謙虚で孤独な勇者はS級クエストを周回していた最強の冒険者でした

Mr.Six

第1話 孤独の勇者、ハイド

 世界二大帝国の一つ、【バルトガルト帝国】で僕は仲間を募るため【マリアの酒場】を訪ねていた。


しかし……


「えっ? もう仲間はいないんですか?」


「そうなのよ、ごめんなさいね」


「そう……ですか……」


僕はひどく落ち込んだ。


ここに来たらやっと念願の仲間ができると思ったのに。


僕は結局独りか。


僕の名はハイド・レイドリンク、これでも一応勇者を名乗らしてもらっている。


自慢ではないけど、少し昔に竜を倒したことが唯一の誇り……。


魔法も少し使えるし、装備も悪くない……はず。


なのに、


僕には仲間がいない!!!!!


勿論、勇者を名乗っていた当初は仲間がいた。


勇者はみんなが憧れる職業で、幼少期からずっと僕も憧れていた。


だからいつか大きくなったら絶対『勇者になろう!』と心に決めていた。


だが現実はそう甘くない。


モンスターとの壮絶な戦いの日々、


伝説の武器の探索、


未知なる大地の冒険。


僕だって、そんな勇者らしいことをしてみたかったが、


僕のパーティはいつも決まって誰にでもできそうなクエストばかりだった。


仲間もそれに嫌気がさしたのか、


1人、また1人と抜けて、いつしか僕は1人になってしまった。


このままではダメだと思って、多くのクエストをこなした。


そんな毎日を過ごしていた時、僕の目に飛び込んだのはこのバルトガルト帝国で『勇者一行に入りたい仲間を募集!』と書かれたチラシだった。


僕は目を輝かせた。


それもそうだ、ずっと一緒に旅をしてくれる仲間を探していたんだ。


期待したっていいはず。


少しは成長したんだ、


きっと仲間はできると信じてマリアの酒場にやってきたのに……。


「はぁ~」


僕はカウンターに座り、ため息をつきながらグラスの中の氷をゆっくりと回した。


募集時刻は正午、時間通りにやってきたのに、


既に人が集まったからって他の勇者が早く仲間を探していたなんて……。


本当に僕はついていない。


このまま居座っても酒場に迷惑かけるだけだし、


仕方がない、ここは諦めて帰るとするか。


僕が立ち上がって、酒場を出ようとした時、


酒場の扉がギィッと開いた―――

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