第28話

 「ファンって…」

(こいつ、俺なんか推してどうするんだよ…)

ますます顔がひきつる。

「その動画、どこで見つけたんだよ。昔のって、削除されたって聞いたけど」

「公式ファンクラブのです」

「え、そんなのあったの?まだ、稼働しているのか」

優魔からスマホを見せてもらい、戻るボタンを押すと、一番上に大々的に『エブリバディーガーディアンズ公式ファンクラブ』と書かれていた。

更新は数年前に止まっていたが。

「よく残っていたな。消すの忘れているのかもしれないが」

あわよくば削除依頼できないかなと、スクロールしていくと、一番下に書かれた会社名が椿咲つばさコーポレーションとあった。

「スポンサーじゃん…」

椿咲コーポレーションはエブリバディーガーディアンズの変身アイテムや武器を作ってくれたりと、勇真たちをエブリバディーガーディアンズにした張本人である。

大学卒業後、別の会社に入社したこともあり、諸々の事情から連絡をとっていない。

それは他のメンバーに対しても同様ではあるが。

したがって、今さら削除依頼などできるはずもない。

あの会社が忘れたまま放置ということはありえず、今も稼働していることは何らかの意味があるのだから。

「あれ?」

動画を見ていたときに本来気づくべきであろうが、動揺していたために、今さらながらに勇真が気づいたことがある。

「何で俺と同じ声が聞こえるんだ?」

「もうさっさと認めてくださいよ」

「そうじゃなくて。当時活動していたときに、こうやって声からバレることを防ぐために、俺たち以外には別の声が聞こえるようになっていたんだよ。俺たちには本来の声が聞こえるようになっていたのは、別の声に慣れるまでに、うまく連携できないのを防ぐためで」

「これ、顔半分しか、しかも上半分だけで、口は隠れないタイプのマスクですよね。それで、どうしたらそんなことを…」

「ちなみに、椿咲の芸能事務所の声優を起用していたから、宣伝にもなったらしい」

「無駄がなくて、すごすぎる」

優魔は椿咲コーポレーションの高すぎる技術力に、恐れ慄いている。

「でも、子供のときだからあまり覚えていないのですが、あの時のレッドハートの声と、今の勇真さんの声結びつきませんね。だから、初対面のとき分からなかったんだと思います」

「だろ!」

「でも、それなら今俺が勇真さんの体なのだから、本人の声に聞こえても正解なのでは?」

「だから、優魔の体の俺が、本来の俺の声が聞こえるのが変だなって…」

「それは…」

優魔も不思議に思ったのか、考え込む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る