第53話 暗闇の中の唸り声
「もう少しでたどり着くってどういうことですか?」
ルイさんは岩に腰を落ち着かせ、肘をつきながら僕に尋ねてきた。
「モンスターがしばらく出てませんから」
「別にいいことやんか、それが原因ってことか?」
「弱いモンスターは強いモンスターの近くには寄り付きませんからね」
「へぇ、そうなんですか? 強いモンスターのそばにいそうなものですけどね」
僕はみんなに伝わるように身振り手振りを使って説明をしていく。
「モンスターは基本的には本能で動きますからね、強いモンスターのそばには近寄ろうとしません、モンスターは人間よりも純粋な上下関係が構築されています、いわば”絶対実力世界”みたいなものでしょうか? 力こそが正義、力のなき者は淘汰されていくそんな感じですかね」
「なるほど……ってことはモンスターが出なくなってから10分近くやから……」
エマさんが考えていると、何処からともなく獣の唸り声が洞窟内に響いた。
それは体の芯まで響き、腹の中から爪で引っ搔き回されてるかのような、
鈍くて低い唸り声だ。
思わず耳を両手で塞ぐ。
「な、なんやねんこの身の毛のよだつような唸り声は!」
「これが……ケルベロス……!?」
「うぅ……ふぅ」
ルイさんは声を出すことができないでいるようだった。
無理もない、魔獣なんて今まで経験したことは無いだろうし、
体もガタガタと震わせて必死に恐怖心を抑え込むなんて誰もが一度は通る道だ。
「皆さん! 気をつけて、おそらくすでに近くにいます!」
3人は周りを見渡して周囲を警戒する。
ガリガリと爪が地面を抉るような音が響き渡る。
薄暗い暗闇の中、
少しずつその音は近づいて来る。
次第に、地面を足踏みするような音も交じってくる。
近い……。
すぐそこにもういるはずだ、
だが姿が見えない。
周囲を警戒していると、ふっと風が髪の毛をなびかせる。
その瞬間、僕は警戒心が一気に高まり、3人に合図を送った。
「みなさん! 伏せて!」
「えっ?」
「どういうこと?」
「なんでもいい、伏せるんや!」
3人は咄嗟に頭を抱えて伏せた。
そしてルイさんの後ろにあった巨大な岩が突然豪快な音を上げて砕けた―――
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