第20話 手紙
勇者アスマは王様にこっぴどく叱られていた。
雷魔法で皆が大怪我を追うかもしれなかったからだ。
無謀にもほどがあるよね。
予想していたとはいえ、僕が防御魔法を張ったから良かったけど。
僕は勇者パーティに入る事になった。
断れる雰囲気ではない。
魔法の実力を認められて皆から尊敬の眼差しで見られたら。
条件としてウェンディも一緒にと言ったらあっさり認められた。
数日が経った。
キィン!
カンカン!
演習場でアスマとゴダイが剣で打ち合っている。
ゴダイは勇者パーティに属しており、元冒険者で剣士だ。
アスマに剣を教えているらしい。
僕は剣さばきが見たくて見学をしていた。
何も無いって平和だな。
「トワ様、お手紙が来ていますが」
城のメイドさんが手紙を持ってきた。
手紙って誰からだろう。
宛先を見ると実家からだった。
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トワへ
至急屋敷に戻って欲しい。
話したい事があるので至急願う。
父アーロンより
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「短っ!」
簡略的な短い文章。
しかし、何なんだろう今更。
僕を追い出したのはそっちじゃないか。
数カ月前を思い出して僕は少しイライラしていた。
「実家に戻るの?」
ウェンディに、一旦家に戻る事を話したら実家に戻ると思われてしまった。
「違う違う、帰って来いって手紙が来たから用件を聞きに行くだけだよ。王様に許可取りに行かないと」
「私も一緒に行く!」
「・・行っても良いけど、多分つまらないよ?僕見下されてるし」
僕は実家に行くことにした。
馬車を貸し出すと王様から言われたけど、風魔法で飛んで帰る事にする。
その方が早く行けるし、早く帰ってくれるからだ。
家には長く居たくない。
『風よ・・』
僕とウェンディを、風の魔法で包み込んで上昇する。
町を見下ろしても誰も空の僕らには気が付かない。
以前も飛んだけど、鳥になった気分だ。
気持ち良すぎて癖になりそう。
「空を飛べて気持ちいいけど・・魔力は大丈夫なの?」
「うん。全然問題ないよ。僕は特別多いみたいだからね」
昼前から飛んで、数時間で屋敷に到着した。
王都から二、三時間くらいかな。
「随分早かったな。驚いたぞ。到着まで一週間はかかると思っていたのだが」
わざわざ玄関に父と母が出迎えに来た。
一体どうしたんだ?
「ささ、上がって。隣のお嬢さんは?」
「私はウェンディと申します。トワさんとはお付き合いをさせて頂いています」
軽い挨拶を交わした。
僕たちはリビングに通された。
出て行った時とだいぶ対応が違うな。
どうしたんだろう。
長椅子に座り、目の前のテーブルには紅茶が出された。
僕とウェンディは並んで座り、父は僕の目の前に座った。
「えと、聞いた話によるとトワは勇者パーティに入ったそうじゃないか。父さんは誇らしく思うぞ。それで・・だが、トワは家を継ぐ気はないか?」
「え?」
何で急にそうなるんだ?
僕たちから少し離れた位置に居た、兄たちが目を見開いて固まっている。
二番目の兄シキと四番目の兄ロドスだ。
そもそも家を継ぐのはシキ兄と決まっていたはずだけど。
「勇者パーティに入るなんて凄いじゃないか。上手くいけば爵位も貰えるかもしれんし・・」
そういう事か。
両親は昔から、地位とか名誉とかそういうのにしか興味が無かったからな。
「な、何言ってんだよ親父!俺が家を継ぐって話じゃ・・」
シキが抗議をする。
当然の反応だ。
「シキには悪いが・・諦めてくれるか?」
「な、なんでだよっ。急にトワが出世したからって・・」
シキが僕を睨む。
「えっと。急に言われても困ります。今まで僕は邪魔な存在でしたよね?」
ガタッ!
ウェンディが急に立ち上がった。
「お断りします!トワは家には戻りたくないと言っていましたから」
「え?ウェンディ??」
「帰りましょ。トワ、城で勇者様たちが待っているわ」
僕はウェンディに手を引かれて屋敷を出た。
「ごめんなさい。余計だったかしら・・家を追い出しておいて、今までの事謝らないしムカムカしちゃって」
「まあ、びっくりしたけど問題ないよ」
両親は今頃呆けている事だろう。
まあどうでもいい事だけど。
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