第31話 金策
結論、女神様には転生とかの話はしないことにした。
迂闊に行動して、ロクな目に合った試しがないではないか。
女神様を信用しないというより、自分の運勢が信用できそうにない。
「ここに来たのは偶然のめぐりあわせです。北には町があるとのことですけど、東や西や南は町ないんですか?」
北の方、獣道のようなものがあるから、そこから町に続いてるのだろう。
「ないわね。距離に差こそあれ海に辿り着くわ。私が知る限りではね。」
徒歩で、南は3から4日、東と西は2日前後で海到着とのこと。
情報から推察するに、ここは半島もしくは岬の真ん中あたりかな。
なるほど、人がここに来るとするなら北の町経由しか普通は考えられない。
その町を知らないってことは、どこから来たのかって話だ。
「えっと…。」
これは、どういって切り抜けようか…。
「事情がありそうだから聞かないでおくけど、隠すならもっとちゃんとなさい。」
ちらりと向けた視線の方向、『蚊ーくん』の表示が見て取れた。
あー、さっきの投石って偶然じゃなく狙ったのか…。
女神様は一瞬険しい表情を見せたけど、それ以上何か行動を起こすことはなかった。
「
精霊契約と秘匿事項、
わざわざ忠告してくれた女神様、 少々直情的傾向があるけど、やはりお人よし系のようだ。
やっぱり相談してみようかとも思ったが、今更な感じもするし、秘匿とか意識させられると突っ込んで聞くのは憚られるようになってしまった。
女神様とは北の町が『キッサオ』という名称だということだけを聞いてお別れした。
良い出会いだったと思う。
女神様に幸あらんことを。
町か…。
そういえば一文無しなんだよね。
魔法でバナナ呼べるみたいだけど、カインとかいう通貨いるみたいだし。
それに、もうお試しスキル2回使い切った。
確かめたら、お試しスキルは影も形もなくなっていた。
ふと、思いつく。
通貨はなくとも金や銀は価値あるんじゃないだろうか。
女神様も普通のものに対しての金と銀提示してたってことは、この世界でもレートの違いはあるだろうが、貴金属としての価値はあるとみて間違いないだろう。
そんなことを考えていると蚊ーくんが姿をあらわした。
女神様がいなくなったのを確認して、安心して出てきたのだろう。
まあ、女神様がその気になれば、即撃ち抜かれる状況だったのだが。
「蚊―くん。さっきの火事、大丈夫だった?」
「うん、なんか本能に逆らえなくて…、熱かったけどもう大丈夫。あとあの女の人何か怖かったから隠れてた。」
まあ、そうだろうね、結局投石されたけどね。。
えーと、 まじかる☆ステッキは…あった。
あ、落書きが『うぃんぐすたぁ』から『かぁくん』になってる。
妙なところで芸が細かいなと思った。
ヤブ蚊一族の秘宝、これを金と銀で手に入れられたらと思うとウッキウキである。
拾って、泉に向かってスローイングしようとしたら、蚊―くんに奪われた。
「まりも、なにしてるの…?」
ジト目で見られた。
「いや、金と銀のステッキもらえたらすてっきだなぁって」
「駄目に決まってるでしょ…。」
虫を見るかのような目で見られた。
キミの方が虫なのに…。
仕方ない、これはやりたくなかったんだが、他に羽手段がない。
「蚊ーくん。女神様ともう少しお話があるから、またちょっと隠れてて、あとこっちは見ないように。視線で気づかれる可能性があるから。石とか投げられるかも。」
「う、うん、分かった。」
石投げるに反応したのか、足早に蚊―くんは去っていった。
ステッキはちゃんと持って行った。
最後の手段、手持ちは藁の服のみ。
これを捧げる。
藁は藁でも金と銀ならそれなりに価値は出るだろう。
蚊ーくんの姿はない。
まじかる☆アイにも反応はない。
今度は投石を恐れて距離をしっかりとったのだろう。
藁の服を脱ぎ、先程の草wwwwを再び身に纏う。
手には藁の服。
今度こそ泉に向かってスローイング。
藁の服は泉に消えた。
程なくして、女神様再登場の運びとなる。
だが、その女神様、困ったような顔をしていた。
「あのね、わざとやるのはルール違反なの。だからゴメンナサイ、これは没収。」
そう言って女神様は退場した。
きいてないよー。
藁の服を失った。
…もう、いい加減にせいっちゅーねん。
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