第2話 孤児の俺
ギルド長にプレートを見せると、
「確かに職業欄は文字化けしてるな。ってお前、苗字持っているって事は庶子か?」
「何も分からないのです。赤ちゃんの時に、南西地区の孤児院に置き去りにされていたそうです」
「そうなのか、でも家名が解っているから探すのは簡単だぞ。どうする?
でも、あれか文字化けだからこの国の貴族だったら探しても意味ないか。俺やジュリアンは隣国の帝国生まれだから文字化けが本当はどう云うものか知っている。
はるか昔に帝国ではこの文字化けの職業を授かった者を保護したんだが、帝国はその有用性に気付いて他国にはこの文字化け職業を授かると周囲を不幸にする使えない職業と噂を流したんだ。
そして、文字化け職業の者を集めやすくした訳だが、国内に向けては文字化け職業の者の名誉の為に、それは誤報だったと国民に伝えたのだが、それ以来今までに至っても文字化け職業は現れなかった為に、帝国以外の国では文字化け職業は嫌われている。
特にこのリスホルン王国では文字化け職業は何故か忌み嫌われている。それでだ、この国を出て帝国に行くなら手を貸すぞ。どうする?」
「先ずは、この職業がどういうものか知りたいのと、移動をするにしても力をつけてからにしたいです」
「確かに、10歳で他国に行くのは無理か。良し、ギルドには駆け出し冒険者の為にここの3階には寝泊まり出来る部屋がある。そこを使わしてやる。それでギルドが行っている講習を受けて戦い方を覚えれば良い。
先ずは、ギルド登録だな。これに魔力を流せ」
ギルド長は職業プレートより少し大きな銀色のプレートを取り出した。俺はそれに手を当てて魔力を流すと。
プレートの表面にアステルと名前だけが浮かび上がってその下にはGclassと刻まれていた。それを眺めていると、
「このカードが冒険者の証明だ。これでお前も冒険者ギルドの一員だ。採取や魔物討伐の依頼を受ける時や、終わった後の手続きに必要になるし、街の出入りにもこれを見せればスムーズに検問を通過出来る。失くすなよ。再発行は銀貨五枚だ。解ったな。それじゃ、寝泊まりする場所に案内する。」
ギルド長の後ろに付いて行くと入った時は気付かなかったが出入り口の直ぐ右横に階段がありそれをギルド長に付いて上がっていく。
3階に着くと部屋らしき扉が五つあってその一番奥に入った。
部屋には、ベッド、机と椅子それにクローゼットが備え付けられいた。
クローゼットを開けると、毛布と布団があり、何時でも寝泊まり出来る様になっていた。
「アステル、ここを使え。使えるのはFクラス冒険者迄だ。Eクラスに上がったら一ヶ月しか居られない規則になっている。それまでに鍛えろ」
「分かりました」
「技術講習は9時からやってるからな。時間は窓から時計塔が見えるからそれで確認しろ。一階にも時計があるから気にしておけよ。あと、読み書きも講習しているから受付で聞いてみろ。文字が読めるのであれば反対側の階段を上がると資料室があるからそこで、魔物や薬草を覚えると良い。それじゃ、挫けず頑張れよ!あっ、これがここの鍵だ失くすなよ」
「何から何までありがとうございます。以後宜しくお願いします」
そう言ってギルド長と分かれた。
部屋でクローゼットから布団を取り出しベッドに敷く。そして教会でのあの頭痛と全身の熱と痛みの意味はだいたい想像がつく。
先ず、頭痛の原因は職業に関連する知識の流入によって起こっていた。膨大な知識が短期間で流れ込んで来た為に、頭の中が悲鳴をあげた様だ。
肉体も同じで、魔術を使える身体になる為の改造が行われた事で、全身に痛みが起きていたみたいだった。
一番驚くべき事実は俺の授かった職業〝統領〟とは全ての職業の上位職という事だ。
要は〜の統領と云う意味で、鍛冶の統領、錬金術の統領、斥候の統領という具合でその職業に付随するスキルを取得している事になるが現象を見ないと使えない。
