第55話 ケルベロスの初撃

「ねぇ、時間だけが過ぎて行ってない?」


「向こうも隙を伺ってるんじゃない?」


「かれこれ3分は経過してますよ……」


マズイ、投光魔法が裏目に出たか……。


ケルベロスからすれば、突然洞窟内が光ったんだ、


警戒するに違いなかった。


なら……。


僕は投光魔法の光を少し弱めた。


周りが視認できる程度に照らせば、


少しは照らす時間を延ばせる……。


「皆さん、少し光を弱めます! これでなんとか……」


「ハイドさんアカン!」


「えっ?」


しまった、警戒を許した。


後ろを振り返る。


ケルベロスの狙いは……


僕か!


咄嗟に飛んで回避する。


次の瞬間、右腕に痛みが走った。


「くっ……」


腕を掠めたか、


視線を向けると、


腕の肉が抉れているのがわかる。


「ハイド様! 大丈夫ですか!?」


「なんやねん……」


「デカすぎるでしょ」


目の前に現れたケルベロスはクエストの内容とは全く違う、


桁違いの大きさだ。


3階建てほどの大きさと聞いていたが、


それ以上の大きさだぞ!


ケルベロスの顔なんて平屋の家ぐらいある、


人間なんて丸のみできてしまうな。


巨大な体を漆黒の毛で覆い、


涎を垂らしながら、


大口を開けて呼吸をする姿はその場に立つだけで普通の人なら腰を抜かすだろうな。


そして……。


僕は3人に視線を向けた。


完全に委縮しているようだ……。


無理もない、初めてのAランククエストで魔獣退治、


ってか―――


「この大きさは聞いてた話と違いますね……」


「3倍はあるわね」


「絶対Aランクやないやろ、Sランクに匹敵するんちゃう?」


そう、この大きさ、強靭な足腰、絶対的な恐怖。


Aランクのそれではない、


おそらく前の冒険者が見たのは子供か何かか?


もしくは暗闇で見誤ったかしたんだろうな。


エマさんの言うとおり、Sランクの強さを持つぞ!


ケルベロスは僕たちを睨むなり、


まずは3つの頭が鼓膜が破れそうなほどの咆哮を上げた。


洞窟内が咆哮で錯覚を起こすほどの歪みが生じた。


「アカン! こんなん戦われへんって!」


「どうしたら……そうだ! ルイ、風魔法思いっきりぶっ放せ!」


「えっ? あ、はい!」

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