『ランランラン・エスケープ』4
暗い、暗い場所。
けれど、それを怖いとは思わない。
たとえるなら、羊水の中にでも居るような安心感さえあるほどだ。
なにも見えない、なにも聞こえない。
けれど、今はそれで良いと思える。
私は忘れてしまったけれど、これまで様々な人生にお邪魔してきて、疲れていたのだ。今は、入ってくる情報量は少ないほうが良い。
ああ、だからこの町から出られないというのは、私にとっては存外ちょうど良いのかもしれない。
時折、スキメ様からの質問があった。
男が良いのか、女が良いのか。利き手はどちらが良いのか。一重か二重か。
まさか自分の身体をオーダーメイドで造ってもらえるとは思わなくて、私の心は弾んだ。
私はスキメ様と、あれこれ相談を重ねた。
そうだ、名前も考えておこう。
スキメ様が私の身体を造ってくれたら、私は改めて、この町の一員となるのだから。
どんな名前が良いかな。
ふわふわと、そんなことを考える。
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