しかし、一度見てしまえばその見たスキルは使える。過去に知り得たスキルは使えるので、当然魔法も使える、ぶっ壊れ性能の職業である。
翌日から、講習を受けまくった。
午前中は、講習を受けて午後には薬草採取依頼をこなす日々を続けた。
そんな日々で、認知したスキルが、
言語理解、鑑定、縮地、隠密、隠蔽、暗示、魔力循環、身体強化、身体金剛、気配遮断、抽出、合成、剣術、武術、槍術を習得した。
そして、ギルドでの生活も5ヶ月が経ち、そんな採取生活でFクラスに上がり、貯めた資金で刃渡り60cm短剣と刃渡り20cmのナイフ、ビックボアの鞣し革で作られた革鎧、ロングブーツに小手を購入した時に、ふと同じ日に職業授与の儀にいた王女の事を思い出した。
彼女は俺と同じ文字化け職業でこの王国では忌み嫌われる存在だが、王都にいて第5王女の事は何も聞こえて来ない。何なら存在しない者として処理されているのかもと思ったら確認しないと気が済まなくなった。
そして俺は、王城に忍び込んで安否を確認する事にした。
その日の深夜、隠密スキルを発動させながら王城に忍び込む、そして夜活動しても情報は仕入れられ無い事に気付き城の見取りを行うだけにした。
どうも城には誰も住んでおらず王族の住まいは離宮と云う所らしい事は分かった。
但し、宝物殿は城にあり昼間の一時間だけ、点検で開く事が、夜間警備の騎士達の会話で分かった。なので。城の何処かで寝る事にした。使われていない使用人部屋があったのでそこで仮眠を取った。
明るくなって、使用人達が忙しく動いている厨房に、隠密、気配遮断を同時発動させて、普通に歩いて行くと誰も気付かなかった。それで、厨房に入ってスープとパンをくすねる。その時に、
「今日の黒の塔の当番は誰だ?」
と厨房の料理人がメイドに尋ねている。それを聞いた若いメイドが小声で先輩メイドに、
〈黒の塔ってなんですか?〉
〈第5の幽閉されている塔の事よ〉
と囁いていた。別のメイドが、
「当番は私です」
と料理人に答えると、
「これ、あっちの食事だからこそ持って行って」
と食べ残しのパンやスープをそのメイドに渡す。それを持ってメイドが移動を始めたのでその後ろをついて行く。
そして、北側にある出入り口から城を出てひたすら歩いて行くと、黒い塔が見えて来た。
その入口には兵士が立っていてメイドを見ると扉を開ける。そしてメイドはその塔に入って行ったので俺もついて行った。
中は、牢屋で監視の兵士が2名中央に向かい合わせに置かれた机と椅子に座っているそこに、メイドは食事を置き、
「第5の食事です」
「了解だ。お疲れさん」
これでもここに王女が幽閉されて居る事が分かったので、メイドの後を追って塔を出た。それから、宝物殿に点検の役人達に付いて動いて、物色をしていると、肩掛けのマジックバックが何十個と山積みされていた。
なぜ分かったかと云うと、役人たちが
「こんな乱雑にマジックバックやマジックポーチを置いて良いのですか?」
「最近、ダンジョンの攻略が進んで容量の大きいマジックバックやマジックポーチが出て来たから、そこの山積みになっているのは、そのうち、放出されるか、下賜される奴だから問題無い。
あっちに並べられているのは容量の大きい奴だからちゃんと確認しとけよ」
「了解です」
俺はそれを聞いて、素早く、肩掛けカバンのマジックバックを2つたすき掛けしてマジックポーチも2つ腰にはめた。
隠密を使っている時は俺が触ったものは認識出来なくなるみたいだった。
こうして、マジックバックをゲットした俺は20日程かけて食料やお金、衣類などを盗み、マジックバックに詰め込んだ。そして、朝食のメイドについて行って黒の塔に忍び込んだら、王女に
「ねえ。居るんでしょ!お願いだから私を外に連れ出して!でないと私は気が狂ってしまう。お願いだから!姿を表してよー!」
と言われてしまった。
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