第24話 恋人とは

「とーわー様っ!」


城の廊下で歩いている僕に、レーシャ王女が抱きついてきた。

ウェンディが見かねてレーシャ王女を引きはがす。

そんなやり取りがここ数日繰り広げられていた。


「随分好かれたみたいね」

「はぁ~」

「どうすんのあれ」

「どうするって言われてもなぁ」


王女様だし、どうしたらいいのだろう。

そう思っていたら。



王様に呼ばれた。

城の中で幾度となくレーシャ王女に抱きつかれているのは皆が知るところとなっていた。

もちろん王様が知らない訳もない。

玉座の間ではなく、違う部屋に呼ばれた。


コンコンコン。


「失礼します」


緊張しながらドアを開けると、机で事務仕事をしている王様の姿があった。

玉座の時に見た姿ではなくて割とラフな服を着ていた。

大量の書類が机に置いてあって、書類に書き込んでいるようだ。


「すまんな。そこのソファに適当に座っていてくれ」



しばらくして、ひと段落したのか王様がソファの対面に座った。


「レーシャの事なのだが・・トワ殿はどう思っている?」

「どう・・とは好きとかそういう事でしょうか」

「そういう事だ。嫌いならはっきり言ってくれて構わない。だからと言って、対応を変えることも無い」


「嫌いではないです。どちらかというと好きですけど」

「ならば問題は無い。付き合ってやってもらえるか?」

「・・あの、僕には恋人がいるのですが?」


王様は首を傾げている。

「何を言っておる。何人いても結婚はできよう。おかしなことを言うものだ」


あれ?僕が変なのかな??


「少なくともゼノベア王国では一人でも二人でもいいのだが?好きなだけ一緒になればいい。もちろん男とか女とか関係なくだ」


あれ?この世界は夫婦の概念が違うのかな?

そういえばここは異世界だった。

日本ではない。

僕の両親が普通だったから疑問にも思わなかったけど。


「何もおかしなことではないぞ?トワ殿は・・貴族でも珍しい事ではない。経済力の問題もあるから100人という訳にもいかないだろうが」


100人って・・頭がおかしくなってきた。


「とにかく、ウェンディの意見を聞かないと決められません」

僕はそう言って早々に部屋を退出した。



**



「好きにすればいいわよ。私はそばに居られるだけでいいの」

部屋に戻ったら、ウェンディが待っていた。


ウェンディが良いのなら、別に良いのか。

ソファに座り、いまいち腑に落ちないままぼーっとしていると彼女がキスをしてきた。


「ちょっ!」


驚いて顔が熱くなった。


「私が大好きなのはトワだけなんだからね。本当は誰にも渡したくないんだから」


拗ねた表情も可愛くて、僕は彼女を抱き寄せていた。

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