詩を巡る

 詩に声はなく、だがしかし微笑む。

 除夜の鐘が夜の縄を伝って君の耳へ着くように、詩の声は夜ごと君へ達する。やがて、鼓動と鳴り合わさって心音へ。

 そのと共に生きる限りは、その音を聴いて生きる限りは、なににも遅れず、蝶が君へと蜜を運び、道は歩きやすく、塀の猫は君へ降り立ち、声はよく通り、燕が旅立つのはいつも君の軒先から……。

 そうして、いつか君から旅も始まる。

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