第22話
「は?」
勇真の嫌な予感が的中する。
「いきなり、何?」
顔を引きつらせる。
「やっぱり、知らないか。10年前ッスからね。簡単に言うと、フィクションじゃない、リアルタイムで本当に1年間やっていた戦隊ヒーロー」
エブリバディーガーディアンズの説明をつらつらとしていく。
「当時まだ子供で、現実とフィクションの区別ついてなかったんスよね。本物のヒーローなのに、使っていた銃や剣のおもちゃが欲しいと泣きわめいていたのもいい思い出ッス」
(そりゃ、おもちゃなんか出したら、子供たちが勘違いして、怪人に向ける恐れがあるからな。おもちゃを出してくれ、という保護者の問い合わせが殺到して、大変だったと聞いたことがある)
二人して遠い目をして、昔を思い出している。
「今出てきているのと違って、怪人はちゃんと目に見えていて。確か地球外生命体だったのかな」
「ああ。よくある展開で、地球侵略してくるはた迷惑な奴らだったよな」
そのとき、大変だったことを思い出して、ため息を漏らしてしまう。
「優魔くん、本当は覚えているじゃないッスか」
「あ…」
また、素を出してしまったことに気づいた。
当時の勇真は二十歳の大学生であったので、当時小学生ほどの井上よりかは覚えている自負があった。
「というか俺も今思い出したんスけど、昔会ったことあるよね?」
「…今回が初対面では?」
嘘である。
今までの会話から、井上と昔会ったことを思い出していた。
優魔の体にしても、中身の勇真にしても。
「嘘だー。今まで忘れていたから信用ないかもしれないけど、君みたいな美少年、一度会ったら頭から離れられないッスよ。思い出すまで、ずっとちらついていたし」
「はあ…」
確かに、勇真自身も優魔がどれだけ美形かは理解している。
今、自分の姿になっていて、鏡越しじゃないと見れないのが残念なくらいだ。
「10年前の東京の大災害。いわゆるエブリバディーガーディアンズと怪人たちの最終決戦の場にいた子でしょ?」
優魔が語った魔物に襲われたときのことは、本当は宇宙から来た怪人たちの襲撃現場であった。
だから、その場にいたのは、魔法使いではなく一般人。
しかも、魔法使いにしか見えない魔物でなく、誰でも見える怪人であった。
話を聞いたときから、そのことには気づいていた。
しかし、敢えて訂正はしなかった。
何故なら、勇真もその現場にいたからであった。
たまたま事件に巻き込まれた訳ではない。
そこにいた理由に気づかれる訳にはいかなかったから。
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