第25話 三人の関係

ザワザワ・・。

城内が騒がしい。

僕たちの事を噂しているのだろう。

城の廊下を歩いていると、とにかく目立つ。

僕の左にウェンディ、右にレーシャ王女。

三人横に並んで歩いていた。


「結局付き合う事になったのか」

通りかかったアスマに言われる。


「二人と付き合えるなんて、ラッキーって思っておけば良いんじゃね?正直羨ましいぜ」

僕の心中を察したのか、そんなセリフを残しアスマは去って行った。




*****アスマ視点




「あのさあ、あれで言いわけ?」


勇者パーティ仲間のユウリが俺に問いかける。

先ほどすれ違ったトワたちの事を言っているのだろう。


「ハーレム作っちゃってさ。これから魔王と戦おうって時によ?」

「まだ、戦う時期が決まったわけじゃない。それにあんなカップルは普通だろ?何を怒っているんだ?」


俺もこの世界の婚姻事情を聞いて最初の頃は驚いていたな。

もっとも、相手が居ないからどうしようもないのだけど。

ああ、そうか。


「ユウリ、俺と付き合ってみるか?」

「な、何バカなことを言ってんのよ・・」


年頃のユウリはトワたちが気になっているのかもしれない。

顔を赤くした赤い髪の少女はそっぽを向いていた。




*****レーシャ視点




少し前――――。

誘拐されて、わたくしは今までにないくらい怖い思いをしました。


トワ様が気になって、仕方なかったわたくしはずっと彼の後を追いかけていました。

その時は都に居て、ふと誰かに声をかけられて・・さらわれてしまいました。

うかつでした。

その時は自分の立場をすっかり忘れていたのかもしれません。

今まではアスマと一緒だったから守られていたのです。


目も口も塞がれて何も見えませんでした。

声がして、トワ様が助けに来てくれたと分かりました。


攫った男が言いました。


「こっちは・・女の子に傷つけたら・・可哀そうだよなぁ」

冷たく鋭利な固い物・・恐らくナイフがわたくしの頬に当たっているようです。


「ば、今何をしているのか分かってんのか??監獄行きだぞ?」


トワ様の慌てた声、男たちを心配しているようでした。

その後、どうにかなったのか縄が解かれてわたくしは解放されました。

わたくしは安堵のあまりしばらく泣いてしまいましたが。



城に帰り気が付けば、トワ様の事ばかり考えるようになってしまいました。

これが好きと言う感情なのでしょうか?


トワ様はウェンディと一緒ですが構いません。

わたくしはトワ様に抱きつきます。

不思議と気持ちがほっこりして温かくなります。

そのたびにウェンディに引きはがされましたけど。


そうこうしているうちに、トワ様から訊かれました。


「僕の事が好きなのかな?」

ちょっと困った顔をして聞かれましたが


「はい」

と答えました。


「僕も好きだから・・一緒にいると良いよ」


照れて言うトワ様。

思わぬ言葉に嬉しくてまた抱きついていました。

どうやら、わたくしと恋人になっても良いと思ってくださったようです。

ウェンディは拗ねていましたけど。


「その代わり、二人仲良くしてほしいな」


それでも、トワ様の言葉は実行できるか自信がありませんけどね。



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