第7話 逃亡4日目と追手の追跡

西の街道を見失う事無く、逃亡生活を続ける。昼間は街道を使わず林や森に入り採取をしながら移動をして、仮眠を取る。

2人共寝てしまう事があったが魔物は襲って来なかった。しかし魔物が襲って来ないのは良い事なのだが、これでは魔物の素材が集まらない。それでも逃亡中なので魔物の襲撃が無い事は非常に助かるのだけど。


「エリナベル。移動を始めるから俺の背中に乗って」


「はい」


エリナベルをおんぶして、風の障壁を作り、西の街道へと戻って、身体強化と縮地を使い疾走する。そして、この逃亡も後2日頑張れば国境に辿り着くはず。頑張ろう。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

SIDE:第一騎士団副団長ランソール


私は、ランソール・テトラ・ライエン第一騎士団の副団長を拝命している。今は第五王女のエリナベル殿下を追跡している。

実は、彼女の母親とは元許嫁の間柄であった。しかも親同士の決め事では無く、親同士は文官の上司と部下の間柄で私の親は子爵で彼女の親は男爵だったが、小さな頃から交流がありお互いが惹かれ合ってその流れで4男の私と3女の彼女は同い年で家のしがらみに縛られる事も無い為、親公認の許嫁だった。

職業授与の後は正式に婚約するはずだったが、兄達にまだ婚約者がいなかった為に保留とされてしまった。私は騎士になる為、騎士学校に5年間通い、彼女は貴族が通う王立学園に通っていた。

お互いが卒業する時には兄達も相手が見つかった為、私達は婚約を果たした。

私は、騎士団に晴れて入団し、彼女は、王宮のメイドに任官された。そして勤務1週間目にそれは起こった。

彼女は、先輩メイドに指導を受けていたのだが、離宮のベッドメイキングを指示されて王のベッドメイキングに入った時に王と鉢合わせして、そのまま押し倒されてしまったそうだ。伸し掛かられた彼女は「婚約者がいます!お許し下さい」と懇願したが気にもされず、そのまま凌辱されてしまった。

そして、そのまま第2側室へと上がってしまった。当然、婚約は解消、王家から金貨100枚の見舞金が贈られた。

彼女の両親も息子に家督を譲って南の直轄領に行ってしまった。

そして、直ぐに彼女は第5王女を身籠り、出産して産後の肥立ちが悪く、亡くなってしまった。私は、彼女を奪われてからは、彼女を忘れる為、剣一筋に生きて来たが未だに忘れることが出来ない。26歳の現在でも独り身だ。そして彼女の忘れ形見が文字化け職業を得てしまいそして今、逃亡している聞かされた時は、王の仕打ちに血が逆流する程、怒りに震えてしまった。

このまま、隣国へ逃げて欲しい。逃げ切ったら私も騎士団をやめて隣国行こうと思っている。

幸いな事に、彼女の足取りは全く掴めていないが後で会うためにも足取りだけは掴みたい。


「副団長〜!駄目です。それらしい子供連れは見ていないそうです」


「子供連れなんて滅多に見ないから目立つ筈なんだがなぁ」


「良し!後は後続に任せて先に行くぞ!ジョセフ、お前はここに残って第2分隊と第3分隊に私達が先に行ったと伝えてくれ。それと第2分隊は街道にある町を虱潰しらみつぶしに当る様にと、そして第3分隊には西の街道周辺にある村々を当たるように伝えろ」


「畏まりました」


「では、第1分隊出発!」


「「「「「「「「おう」」」」」」」」


追跡を再開した私達は街道沿いにある町や村の門番に子供の出入りが無かったか確認し、大きな街では馬を交換しながら陽が暮れる迄、追跡していたが全く足取りは掴めなかった。夜になる頃にはその日の追跡をやめて町で宿泊し、陽の出と共に起床しては持っている堅焼きパンと干し肉を水で無理矢理飲み込み追跡を再開した。


街道が通っている森に入るとウルフが襲って来たり、ゴブリンが襲って来るのでそれを移動しながら撃退しては進んでいた。

王都を出て5日目には大河に掛かる橋の町に辿り着いた。この先に行くにはこの橋を渡らなければ、先に行けないのでここで何かしらの手掛かりが掴めると思っていたがそれらしき子供連れは橋を渡っていなかった。


「副団長、西の帝国に行くにはこの橋を渡らなければ行けません。ここで目撃情報も手掛かりも無いというので有れば、何処かで追い抜いてしまったかもしれませんね」


俺の腹心がそう告げて来たが、


「そうは言っても取り敢えず、国境を目指そう。追い抜いているならば後続が見つける筈だ。第1分隊は先を進むぞ!」


「副団長、待って下さい。この先に大きな町は距離があります。もう昼も過ぎましたし、ここで休んで体調を整えて明日、改めて追跡しましょう。馬は交換すれば良いですが人間の替えが今はききません。ここは何卒、宿泊をお願いします」


1日の移動距離は馬を交換しても40km〜50kmが限界だった。それでも馬車や徒歩よりは進む速度や距離はこちらの方が断然多い筈なのに、手掛かりすら見付からない。

彼女はどうやって進んでいるのだろう。

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