れている部屋にするかい」
俺が返事をする前に、エリナベルが、
「ベッドが分かれている部屋でお願いします。」
「分かったよ。料金は前金で頂いているから1部屋だから8000ファル、食事は、別途料金だよ」
「俺達、王国の人間だったから王国貨幣しか持ってないんですが、使えますか?」
そう言って、革袋を取り出し銀貨を見せると、
「それは、王国の大銀貨だね。それだと、大銀貨2枚で帝国銀貨2枚のお釣りだ。ここの町では国境だから
「いえ、大丈だと思います。ありがとうございます。」
「そうかい。それじゃあ、部屋は3階の階段上がって突き当りの301号室だよ。」
女将さんは部屋を伝えて、鍵を渡して来た。
それを持って階段を上がり奥の突き当たりにある301号室の鍵を開けて中へと入る。
部屋には一人掛けのソファーとローテーブルそれにベッドが2つに衣類掛けスペースにハンガーがあって、水洗い出来るタイルの貼られた仕切りスペースがあった。
「綺麗なお部屋ね」
「エリナベル、これは普通だからな」
「そうなのね。私がいた環境はやはり劣悪だったのね」
「そうみたいだな。それじゃあ気分を変えて外に出掛けよう。両替もしないと行けないしな」
「そうね、早速出掛けましょう」
そう言うと女将さんに鍵を預けて外に出た。
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