第6話
「ふー、疲れた」
少年は窓際に座り込む。
「え、俺このまま放置?」
勇真は床に寝転んだままである。
「ちょっとでも、矢を外したらどうなるか分からねえからな」
足を組み、サッシに視線をずらす。
「え、何で魔法石がこんなところに?」
サッシの上にあった透明な石を取り上げる。
「それ知っているのか?」
「一般人なら知らなくても無理ないよね。これは魔力がこめられている魔法石。魔力が少ない人とかが日常生活で使ったり、危険なところで魔力切れを防ぐときに使ったりする」
アニメやゲームでよく聞くような魔法石と同じかと勇真は納得する。
「だから、お前の姿が見えたのか」
「あー、なるほど。このケープとか帽子は一般人に見られない効果があるから、気にせず飛んでいたのに、おっさんに見られたからあせったんだよ。この魔法石に魔法効果をはじく機能があるんだな」
魔法使いだとバレちゃいけないなら、空飛ぶなと反論しようとしたが、本来なら見えないはずだったと言われてしまった。
「一般人と一緒に通っていた学校に落ちていたりもしたからな。上の人にはちゃんと調査をしてもらいたいものだ」
「だったら、俺は悪くないだろ。お前のこと言い触らしたりなんて、絶対しないから。解放してくれ!」
勇真は必死に叫ぶ。
まず、周りに魔法使いを見たとか言ったとしても、勇真が頭がおかしくなったと思われるだけだ。
それに、秘密を守ることの大切さは、勇真は身を持って知っていた。
「さんざん逃げようとした奴を信じられるかっての。あんたには、魔法使いに関する今夜のこと全部忘れてもらうから」
「それだけ、か?」
「何?命でも取られるかと思った?基本魔法使いと一般人は共存しているんだから、むやみやたらに殺したりしねえよ」
「お前が安心できるなら、それでいい」
冷静に言い繕っているが、内心安堵していた。
殺されるとなったら、抵抗するつもりではあったが、そのときにこの少年の安心を保障できるか分からなかったからだ。
この少年はやらないといけないことをやろうとしただけで、悪ではないのだから。
「記憶操作の魔法かあ。魔法辞典は重いから、新しいのこっちで買おうと思って、前のは父さんに預けちゃったんだよな」
少し雲行きが怪しくなってきた。
「スマホで調べよ」
「出てくるものなのか?」
「魔法使い用のスマホだから」
ポチポチ打ちこむ。
「こういうのって、上の人たちが対応するものじゃないのか?」
「そんなことしたら、俺もバレるじゃん。監視程度ならまだいいけど、魔法学校を受けられなくなったら困る」
これかな、と探していたものが見つかったようだ。
「えーと、失敗したら廃人になる可能性が。まあ、俺なら大丈夫か」
「いや、物騒なこと言ってるよな!俺が大丈夫じゃない!」
「まあ、記憶全部なくなったら、俺が仕事紹介してやるよ」
「失敗する前提じゃねえか!」
叫んでこの後起きる展開を避けようとするが、スマホに載っている呪文を唱えていく。
(くっ、ここまでか!)
目をぎゅっと閉じ、覚悟を決める。
そのとき、二つの魔法石が白く光り、辺りが真っ白で何も見えなくなった。
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