第二章 勇者パーティ編

第18話 王城へ

「勇者パーティって・・」


僕の頭の中には、勇者と魔王が戦うという最悪のイメージしか出てこない。

マンガやラノベの世界だ。


「トワどうするの?」


ウェンディに聞かれたけど、出来れば勇者パーティには関わりたくない。

戦いに行くのが目に見えているじゃないか。




「こんちは。ここに銀髪の少女いないか?」


宿の入口付近で、男性の声がした。

以前、冒険者ギルドで見た黒髪の日本人と思われる男性だ。


「あ、アスマ・・」


レーシャはうつむいている。

ウィンディは手を上げて、男性に声をかける。


「こんにちは。レーシャさんはこちらにいますよ」

「え、本当っすか」


男性が頭を下げる。

「すみません。レーシャがご迷惑をおかけしたみたいで・・」


僕たちに謝ってきた。

思っていたより良い人みたいじゃないか。


「レーシャ、それでどうするんだ?少年は見つかったのか?」


レーシャ王女は僕を指さした。

あーそっか。

もしかしてこの人が勇者なのだろうか。


「君、ゼノベア王城に一緒に来てもらいたいのだけど良いかな?」


「私も一緒で良いですか?」

ウェンディがすかさず言う。


「ああ、構わないよ」

僕に断る選択肢は無いみたいだ。




ビュウウウ・・。


「まさか、俺以外にも風魔法で空を飛べる人がいるとは・・」


僕たちは風魔法を使い、前にアスマさん、レーシャ王女を先頭にして後ろを付いてきている。

眼下には鬱蒼うっそうとした森が見える。

上空を飛ぶのが凄く気持ち良い。


「使ったのは初めてですよ・・出来そうな気がしたので」


アスマさんは驚く。

「嘘だろ?初めて?ありえねえ。これ結構魔力使うし、コントロールも大変なんだが」

「そうなんですか?」


魔石の時もそうだったけど、魔法の使い方が何となく理解できるんだよな。

それって僕だけなのだろうか。


「そういう特別な力があるって事なのでしょうね」

レーシャ王女が呟いた。


馬車で移動するよりも何倍も速く移動できるようだ。

もう、城が見えてきた。


「流石に魔力切れたわ」


城の前に到着すると、アスマが城の前に座り込みガラスの小瓶を開けて飲む。

突然現れた僕たちに兵士たちが驚いていたが、アスマさんを見てホッとしていた。


「往復したのでしょう?そりゃ魔力切れますわよね」


喧嘩したって言ってたけど、レーシャ王女はアスマを気遣っているようだ。

自分のハンカチでアスマの額の汗を拭きとっている。


「案外、大丈夫じゃないかしら。きっと直ぐ仲直りするわよ」

その様子を見て、ウェンディもそう思ったようだ。


僕たちは歩いてアスマさんたちの後ろをついていく。

これからゼノベアの王様に会うために。


「急に緊張してきた・・」

「私もよ・・」


城は思っていたよりも広くて中々目的地に着かない。

歩いている時間がとても長く感じられた。

大きな扉の前に到着した。


「ここだ、ちょっと待ってろ」


コンコンコン。

アスマがノックをした。


「王女と、例の少年を連れてきました」

「入りなさい」


扉が左右にゆっくりと開かれる。


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