第2話 3人のFランク冒険者

 酒場の扉が静かに開けられた。


「すいません、あの~今日勇者の一行の募集っていうチラシを見たんですけど、あってますか?」


凄く低姿勢で入ってきたのは小柄でとても可愛らしい女性の白魔導士だ。


白のローブと金色の杖、首元には青い宝石が埋め込まれた金色のネックレス。


毛先が少しくせ毛だが、胸元まで伸びる茶色の髪の毛は彼女の女性らしさを強く強調しているようだ。


この世界では白魔導士は凄く貴重とされている。


理由は簡単、回復魔法を扱えるからだ。


戦闘での傷を魔法で回復してくれる白魔導士は勇者のパーティでは必須。


当然、中々出会うことは無い。


僕はチャンスだと思った。


白魔導士の彼女が仲間になってくれれば、


僕の戦闘もグッと楽になるに違いない!


「あぁ、え~っと、ごめんなさい、今日はもう終わっちゃったの」


酒場の女マスター、マリアさんが彼女に話しかける。


「えぇ! でも正午からって……」


彼女はひどく慌て始めた。


だいぶ期待を込めて訪ねてきたんだろう、


まるで僕と一緒だ。


そうこうしていると、今度は扉を勢いよく開ける女性が入ってきた。


彼女は開口一番耳を塞ぎたくなるような大声で喋り始めた。


「すいません! あの、勇者のパーティに入れるって聞いたんすけど!」


随分と急いできたのか、とても汗だくだった。


マリアさんは凄く申し訳なさそうな表情を浮かべ、手を頬に当てる。


「あれ? もしかして……もう?」


彼女は立派な剣を携えた剣士と呼ばれる職業のようだ。


動きに支障が出ないよう軽量化された鎧を身に着け、


無造作に束ねた赤髪と耳に赤い宝石を埋め込んだ小さ目なピアス。


背も高く、スラっとしていてさながらモデルのようだ。


マリアは募集が終わったことをそれとなく伝える。


「そうなのよ、ごめんなさいね」


「そんなぁ!」


彼女はその場に前のめりで崩れるように倒れた。


床をドンドンと叩き、凄く悔しそうにしている。


彼女が悔しがっていると酒場の扉がまた開く。


目の前で倒れている彼女を足蹴にしながらもう1人の女性が入ってきた。


「ねぇ、邪魔なんだけど」


「どわぁ! いてぇ、な、なんや!?」


こうして僕たちはマリアの酒場で出会うことになった―――

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