第2話 

ただいま と返す。返事は、ない。

部屋に入って冷蔵庫を開ける。幽霊はそこにいる

さっき買ってきたコンビニ弁当、エコバッグに縦で入れてしまったのか、今日は具が左に片寄っている。唐揚げの油が残したベタつきに頬張る。

こんな時、あんたはなんて声をかけるだろう、きっと、第一声は"身体に悪いよ"、とでも言ってくれるかもしれない。"はたまた一口頂戴。"と口を突き出して来るのかもしれない。

向かいあっておいたクッションが少し凹んでいるから、そこに座っているんだね。

「ねぇ、いる?」

差し箸で唐揚げを突き出した。静まり帰った部屋で1人で虚しくなる、食べる日もあるのに、今日はそんな気分じゃないらしい。

私からは触れられないのに、悠介は私の肌に触ることができる。悠介は透明になってから私に抱きついたことも、アンニュイな、いかにも今。みたいな雰囲気になっても、押し倒してこない。触った試しがない。元々そういう行為に関心がなかったのは知っていたが、こっちは触れたくても触れることができないのだから、理不尽。同僚の三奈なんて彼氏とセックスレスでもう別れようかと日々悩んでいるというのに、私はもう2年間行為していない。可愛く誘ったところで悠介は揺らがないだろうし、私は悠介のそんなところに惹かれた。

申し訳無さ程度の漬物を飲み込んだとき、漫然が溶けたのがわかった、もう、20時。

風呂を洗うのが面倒くさい、ずっと突っ立ってないで、お風呂ぐらい洗って待っててよ。怒ったところで返事は無いし、悠介の不器用な所々汚れが残ってる洗い方はあんまり好きじゃなかった。

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