第29話 大天使の奇蹟
『まじかる☆ふぁいあ』
確か、説明には『基本である炎の魔法』とあった。
小さな火の玉がチロッって飛ぶくらいと思っていたのに…。
な ん で こ う な っ た ・ ・ ・ 。
まさか、『炎の魔法って属性魔法の基本だよね、でもこの炎の魔法は基本的なものだとは言ってないよ』とでも言うつもりだったのだろうか。
それとも、間違いなくこれが魔法少女の基本の魔法なのだろうか。
もしかして、【まじかるの理】ってそういうこと?
>【才】:その才能を開花させる。
>【達】:その道の達人クラスの能力を得る。
>【極】:その道を極めし者と呼ばれるほどの能力を得る。
>【理】:最高位、その道においては、その他のあらゆる法を超越するほどの能力を得る。
以前、
あらゆる法を超越とか良く分からないけど、先程の『まじかる☆ふぁいあ』の威力からそのヤバさが推察できる。
だとすると、『まじかる☆めてお』とか、それは恐ろしい結果が待っている気がする。
うっかり使用しなくて良かったと思う。
【理】が原因だとかは想像の域を超えないけれど、ここに来てからの短期間でうかつに行動するとロクな目に合わないことは、身を以て理解していた。
葉付きのつる草の類を身体に何週も巻き付けると、かなり様になってきた。
すっぽんぽんのままは流石にマズイので、色々考えながらも森の中を物色していたのだ。
とりあえず、胸の所と腰から下のあたりを覆う。
ビキニ上とパレオみたいな感じで装着完了。
ここが、森の中で良かったと思う。
装備だと草の服とかそんな感じになるのだろうか。
グラスアーマーとかいう名称だと格好良いと思う。
装備:まじかる☆ステッキ
wwwww
(……。)
一応タップ。
<wwwww>
草wwww
⏎
(……。)
さてと、服(草)探しで泉から少し離れてしまったので戻るとしよう。
とりあえず、すっぽんぽんからは脱したので、お次は『まじかる☆ふぁいあ』の顛末を確かめねばならない。
燃えて灰になった藁の服を呆然と見つめていたり、新たな服(草)探したりでそれなりに時間が経過していた。
木々の隙間からこぼれる陽光を見る限り、ここに来た時は低く差し込んでいたのが、今はかなり高くなっているように思う。
前世の常識がそのまま当たるなら、今はお昼前後ってところかな。
泉のあった場所へ戻ると、火柱は無くなっていた。
まだ、燻ぶった煙のようなものは立ち昇ってはいたけれど、赤い炎の色は見当たらなかった。
幸いと言うべきか、周囲の森に引火して森林火災を引き起こした様子もない。
縦方向に火柱が昇っていたせいか、横方向にはあまり飛び火しなかったようだ。
自分(藁の服)には飛び火して引火したけど…。
泉は完全に干上がっていた。
思ったより底は浅かったようだ。
以前鏡代わりに何度か覗き込んだときは底が見えなかったのにも関わらず、一番深いところでも5メートルもないのではないか。
その、一番深くなっていた辺りにソレはあった。
底にあったソレを見て、なんであるかを理解した瞬間吐いた。
人の形をした真っ黒に焦げた、それは焼死体であった。
未だ、燻ぶったかのように小さな煙が上がっており、何かが焦げたような匂いがここまで漂っていた。
(女神様…。)
それしか考えられなかった。
前世を通じて今までを通して焼死体を
魂A氏のときは、人の姿ではなかったし、およそ
蚊ーくんのときは、すぐ復活してきて本人もケロっとした態度だったので、それ程気にならなかったのだ。
だが、女神様の様子を見る限り復活する様子はなかった。
いろいろあったけど、女神様は最後にはこちらに慈愛に満ちた笑みを向けてくれたのだ。
死の
(…なんだっ!!!)
