強さ
二人きりの食卓につく。
兄が帰ってしまって、私と母が対面になって数日が過ぎたが、もう話すこともなく静かだ。
これまでは母と兄が喧嘩しないように話題を回していたけれど、その必要がなくなれば、話したいことも出て来なくなるのだった。
シラスにお醤油をかけて、お箸で掬ってごはんの上に載せる。テレビを見ていた母が口を開く。
緊張が伝わってきて、私も緊張する。
「台風が来るんですって」
「……そうなんだ。ひどくならないといいね」
そう返したら、母は黙り込んだ。
息を吸う。
こういうことはタイミングが大事だ。きちんと聞き取ってもらえるよう、誤魔化して、なかったことにできないよう。
私は母に言った。
「ねえ、お父さんの病院ってどこ?」
面食らったような母の視線。問うような表情だったので、素直に答えた。
「私、お父さんに会おうと思うの」
ねえ、と、心のなかで兄に言う。
私、お兄ちゃんみたいに。
強くなれるかな?
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