第十九話:ヘエルの独白
最近のコルニクスは私に冷たいです。
いえ、昔から冷たかったんですが、最近は更に冷たくなった気がします。
コルニクスは私のものなのに、私の従者なのに。
もっと私の事を見て欲しいと思うのは欲張りなのでしょうか。
前は待っていてと言っても抜け出して別の人と遊んでいましたし、今度は別の女性を拾ってきました。戦っている最中にイレさんのむ、胸も触っていましたし。
何よりも許せないのは、私といるときは何ともなさそうなのに、彼らと一緒にいるときにはよく笑っていることです。
思えば、コルニクスはずっと戦っているとき楽しそうでした。トートゥムと訓練をしているときもそうでしたし、最強になるための努力が楽しくて仕方がないのでしょう。
それは認めてあげます。許してあげます。人の好き嫌いはしょうがないですから。
でも、多分コルニクスは私の事嫌いではないと思うのです。
コルニクスはオペリオルさんの時に私を庇ってくれました。護衛として、従者として立ち向かってくれました。本当に嬉しかったんですよ。満たされた気持ちになったのです。
その結果は大変不服でしたが。何が不服かというと、オペリオルさんがコルニクスに付きまとうようになったのです。それに加えて、コルニクスが魔法を使えるということを私にまで隠していたこと!
闇属性という珍しい魔法属性で気になるってのはそうですし、主人である私に隠し事だなんて! 聞けばトートゥムは知っていたということじゃないですか! 二人して私に隠し事ばかり!
この分だとまだ隠してることがありそうなので、後でトートゥムには手紙を出して事情を話させます。どういう過程で知ったのか、なぜ私に黙っていたのかを聞き出す必要があります。
まあ、今はいいです。私の従者なので。ええ、大目に見てあげます。私のものなので。
でも、近いうちにそうじゃなくなったら?
オペリオルさんのピンサエス家もアストレア家に負けないほどの名門です。彼女が本気でコルニクスを奪いに来たら? コルニクスは戦えない私より、戦えるオペリオルさんを選んでしまうんじゃないですか?
もうコルニクスは私だけのものではなくなってしまいました。フェレスさん、バルバさん、イレさんと楽しそうに遊んでいます。
アストレア家にいたときは私のものだったのに。トートゥムなら多少は見逃してあげられたのに。こんなに狂おしいほどに焦がれることはなかったのに。
コルニクス、私には貴方が必要なんです。
私が私でいるためには、私が私だって自信をもって言うためには貴方が必要なのです。
だって、私を見てくれる人は貴方しかいないから。私を認めてくれる人は貴方しかいないから。
貴方にふさわしい主人であるよう、私頑張ったんですよ? それを知らなかったとはいえ、嘲笑われたときは傷つきました。ええ、大変辛かったです。
でも許します。私には貴方しかいませんから。許してあげます。私にはそれしかないので。
これほどまでに力が欲しいと思ったことはありません。
私にも戦える力があれば、あそこの輪に入っていけるのに。私もコルニクスに見てもらえるのに。
……そういえば、コルニクスはトートゥムのいう事を聞いてくれていました。トートゥムがいうから私のいう事も聞いてくれるようになりました。
なら、私がトートゥムみたいに強い人を従えていたら? コルニクスを倒せるぐらい強い人の主人になれれば? その時にはまた私に従ってくれますか?
前にコルニクスに聞いたことがあります、見たことがあります。
路地裏では力こそが全てだと。そして、路地裏では金でも物事を動かせると。
まだ怖いですけれど、貴方に見捨てられる恐怖に比べればどうということはありません。貴方だけが私の世界を証明してくれるのだから。貴方がいなければ私はいないのと同じなのですから。
ねぇ、コルニクス。貴方が私を見てくれないなら、私は貴方を振り向かせて見せますよ。
貴方が言う、力を使って。私が使える力を使って、貴方を上回って見せますよ?
だから、少しぐらい辛い目に遭ってもらってもいいですよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます