第十七話:二人目の

 結論から話すと、鬱陶しいのが一人増えた。


「ちょっと! 無視をしないでください!」

「私の、私の従者なんですよ!」

「ええい、やかましい鬱陶しい。二人で集るな、散れ!」


 一騎打ちでコテンパンに倒してやったと思ったら、なぜかオペリオルも俺に付きまとうようになった。お前らの頭の中はどうなってるんだ。

 自由時間の間とはいえ他の学生は勉強なり訓練してるんだぞ。俺になんか構ってないでお前らもなんかしろ。


「お前が使っていたあの魔法、闇の魔法でしょう! もっとよく見せなさい!」

「駄目です! 私が許可しません」

「ヘエル・アストレア! 闇の魔力の持ち主の貴重さがわからないのですか。まだ判明していないことが多い、光よりも希少な魔力なんですよ!」

「貴重だろうと私の従者です!」


 なんでお前らが喧嘩する。

 てかオペリオルはあれだけ恥かかされてよく俺に付きまとえるな。お前も面の皮が厚い系女子だったか。同じ面の皮が厚い系女子として仲良くしろよ。俺を挟んで喧嘩をするな。


「やあ、コルニクス。賑やかだね」

「フェレス、助けろ。あとこの状況を賑やかで済ませるな、地獄だぞここは」


 廊下をそんな調子で歩いていると、正面からフェレスがやってきた。

 お前ら、原作主人公だぞ、こっちに付きまとえ。


「やだなぁ。僕が彼女たちをどうこうできるわけないじゃないか」

「できるかどうかじゃない、やれ。助けろ」

「あははは。君でも勝てない相手がいると思うと少し楽しいよ」


 こいつ……一回わからせてやらないとダメか?


「フェレス。フェレス・フルゴルですか」

「僕の事をご存じで?」

「ええ、知っています。成績優秀者の名前は全員覚えるようにしてますので」


 どこで知ったんだよその情報は。てか成績って何の成績だ。 

 入学前にテストでもしてたのか? そんなところ俺は見てなかったけどな。

 そこまで考えて、ヘエルが忘れかけていた書類のことを思い出す。あれは問題の解答っぽかったな。自宅に送られて結果を回答する形式だったのか。家庭教師にやらせる奴とかいそうだけど、そこらへんどうなんだろうな。


「馬鹿ですねお前。不正などしてもバレるに決まっているでしょう」

「お前腹立つなぁ。なんでバレるんだよ」

「学力はその家の家格と比較的比例するからです。一部の例外はありますが、家同士の交流からその家の学力レベルは伺えます」


 なるほどな。大体の目安があって、そこから外れてたらなんかした疑いがあるってことか。


「そこらへんフェレスはどうなんだ。したのか? 不正」

「してないよ。結構真面目に勉強した結果が出て嬉しい限りだよ」

「彼は話してみて優秀さがわかります。貴女とは真逆ですねヘエル・アストレア」

「なっ! 私のどこが優秀ではないというのですか!」


 俺に付きまとうところだろうよ。頼むから離れてくれ。人の視線がウザい。


「まあ俺もヘエルが優秀だとは思ってなかったがな」

「コルニクスまで! 私の従者なのですから私の味方をしてくださいよ!」

「入学生代表に選ばれるのは成績優秀者で家格が高い者……。未だにこの人物に負けたとは信じられません」

「酷い! 何とか言ってやってくださいコルニクス!」

「俺もそう思ってた」

「コルニクス!?」


 何をそんな裏切られたような顔をしてるんだ。俺は原作通りオペリオルが新入生代表だと思ってたぞ。

 ヘエルが代表演説するなんて全く想像もしていなかった。

 そもそも代表演説がどういう基準で決まるのかも知らなかったけどな。


「そうだ、お二方、コルニクス君をお借りしてもいいですか?」

「コルニクスをですか? ……いいですけれども、一体どのような用ですか?」

「バルバともう一人……訓練中に知り合ったんですけど、コルニクス君と手合わせしてみたいって人がいましてね。せっかくなので、一緒に行こうかと」


 おっ、やっぱりバルバとフェレスは仲良くなったのか。相性はいいだろうなと思ってたが、思っていたよりも早かったな。何かきっかけでもあったんだろうな。

 思えば、主要メンバーの六人が真っ当に揃うのは初めて魔境に実地訓練に行くときだったか。

 なのにこの場に四人も揃っているのは随分と展開が早い。この調子だと残り二人ももうすぐ会うことになりそうだな。


「勝手に決めるのはもういいがな。そのもう一人ってのは誰だ。俺の知ってるやつか?」

「いや、多分知らないんじゃないかな。女の子なんだけど、イレ・アーレアって子なんだ」


 イレ・アーレア? これまた原作のメンバーの一人じゃないか。風属性の魔法の使い手で、原作では魔法剣士として高い適応力を見せていた人物だ。

 そして今、俺が目指している戦い方と最も近い戦い方をしている人物でもある。向こうがお呼びとあれば是非もない。


「いいだろう。案内しろ。身の程知らずに格ってのを教えてやる」

「僕たちも見に行きますよ。闇の魔法を研究できる貴重な時間です」

「行きますけれど! 行きますけれど貴女が当然の顔をしないでください!」


 本当にうるさい二人組だ。

 今度から自由時間は練武場に逃げ込もうか本格的に考えないといけないかもな。

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