露呈
花火が終われば、夏祭りも終わりだ。
人がまばらになるまで待って、ふたりでゆっくりと参道を歩く。
小指だけをつないで。
「あれ?ふみくんだ」
神社の入り口にまで来て、看板のしたにふみくんを見つけた。
咄嗟に新矢の指を離す。いつからいたのだろう。全然気が付かなった。知らない男の人と話している。
声をかけようか迷ってじっと見つめていたら、先に男性のほうが気が付いた。こちらを示して、やっとふみくんが振り返る。
珍しく、サングラスをかけている。初めて見た。しかもこんな夜に。ふみくんのものではなかったらしい。外したそれを男性の胸ポケットに直接仕舞った。
「帰りか?」
「うん。ふみくん来てたんだ。分かんなかった」
「ずっと端のほうにいたからな。……大丈夫か?」
「うん?」
「目が赤い」
「……うん。全然大丈夫」
「送っていこうか?」
ふみくんが言ったのは、私と新矢両方に対してだった。新矢を振り返ると首を振った。
「いえ。自分は大丈夫です。涼花さんも送っていきます」
「そう。気をつけてな」
「はい。ありがとうございます。坂田さん」
「うん?」
違和感を覚える。私はそのまま口に出した。
「新矢、なんでふみくんのこと知ってるの?」
「あ」
「あって、なに?」
新矢は何かを誤魔化そうとしている。
ふみくんを見れば笑っていた。……なんだか、不自然な笑い方だな?
「オープンキャンパスあったろ。豊田と一緒にいるときにばったり会って」
「そう。お兄さんに紹介してもらって」
「ふたりとも、なんで焦ってるの?」
ふたりとも、私と視線が合わない。
ふみくんの後ろでは、サングラスを自分にかけなおした男性が笑いをこらえている。
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