突然、自分の中に何かが流れ込んできた。
力がみなぎり、吐き気が精神的ショックが嘘のように晴れていった。
一瞬の呆然、だがこれが何であるかに気が付いた。
そして、自身のステータスの『れべる37』の表記を見て確信した。
ゲームとかでお馴染みのれべるアップの恩恵による全回復だということを。
れべる129の女神様を倒した経験値で取得しれべるアップした。
そして、れべるアップ時の全回復の恩恵で、精神的ショックからも回復した。
その解釈で間違いないだろう。
先程までは1だったのが今は37と一気に上がっていた。
でも、素直には喜べなかった。
精神的ショックからは立ち直れたけど、罪悪感が消えたわけじゃない。
だが、その罪悪感を消せるかもしれない。
そんな可能性にシステムウインドウを見て気づいた。
スキルのところが点滅していた。
確認すると、『お試しスキル』の中に6つ目のスキルが新たに増えていたのだ。
れべる37に上がったからか? とも思ったが、その割には通常スキルが1個も増えていなかった。
<まじかる☆大天使の奇蹟>
大天使を召喚、降臨させ奇蹟を起こさせる魔法。但し、その奇蹟には代償を伴う。
⏎
なぜ、こんなにも都合よく、しかもお試しスキルに追加されたのだろう。
だが、だからこそこれを使えば確実に女神様は復活すると確信出来た。
代償とかは気になったが、今は女神様を救いたい。
迷うことなく魔法の行使を選択した。
「まじかる☆大天使の奇蹟(大天使様、お願い女神様を生き返らせて)!」
女神様の復活を心に願い、スキル名を発した瞬間、まばゆいばかりの光が辺りに満ちた。
そして、その光と共に大天使様が降臨した。
頭に光輪、白いローブを纏った中性的な整った顔、話によく聞く天使の姿そのままであった。
そっと焼け焦げた女神様の傍らに降り立つと、優しく抱擁するかのようにそっと覆いかぶさった。
淡い光が、女神様を抱擁した大天使様を包み込む。
いや、大天使様が淡い光へと変化していた。
その姿は、徐々に薄らいでゆき、やがて女神様に吸い込まれるように消えていった。
光が収まると、そこには女神様が生前の姿そのままに眠るように横たわっていた。
不意に、身体が重くなった。
ステータスを見たら『れべる1』になっていた。
経験値を返還したという解釈でいいのだろうか…?
代償というものがそれなら、さほど大きなものではない。
元々女神様のもの、それを返しただけの事。
れべるは戻ってしまったが、罪悪感とか精神的ショックなどの原因が解消されたので、気分は却ってスッキリしていた。
女神様は元の姿に戻ったものの、まだ眠るかのように横たわっていた。
どうやら、女神様は何かをうわごとで言っているようだ。
近づいて耳をそばだててみる。
「あなたが落としたのは羽虫を滅する金鳥ですか、それとも…。」
死に瀕してしてなお、自らの職責を全うせんとしていた女神様に感動した。
女神様のうわごとは続いていた。
「ぎ、銀の鳥。…いないわね。銀の杭を持ったヤンバル杭ナとかどうかしら、
ヤンバル杭ナ、ちょっと無理があるよね。
でも、蚊ーネルとかシロ蚊ネの例があるから、本当に連れてきそうで怖い。
職責を全うじゃなくて、エロ羽虫退治への執念だったということで感動は吹き飛んだ。
よほど、蚊ーくんのエロ行動(谷間にお顔うずめて『でゅへへ』)がお気に召さなかったらしい。
まあ、取り乱して死球投げちゃうくらいだから、さもありなんかな。
推定年齢3桁なのに、なんとも
ちょっと女神様に親近感を感じた。
それにしても、もう起きているんじゃね、っていうくらいのうわ言である。
「…あら?」
ようやく、女神様は意識を取り戻したらしい。
「私は、一体…。それにこの現状は?」
周囲の状況を見渡して、こちらに向き直って質問をしてきた。
流石に自分がやりましたとは言いにくい。
「火の鳥が泉に飛び込んで、こうなりました。」
一応嘘はついてない。
この女神様、嘘とかすごくヤバそうだから。
「ええ、そういえば、泉に火の鳥が飛び込んできたから私はそれを捕獲しようとして…、うーん、思い出せないわ…。」
考え込むように、こてりと首をかしげる女神様。
何かに気付いたのか、ふっと目線をこちらに向けてきた。
「あら、あなた、その恰好どうしたの?」
ああ、今の装備って草wwwwだもんね。
「炎の余波で服が燃えてしまって、ありあわせで…」
そう、とても困っているのです。
「あら、女の子がそれはマズイわね。では、服を元に戻して差し上げましょう。」
「ありがとうございます。とても助かります。」
本当に助かる。
ぱんつはいてないのってマズイからね。
女神様が、しゃらんと手を振ると光の粒子がそれに纏わりつき、その粒子がこちらに流れてくる。
その光の粒子が、今度はこちらの身体に風のように流れて来て纏わりついて、そして…。
藁の服(ぱんつなし)復活!
(うれしくねぇ…。)
「あら、なんで? あの変な服だと思ったのだけど…。」
そうか、女神様は呪いの解呪を知らないのか。
それで、あの蚊のコス衣装だと思ったのか。
でも、燃えたのは藁の服。
だから、燃えた藁の服が復活したということだと理解した。
もっとも、草wwwwも藁の服も大差ない。
しつこいようだけど、何度でも言うよ。
だって、ぱんつはいてないんだもの。
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