第6話 逃亡3日目とテイム
大河の前にある大きな街を抜けて、西に向かう夜道の街道をひたすら高速で進む。
それなりの速度を出して移動しているが、地図も目印も無いので、自分が何処にいて後、どの位で到着するのかが分からないまま、ひたすら進む移動に疲れが出て来る。
それでも距離を稼げないと追手に追い付かれてしまう、そう云う不安もあり精神的疲労が蓄積されていく。
縮地の1歩を1秒で5m進んでいるとして、1時間で18km夜どうし進んで8時間を移動に使っているとすれば144km夜間移動は2日目なので日の出まで頑張れば、300km近くを稼げる事になる。
おんぶしているエリナベルを意識していると俺の背中で眠っている様で安心する。
俺は、一定のスピード出しながら西の街道を進んで行く。
街を過ぎ、麦畑が途切れ草原となり草原に木々が増えてきて村を避けては迂回してまた街道に戻って縮地を使って疾走する。街道が林に差し掛かる時には魔物に警戒して衝突しない様に
町が見えて来ては街道を外れて迂回して町との距離が出来れば街道に戻るを繰り返した。
そうしていると背中の東側が明るくなって来たので、遠くに見えてきた森までスピードを上げて進み、陽が出切った時には森の入口まで来ていた。
森に入ると街道を外れて、開けた場所を探しに森の奥へと進む。それなりの距離を進んで漸く森の中の開けた場所を見つけて足を止める。エリナベルを降ろして、俺もへたり込む。エリナベルが労わりの声を掛ける。
「お疲れ様。今日は随分とお疲れみたい。もう仮眠を取ったらどう?」
「うん。今日はなんか疲れがどっと来た感じがするんだ。少し寝かせて貰うね」
俺は倒れる様に眠ってしまった。
肩を
「アステル、起きて。何かが来るわ」
とエリナベルの声で目を開けると、草叢がガサガサと揺れている。俺は警戒して宝物庫からくすねて来た短剣をマジックバックから取り出し、鞘を抜いて身構える。
するとフォレストウルフが4頭草叢から出て来たが、襲うでも無く、警戒するでも無く、威嚇するでも無く普通に寄って来た。
「どうなっているんだ?」
「私の何が何だか」
フォレストウルフはエリナベルと俺の前でお座りをして何か待ってる雰囲気を漂わせている。エリナベルが、
「何がしたいのかしら?」
と言ってフォレストウルフに近寄り、頭を撫でると触れた所から光が溢れては消えたがフォレストウルフの眉間には5つの花びらを
「あら、テイムを覚えたわ。この子をテイム出来たもの」
「本当か、でも連れては行けないぞ」
「そうよね。無理よね」
エリナベルはテイムしたフォレストウルフをもう一度撫でながら、
「ごめんね連れていけないの、
と言うと花びらの模様が消えた。
エリナベルの言葉に同意したように、立ち上がって来た道を戻って行った。
「しかし、テイムってこんな簡単な物なのか?」
「違うと思うわ。私が神々の巫女と云うのが関係していると思う」
「間違いなくそれの影響だろうなぁ。ウルフは見境無しに襲ってくると聞いたことがあったから。でもいざとなったらテイムした魔物で追手を撃退出来るかもしれないからな。そのうち頼りにします」
「うん、任しといて!いざとなったらね」
「お腹すいたから食事にするけど、エリナベルは食べたの?スープ鍋出して欲しいけど良い?」
「私もまだ食べてないから一緒に食べましょう」
肩掛けカバンからパンとスープ、それと燻製肉の塊を出してナイフで薄く6枚程切って、塊を仕舞って食事を始めた。
エリナベルが肩掛けカバンの中身を確認して、
「アステル、こんなにいっぱい食事を奪って気付かれなかったの?」
「全然だな。多分俺の奪った料理は賄い食じゃ無いかなぁ。スープ鍋もいっぱい置いてあったし、パンなんか山積みで置いてあったから、無くなれば補充していたみたいだった」
「それなのに、私の食事はあんなのだった訳ね。段々腹立たしくなって来たわ。本当にあんな所から抜け出せて良かったわ」
2人共食事を終わらせると、
「エリナベル、採取をしながらまた街道に戻ろう」
「分かったわ」
2人で街道へ戻りながら薬草やハーブ、そして食べられる物を探すと、魔物の気配がするが襲ってくる様子は無い、鑑定をしながら薬草を摘み、ハーブを取り、食用のキノコ類を採取する。そんな事をしていると、エリナベルが、
「あっ、今度は鑑定を覚えたわ!」
嬉しそうに俺に話して来た。そして薬草を自分で見つけては摘んで俺に見せてくる。
俺はエリナベルの頭を撫でて、
「綺麗に採取したね」
と褒める。エリナベルは嬉しそうに、
「どんどん、スキルを覚えていくわよ!そして、アステルの役に立ちたい。おんぶされずに移動できないとね」
こうして、色々採取して行くうちに街道へと出た。俺は、エリナベルをおんぶして、半円の風の障壁作り縮地で移動を開始した。
森を抜ける頃にはすっかり陽は落ちて街道の先に町の灯りが見えた。俺は大きく迂回しながら町を通り過ぎる。西の街道に戻りしばらく進んでいると前方に焚き火をして野営するキャラバンの一団があった。
俺は一旦足を止めて、草原に向かって進み、距離を取って草原を疾走した。するとどこからか矢が飛んできた。風の障壁を作っているので身体に当たることはなかったが、ここは逃げの一手と思い隠密も使って移動する。矢はそれっきり飛んでこなかったがこれからは十分気を付けようと肝に銘じた。
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