第56話 スピカの頭脳

 スピカさん、それは本当に言っているのか?


ルイさんに風魔法を唱えさせたら、今度こそ首が吹っ飛ぶぞ!?


「とりあえず、唱えますよ?」


ルイさんはそういって、魔力を目一杯に解き放って大量の風を発生させた。


まるで台風が起こったかと錯覚してしまう程の強烈な風圧、


地面の砂を巻き上げ、目に砂が入りそうだ!


しかし、幸か不幸か、ケルベロスの放った咆哮はルイさんの風魔法でかき消された。


なるほど、ルイさんのノーコンの風魔法の使い道はこうやって使うのか!


スピカさんは頭の回転が速いな。


この状況を冷静に判断して咄嗟に解決してしまうなんて、


スピカさん、この中で誰よりもIQが高いかもしれない……凄い才能だ!


「なんとか一発目は避けられたわね、ここからが本番よ!」


「よし……緊張も解けてきたで、ほないくか!」


「あの~、私の魔法役に立ってますか?」


「あったりまえやろ! おらぁ!」


エマさんはケルベロスに向かって突進し、


右足に強烈な一撃を放った。


剣はケルベロスの足に食い込み、


エマさんは確かな手応えを感じていた。


「よっしゃ、このまま足を……あれ?」


ん? なんだ、エマさん剣がケルベロスの足を切れていない?


もしかして、足に神経を集中させてそれ以上切れないようにしたのか!


ケルベロスの知能は人間並みと聞いたことがあるが、


これは予想以上に手ごわい相手だぞ。


ケルベロスはエマさんを見下しながら睨むと、


左足でエマさんを踏みつけようとしていた。


「おわぁ! あぶな!」


「ちょっと、なにやってんの! しっかりしなさいよ!」


「んなこと言ったって、コイツめちゃくちゃ皮膚固いねん!」


「なんか口開けてますよ?」


ケルベロスの真ん中の口が大きく開いている。


注意深く除いてみたが、喉奥で何か赤く光を発しているような……


ユラユラと光が揺れている……火?


次の瞬間、ケルベロスは強烈な炎の息を吐きだした。


辺りは火の海に一瞬で変わり果てた。


「うわぁ! あっつ!」


「火を吹く魔獣ですね!」


「……どうやら火だけじゃなさそうよ?」


ケルベロスはさらなる攻撃を仕掛けてきた。


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