第59話 ケルベロスの一瞬の攻撃

 ケルベロスは1つの首を攻略しただけでは崩れなかった。


左の首はスピカさんの魔法が直撃したことで、


かなりのダメージを負っており、この戦いではもう使い物にならないだろう。


それでもケルベロスは動きを止めることは無かったのだ。


尻尾を振り回して、エマさんを吹き飛ばすと、


スピカさんを右足で吹き飛ばし、


ルイさんに突進をして体が宙に舞った。


ケルベロスの攻撃は一瞬だった。


全員が散り散りに吹き飛ばされ、


僕を最後の攻撃対象として捉えている。


これは……僕もやるしかなさそうだな、


僕は剣に手を置き、いつでも反撃する体勢をとった。


「アカン! 手を出すなやハイドさん!」


この声はエマさん?


エマさんは地面を這いながらゆっくりと立ち上がっていた。


「エマさん、無事ですか!?」


「これは私ら3人の特訓なんやろ? やったらハイドさんは手を出したらアカン!」


「で、ですが、このままではケルベロスに……」


「私達なら問題ありません……、回復魔法でどうにかなりますし」


ルイさんは吹き飛ばされたことで水源に落ちていた。


体をぐっしょりと濡らしながら、


必死に這いつくばって立ち上がる。


「あ~、しんど、やっぱりFランクが楽だったかも……」


「ルイさん! スピカさん!」


スピカさんは仰向けになった状態で地面に寝転んでいるようだが、


大丈夫か?


僕が心配していると、


傷ついた体を震わせながらゆっくりと立ち上がった。


「でも、まぁ、こっちの方が緊張感あっていいかもしれないわね、あ! 私のお気に入りの服が汚れちゃったじゃない!」


「そんなんがお気に入りかいな、アンタ趣味悪いんちゃうん?」


なんだ、窮地に陥っているのにこの緊張感の無さは……。


目の前のケルベロスに臆してないのか?


ルイさんは風魔法を何度も唱えてすでに魔力も残りわずか、


エマさんは体がボロボロで剣もまともに触れないはず、


スピカさんは怪我と疲労で思考もまとまらないだろうに、


なんだろう、


僕の投光魔法ももう少しで消えてしまうのに……。


なのに、


僕は3人がケルベロスを倒す予感がしたんだ―――




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る