第19話 模擬戦

謁見の間に入った。

広い空間は人が大勢入れそうな場所で、床の中央には縦長のじゅうたんが敷かれており奥に立派な椅子に座った壮年が見える。

王冠を頭に乗せて、髪は銀色、毛皮のマントを羽織っていた。


「失礼します」

アスマは頭を下げ一礼し入っていく。


「呆けてないで、私たちも一緒に行くわよ」

ウェンディに言われアスマとレーシャ王女についていく。



王様の数メートル手前で立ち止まる。


「そちらが例の少年か。そなた名前を何と申す」


「僕はトワ・ウィンザーと申します。隣の女性はウェンディと申しまして僕の恋人です」


アスマの真似をして、ひざを折り顔を下に向けて名乗る。


「勇者パーティに加わるという事で良いのか?」


王様に言われて断れるわけがない。

断ったら恐らく何かの処分が下される?のだろう。


「お待ちください、陛下」

「勇者アスマかどうした」


「わたくし・・俺は納得していません。力を試してみたいのですが如何いかがでしょうか」

「成程、一理あるな。では演習場で模擬戦をしたらどうか」

「有難うございます」




*****




「え・・と何でこんな事になっちゃったんだろう・・」

僕は今、城の演習場に来ていた。

勇者のアスマと模擬戦をする為だ。


対人戦とかした事無いんだけど。

「わりいな。別に異論があったわけじゃないんだが、戦いたくなっちまってさ。安心してくれ、怪我してもレーシャが治せるしな」


アスマが僕に言った。

え?

戦いたいからあんなこと言ったの?


こうなったからには仕方ない。

周りには王様や城の関係者とか皆見ているから。

僕とアスマは向かい合った。


「始め!」


審判の声が響いた。

始めに動いたのはアスマ。

僕の所へ素早く移動し剣を当てに来る。


『光よ・・「障壁魔法バリヤー」』

とにかく防御魔法を発動させた。


キィン!

剣が障壁に当たって弾かれる。

「そうきたか」


僕は右手を突き出し、魔法を放つ。

『ファイヤボール』


「うわっと」


アスマは避けようとしたが、広範囲の為避けられず


水の壁ウォーターウォール


水の壁を作って、ファイヤーボールをやり過ごした。


「「やるじゃないか!」」

『雷よ・・』


アスマは続けて魔法を行使する。

会場の上が黒い雲に包まれる。

巨大な範囲魔法。

これかなりヤバイ気がする。

僕はとっさに、会場全体にドーム型の防御魔法を発動させた。


ピカッと閃光が光り

「「ドドドドドーーーーーーン」」


凄まじい音の落雷が落ちた。

地鳴りが響く。

直撃したらやばかったな。


「「ちょーっとストップストップ!」」


レーシャ王女が間に入った。

「ちょっと、今の魔法はやりすぎよ!会場の皆が巻き込まれるじゃないの!」


「あーごめんつい、楽しくなっちゃって・・」


アスマは頭を掻いている。

っていうか今の防御魔法しなければ皆感電してたよ?


「本当ですよ。僕が防御しなければ皆さん大怪我してましたよ」

「いや、予想どおりだ。これでトワがパーティに入るのは全く問題ないよな?」


僕が防御魔法を使うのは想定内だったってこと?

アスマは他の勇者メンバーに声をかける。

他のメンバー、赤い髪のマントを着た女性と鎧を着ている男性は呆れているようだった。

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