せっかく才能持って産まれたんだから、VTuberになる

プロローグ 衝撃

「おめでとうございます。夕月夜久遠ゆうづきよくおんさん。合格です。私たちスターライブと共に、VTuber業界を盛り上げていきましょう。」

「ありがとうございます。」

 思ったよりも簡単に合格することができた。改めて自分には才能があるんだなと自覚する。俺は夕月夜久遠、高校1年生。文武両道、歌、ダンス、ゲーム、雑談も完璧とかいう、PCに例えるなら富嶽もビックリの神スペックだ。ただ、自慢のためにVTuberになるのではない、たくさんの人に笑顔を届けるため、そして、個性が強いVTuberの先輩方と切磋琢磨することで自身をさらに成長させる。との二つが目的だ。

「それでは、久遠さんには見てもらいたいものがありましてね、うちの歌姫、夕星奏ゆうつづかなでのライブをドームで20:00からするんです。ここからも近いですし、新人の為の特別関係者席をとっています。あと3名の久遠さんの同期の未デビューのライバーがいますので、先に挨拶でも、関わり方についての会話など自由にしてください。基本的にガイドライン違反以外のすべてにおいて、我々は不干渉です。」

「そうなんですね、僕もその方がやりやすいです。ありがとうございます。」

「いえいえ、私たちも全力で裏からサポートさせていただきますが、基本的にはライバーのみなさんの功績ですので、感謝せれるようなことはありません。」

 この人は非常に謙虚なのだな、こういう人が社長だと安心して活動ができる。すごい人だなと俺は思った。そして、社長の山谷さんについて行き、ライブ会場へと到着した。改めてすごい熱気だった、それは当然である。なぜなら、これはVTuber初の5大ドームツアーの最初であるからだ。

    ここで、俺は死ぬまで忘れることのないであろう衝撃を受けた。

夕星先輩のアバターが現れた瞬間、会場一帯が静寂に包まれる。音楽が流れ、彼女の歌声を聴いた瞬間、玉響の衝撃、最初の一瞬の歌声で激しく心を奪われた、彼女の高音は泡沫のように消えてなくなりそうな一瞬の儚げな歌声であった。そして俺は、彼女が空蝉の物でないように感じた。聞き惚れているうちに、転調、その瞬間、彼女が瞬きをすると、その碧眼は真紅に変わった。気を取られていた刹那、今度は芯の通った低音の歌声が耳に響いた、二度目の衝撃だ。圧倒されている内に、曲が終了した。感想はとにかく衝撃のひとことである。言葉には言い表せないのだ。山谷さんがライブに集中できるように一人一人、区切りを作って座らせてもらっているが、顔の見えない他3人も同じように感じているだろう。

  


  今日、この瞬間を持って、俺は、自分がの現在の立ち位置を理解し、夕星先輩に並ぶことを一番の目的に決定した。笑顔を届けるという目標は夕星先輩に並べば、叶えられるだろう。なぜだって、それは当然、このドームライブのすべての観客が満足しているからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る