第3話 ちょっとした勇気

 黒いローブに身を包む彼女は見たところ黒魔導士のようだ。


黒魔導士は攻撃魔法を巧みに操る、後方の花形的ポジション。


だが、黒魔導士になるには必要な能力がある。


それは圧倒的なセンスだ。


黒魔導士になれるほどの彼女だ。


きっととんでもない才能を持っているに違いない。


足蹴にされた彼女は激昂しながら立ち上がった。


「おい! いきなり後ろから蹴るってどういう神経してんねん、普通前から蹴るやろ!」


あ、そこ?


怒るポイント前か後ろの違いなんだ。


足蹴にした彼女はブスッとした表情でいい返している。


「だって邪魔じゃない、扉の前で動かない人いたら蹴るでしょ?」


「いや、そこは『大丈夫?』とか『なにかあった?』とか気にするやろ? いきなり蹴るって選択にはならんわ!」


「はぁ~、もうわかったからどけてくれる? あの、勇者はもういないんですか?」


マリアさんは困った表情を浮かべている。


それもそうだ、まさか同じタイミングで4人が同じ質問をして来てるんだ。


何度も答えるのも嫌になるだろう。


黒魔導士の彼女は周りを見渡し、雰囲気を察したのか頭に手を置きながら、深くため息をついた。


「はぁ、な~んだ。結局また1人かぁ」


「はっ、その性格じゃ1人になる決まってるわな」


「はぁ? なに、アンタ喧嘩売ってんの?」


2人はにらみ合い、今にも一発触発の状態だ。


白魔導士の彼女は2人をなんとかなだめようと必死に間に入って止めようとしている。


「あ、あの~、喧嘩はよくないですよ、仲良くしませんか?」


僕はただ茫然とその光景を眺めていた。


(はぁ、凄い勇者なら、この場をすぐに収められるんだろうけどな……)


ん? 待てよ。


回復魔法を使える白魔導士、


接近戦が得意な剣士、


後方から魔法を唱える黒魔導士、


そして、一応勇者である僕……。


これは、パーティ結成できるんじゃないか?


ここにいる彼女たちは勇者を求めてるんだ。


そう考えていると、僕は無意識に声を出していた。


「あ、あの!」


3人は僕の声に反応してこちらを向いている。


「ぼ、僕とパーティ組みませんか?」

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