第21話

 「見えないのに、無茶だろ」

巨大蜘蛛の前に、優魔が対峙している。

「このパワー借りるね、勇真さん」

真っ直ぐパンチを向けていく。

「よし、手応えはあり。でも、悲鳴が聞こえないから、弱っているかは分からないな」

今度は巨大蜘蛛が鋭い脚を向けてくる。

「よし」

頬をかすったものの、避けることができた。

「今のギリギリだったろ!」

「感覚は掴めてきたから、勇真さんは何か召喚することに集中して!」

「でも、武器なんて…」

ファンタジーに出てくる剣、刑事ドラマに出てくる銃を頭に思い浮かべる。

両手の中に、白いもやが浮かんでくるが、それはまだ形を作らない。

「っくそ。何を出せばいいんだ」

「あのー」

申し訳なさげに、手を挙げて主張する井上。

「断片的にしか聞こえなかったんだけど、何かイメージしたいなら、俺がスマホで探しておくッスけど。見た方がイメージしやすいだろうし」

「それは助かる!」

鮮明に頭の中の画像は見えてると思うが、やはり実物を見る方が勝る。

「俺が最強の武器探すからねー」

怪我した手は動かせないので、片手で調べていく。

井上が探している間は、今頭に浮かんでいるものでやっていく。

最初は楽観的だった井上の顔が、だんだんとしかめっ面になっていく。

ふと視線を優魔にずらすと、巨大蜘蛛が優魔に向かって、糸を吐き出していた。

「優魔、避けろ!」

集中力が弱り、もやが薄くなる。

しかし、その言葉は間に合わず、糸で巻かれてしまう。

「っう…」

苦しそうな声が漏れる。

「今、助けに…」

「いいから!」

優魔が叫ぶ。

「自分の体の異常な頑丈さ、信じなよ」

拳を握り締め、糸を引き剥がす。

「まあ、ちょっと引くけど」

優魔が逃れられたことに、ほっと一息つく。

「うわー、もう見つからない!」

井上が大声を上げたので、振り返る。

「こっち見つかるかもしれないから、静かにしろ」

「やっぱり、10年前だからかな」

「お気に入りのアニメかなんかか。悪いが、こだわってられないから、別のにしてくれ」

「まとめサイト残ってないな。まあ、上がっていた動画だいたい盗撮だからな。動画サイトでドキュメンタリーやっていたときの残ってないかな」

「お前、話聞いてないな」

命の危機が迫っているので、のんきに見えるその態度に、怒りで少しこめかみがピクピク動く。

「あのさ、優魔くん」

「何?」

井上は真剣な表情をしていた。

この場では、正しいはずなのに、この次に続く言葉に何か嫌な予感を感じている。

「エブリバディーガーディアンズって知ってる?」

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