第22話 誘拐

*****シキ(二番目の兄)視点


「くそっ、何でトワの奴が・・」

「何で俺が来なきゃいけないんだ。帰りたい・・」


俺は、トワが勇者パーティに選ばれたせいでウィンザー家の跡取りから外されてしまった。

腹が立って気が済みそうもない。

王都に行って一言文句・・それ以上の事をして憂さ晴らしをしたい。


「シキ兄、何で俺まで王都に・・来なくても良かったんじゃ・・」

弟のロドスはさっきから文句ばっかり言っているが、兄弟なんだから協力しろよ。


「少し痛い目にでも合わせたいところだが・・城に居るのだろうか・・」


王都に来れば会えるだろうと適当に来たのだ。

両親には王都で買い物がしたいと理由を付けて家を出てきた。

どうやって会うか・・兄弟なんだから言えば会えるのだろうか?


馬車から降りて、考え事をしていると・・・。

目の前を探している人物が通り過ぎる。


「あ、おい!」


声をかけようとしたが、様子を少し見ることにした。

トワはどうやら恋人と歩いていて、少し離れてその後ろを銀髪の少女が追いかけているみたいだ。

仲間なのだろうか。


「トワの知り合いか?・・ロドスあの少女をナンパしてこい」

「ええ?」


「よく見るとめっちゃ可愛い子じゃん。任せろよ!シキ兄!」

ロドスは扱いやすいな。


「ちょっと、そこのお嬢さん」

「はい?」


美しい銀髪を揺らして、緑色の瞳の少女は振り返る。


「何か用ですか?」


「えっと・・その・・」

ロドスは声はかけたものの、次の言葉が出てこないようだ。

目の前の美少女に照れているようだ。


「ああ、見失っちゃった・・どうしましょう・・」

「どうしましたか?」


俺は偶然を装い少女に近づいた。



「あれ?レーシャが居なくなってる」

「本当ね。どこへ行ったのかしら」


さっきまでずっと僕たちをつけてきた彼女が忽然と姿を消していた。


「お城に帰ったのかな?」

「それならいいけど」



*****レーシャ視線



わたくしは目を覚ました。

周りは真っ暗でここは何処だろう。

埃っぽい場所みたいだ。

倉庫とかだろうか。


「お目覚めかい?」


男性の声で、声をかけられる。

手首が縄で絞められているのか自由がきかない。

口にも布が覆われているようだった。


「ん~ん~」


声が出せない。

わたくしは誘拐されてしまったようだ。

都に来るときはいつも勇者たちと一緒だったからさらわれるなんてことは一度も無かった。

最近安全だったから油断してしまっていたみたい。


「なあ、シキ兄これからどうすんのさ。犯罪者みたいなことして・・」


もう一人男がいた。

さっき声をかけてきた男かもしれない。


「まあ、待て。トワに一泡吹かせたいからな・・さてどうしようかな」


わたくしを攫って何をしようとしているのだろう。

トワ様の知り合い?

不穏な男たちの言葉に背筋が寒くなっていた。

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