第4話 授かった職業について

西門から王都を出ると、そこは一面麦畑だった。西の国境に続いている街道の為、人の往来が結構あり人影が途切れることはなかった。なので、俺達は手を繋いで徒歩で進んでいたがなるべく追手から距離を取りたいので、エリナベルに、


「エリナベル、王都から離れたいから君をおんぶして走らせてくれないかな?」


「えっ!う〜ん。王都から追っ手が来るのだから……しょうが無いよね。お願いします」


俺はかがんで、エリナベルをおんぶして、縮地を使って走って行く。なにせ、国境までは馬車で3週間掛かる道程となる。

俺は全面に小さな半円の風の障壁を作って、ひたすら縮地を使って進む。街道沿いの村や町があれば迂回して進む。麦畑から草原や林とどんどん風景が変わっていき陽が落ちる頃には眼の前に森が現れた。


その森の中に入って、エリナベルを下ろす。


「もうすぐ暗くなるから一旦休憩と食事をしよう」


「そう云えば、これからの食事はどうするの?」


「肩掛けカバンに手を入れて中身を確認してみて、パンやスープの入った鍋が入っていないか?」


それを聞いたエリナベルは、


「あっ、何これいっぱい色々な物が入っているわ!パンもスープ鍋もある。木皿やコップもスプーンもあるわ。どうしたのこれ?」


「エリナベルを救出しても、先立つ物が無いと逃げ切れないと思って、救出するのを遅らせて王城で収集していたんだ。このカバンとポーチを獲得してから、毎日、ちょっとずつ食料を頂いて、それとマジックポーチの中身も確認して見て」


俺がマジックポーチの中身の確認を促すと、


「えっ、ちょっと待って、これって……この皮袋はお金じゃないの?」


「そう、お金だよ。金貨の山にあった皮袋2つと銀貨の山にあった皮袋2つ拝借してきた。エリナベルの賠償金替りさ。中身を見てご覧よ」


マジックポーチから皮袋を2つ出したエリナベルは、


「こっちは金貨……。いっぱい。これは銀貨がいっぱい。こんなにあって良いのかしら?」


「これだけあっても、何か仕事しないと直ぐに無くなってしまうよ。ところで巫女のスキルは何があるの?俺の職業は〝統領〟と云う職業で全ての職業の上位互換職業だから何でも一度見たスキルは覚えてしまうんだ。あの儀式の時に光の球が頭に入って行ったよね、その時に知識が流れ込んでしたでしょ、それで、授かった職業の使い方が分かったと思うのだけど」


「うん、あの時に職業の知識を授かったわ。

巫女は正式には、神々の巫女と云う職業で、実は聖女や賢者の上位互換なの」


「それって、上位職業の上位互換職業って事か。俺のは勇者とか聖女とか賢者は肩を並べる程度の職業だけど更にそれの上のスキルが取得出るって事なのか?」


「多分そう云う事だと思う」


「ゆっくり職業の事を話し合うのはこの国を出てからにするか!しかし、なんで国王は幽閉って手段を取ったのかな。密かに殺す事も出来た筈なのに」


「それは、子殺しをしてしまったら王権神授の伝説が揺らぐからじゃないかしら。自分の子供を殺して神罰でも受けてしまったら、王でいられなくなると信じていそうだもの。あの黒の塔の牢内は体内の魔力を使えなくする結界が張られていたから何も出来なかったし」


「そうだったんだ。入らなくて良かったよ。隠密スキルが解けていたら大変だった。カバンに入っているパンとスープを食べて移動を開始するよ。今頃、食事を運んだ監視員からエリナベルが居なくなった事を知らせている頃合いだろうから」


お話しは楽しいが今は逃亡の最中なので、パンとスープ鍋を出して貰って、スープを皿に移して食事を摂った。 食後、食器をエリナベルに、


「皿を綺麗にするのに、浄化を使ってみてくれないか?先ずは、俺が生活魔法のクリーンで皿を綺麗にしてみる。〝クリーン〟これと同じ要領で浄化をやってみてくれ」


「綺麗になるのね。あれをイメージして〝浄化〟」


エリナベルが唱えた浄化は皿どころか周囲2m程に影響したらしくエリナベルの全身持ち物そして俺の全身持ち物に及び周囲の全てが綺麗になって行った。思わず、


「凄い!」


と言葉が出てしまった。

エリナベルも自分でした事ながら、驚愕の顔して固まっている。俺は、エリナベルの魔力を心配して尋ねる。


「魔力は大丈夫か?」


「えっ、魔力は減っている感覚は無いわ。それより自分で放った感覚があまり感じれなかった。もう一度意識しながらやってみる……。〝浄化〟…これが放つ感じなのね」


周囲は浄化されてしまっているので変化は無いが、彼女の中では変化が有ったのだろう。


食事をの後片付けも終わり移動を始める為、エリナベルに、


「移動を始めるから俺の背中に乗ってくれ」


「はい」

屈んでエリナベルに背中を向けると身体を預けてきたのでおんぶする。

〝ウィンドウォール〟を唱えて半円の風の障壁を作り出し、〝身体強化〟を発動させて、縮地を使いながら移動する、森の移動なので、目に魔力を集めて見やすくならないか、移動しながら試行錯誤すると、突然、暗視と云うスキルを獲得した様で、周囲がしっかり見えて来た。それによって、移動スピードが上がり、魔物に遭遇しても移動速度の速さとさ暗視で位置を捉えることで上手くかわして逃げた。


森を抜けると大きな城壁が見えて来たがそれには近付かないで、大きく迂回して街道に戻り、先を急ぐ、


「エリナベル、起きているか?」


「はい、起きています」


「これは大事なことお願いだ。俺は体力の続く限りこのまま走り続けるがいつかは限界が来てしまうだろう、その時に俺を守って欲しいから、こんな状況と体勢だけど寝れる時は寝ておいてくれ。それと次の休憩の時に肩掛けカバンの中に俺が着ている物と同じフード付きのローブがあるそれを着てくれ。明るくなったら休憩するから」


「分かったわ、目をつぶって寝てみる」


こうして、大きな街を通過し暗くて草原なのか麦畑わからないが木々の無い街道をひたすら走り抜けると前方に森が見えてきたのでそのまま森に突入して移動する。

森に入って、随分と時間が経った様で、背中の方から明るくなって来た。

少し開けた場所に出たので速度を落として、

街道を外れて目立たない所を見付けて立ち止まり、エリナベルを下ろす。


「エリナベル、明るくなって来たから、ここで休憩して、朝食をろう」


「良いわね。アステルそれより、貴方も仮眠を取ったほうが良いわ。魔力もかなり使っているでしょ。かなり進んだのだから追手の心配をしなくても大丈夫よ。もしかすると、出発すらしていないではないかしら」


「昨日の夜に発覚したとして流石に王都中を探している位かな。それでも油断は出来ないがお言葉に甘えて食事を終わらせたら仮眠を取るよ何かあったらすぐ起こしてくれ」


こうして、俺は食事を簡単に済ませると、拝借した毛布をマジックバックから取り出して、仮眠を取った。








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