第29話

 「そもそもの話なんですが」

しばらく考え込んだあと、口を開く。

「こうやって、俺たちが入れ替わったことが、摩訶不思議じゃないですか」

「まあ、それはそうだが…」

「もしかしたら、原因かもしれないものが分かったんですよ」

「それ、本当か!」

問題の解決が少し前に進みそうで、思わず興奮して身を乗り出す。

「はい。ちょっと、失礼しますね」

勇真と同様に着替えていたティーシャツをおもむろにぬぎ出す。

「ここ、見てください」

心臓の辺りを指さす。

「何だ、これ」

目に写るものが信じられず、けげんな声が出る。

その心臓のあるであろう場所に、透明な綺麗に研磨された石が埋めこまれていたのだ。

その中には血液とはまた違う赤い液体が少量、ちゃぷんと揺れている。

「優魔さんも、心当たりないんですね」

「当たり前だろ」

「よかった。もしかして、これがヒーローの命の代わりだって言われたら、どうしようかと思った」

優魔は、胸に手を当て、ほっと一安心する。

「どこぞの魔法少女じゃあるまいし。ブラックじゃねえよ、うちは」

それも、体内に埋められている訳ではないのだが。

「帰ってきて、着替えたときに気づいたんですよね。それで、勇真さんも脱いでみてください」

「お、おお…」

いつかは来ると思ったが、こんな早くそんな機会が来るとは思わなかった。

「別に同じ男同士だし、俺は気にしませんが…」

「まあ、そうなんだよな」

ボタンのパジャマだったので、一つずつ外していく。

そうして、脱いでいく。

「お前、どうした」

視線を外している間に、いつの間にかまたティーシャツを着ていた。

顔を下に向け、真っ赤になっている。

「いや、推しの裸を見たんだと思ったら、申し訳なさとか羞恥心とかもろもろ襲ってきて」

「お前、そんな愉快な反応する奴だったんだな」

昨日の生意気なガキから、今日の変貌ぶりに心が追いつかない。

「というか、俺の貧相な体がレッドハートに見られた」

「子供なんだから、こんなもんだろ。もう10年経ったが、約1年間命をかけて戦ってきた体と比べる方がアホらしい」

そうして、優魔の体にも同じように、赤い液体が入った石が心臓の辺りに埋められていた。

「これって、優魔が見えた魔法石じゃないか」

「そうだと思います。こんな風に体に埋まるなんて、普通の石ではありえないし。まあ、魔法石もそんな事例聞いたことないんですけど。これ、二つあったんですね」

つんつん叩く。

カツカツ鳴るだけで、動きもしない。

「そういや、優魔に見つかったとき、とっさにポケットに入れたんだった」

「そして、記憶操作の呪文を調べていたとき、魔法石を持っていた。この魔法石が原因で間違いなさそうですね」

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Hero×Magic 神凪紗南 @calm

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