コント用台本 『余命1週間』
ちゃんちゃらめ
コント 『余命1週間』
患者A……余命1週間と診断された青年。吹っ切れれば爽やかになる。
患者B⋯⋯Aの隣のベッドで入院している。イメージはゴツい体で職業は『大工』みたいな人
医者⋯⋯患者に「先生」と呼ばれる。基本はちょっと俯いて泣くのを堪えるような喋り方
ナース⋯最後にチョロっと出てくるモブ役。ゆるっとした若い娘。白衣の天使的な人。
場所:大きな総合病院の病室
患者A
「先生、俺本当に死ぬんですか⋯⋯ほんとうにあと一週間の命なんですか!!」
医者
「ああ」重々しく
患者A
「本当に本当なんですね⋯⋯」
医者
「ああ、本当に残念だがキミの命はあと一週間だ」
患者A
「じゃあ⋯じゃあ⋯(溜める)⋯なんで俺こんなに元気なんですか!」
医者、首を数回横に振る
患者A
「あ〜、なんか微熱だなぁ〜って病院来て、なんで余命1週間なんですか!!」
医者
「本当にすまないと思っている。現在の医療技術ではキミは⋯⋯」
患者A
「デスノートに名前書かれたくらいしか思いつかないんですよ」
【間】
医者
「すまん、本当にすまん」
患者A
「絶対に死ぬんですね。もう⋯⋯全財産使っても良いんですね!!」
医者
「⋯⋯そうだ」クッ⋯って感じ
患者A
「じゃあ、飛行機でハワイまで行きますよ」
医者
「ああ、こんなこと言える立場じゃないかもしれないが⋯⋯最後の旅行だ。楽しんできてくれ」
患者A
「そのまま、マリンスポーツ楽しんだり、キラウエア火山の火口まで歩いて見学に行きますよ!!」
医者
「ああ、最高の思い出になるだろう」
患者A
「更にひこうきチャーターしてスカイダイビングしてきますよ」
医者
「ああ、やってきなさい。やりたいことは全部やりなさい。⋯⋯後悔の、無いようにな」
患者A、大きく息を吸う
患者A
「ホントにあと一週間で死ぬんですかぁぁ!! 安静にして体に負担かけなくても良いんですかぁぁぁ!!!」絶叫
医者
「なんの問題もない」
患者A、スーハースーハーと息を整え冷静な喋り方に戻る。
患者A
「すみません。ちょっと頭に血が登って」
医者
「いいんだ、いいんだ」
2回目はより感情込める感じ
患者A
「先生、しょ〜じきに言ってください。僕は北斗し⋯」
医者
「ん拳にやられたわけないじゃないか!!ここは漫画の世界じゃないんだぞ!」
患者A、ビクッと驚く
医者、患者Aの方をガシッと掴み、熱い眼で語りかける
医者
「いいか、冗談なく、キミはデスノートも北斗神拳も関係なく余命1週間だ」
患者
「そ、そうですか」ちょっと引く
医者、患者Aから手を離し泣くのを堪えるモードに戻る
医者
「さあ⋯⋯早く旅行会社に電話してハワイ旅行のプランを組みなさい。クゥ⋯⋯」とうとう目頭を抑え、今度は上を向く。
患者A
「本当に本当なんですね。すみません。予約するので席、外します」覚悟を決めた声
患者A、スマホを取りだしながら袖へ退場。
医者
「うう、ううう」
医者が悲しんでいると隣の病室から声が……
患者B
「すぅ、すみません。隣にいるのは先生ですか?」
医者
「ああ、ちょっと待っていてくれ」
医者、ポケットからハンカチを取り出し目頭を拭いてから隣のカーテンを開ける。
患者B
「ああ、先生。俺の身体はどうでしょうか⋯⋯イタッ⋯⋯やっぱりダメでしょうか?」
医者
「ああ、キミのカルテは⋯⋯」
医者、カルテのまとめられた紙束をペラペラめくる。
医者
「なるほど、暴走したトラックとの衝突、骨の多くが折れて⋯⋯内蔵も⋯⋯喋れていることが奇跡なほど」だんだん泣くのを堪えるようになっていく。
患者B
「そ、そうですか。⋯⋯やっぱり完治して退院なんてのは⋯⋯」
医者、カルテを更にめくる
医者
「そうだな。今日の所は様子見して明日には退院でき、ハァーーーーー!!!」
医者、声にならない驚きと共に後ろへドタドタッと下がる
患者B
「そっ、そっかぁ〜、明日には退院かぁ〜、ハハッ、先生。ありがとうございまウッ、ゴホッ、ゲホッゴホッウォホッ!!」激しく咳き込む
医者
「(大きく深呼吸)⋯⋯では、詳細はのちほど⋯⋯」
医者、カーテンをゆっくり閉める。
医者
「いかんいかんいかん⋯⋯」小声で呟きながら早歩きでグルグルする。
患者A、袖から軽く走って登場
患者A
「お待たせしました。(1拍置く)予約してきましたよ。全財産で行くハワイ旅行」爽やかに言う。
医者、患者Aの「お待たせしました」で、ピタッと止まって患者に向かってニコニコ笑顔
医者
「しょ、しょうか。良かったな。も、も、もも、もひだが、8日目をむ、迎えたらどうするね」喋り出すと同時にがたがた震え出す。
患者A
「ふっ。そんな希望を持たせるようなこと言わないで下さいよ。⋯⋯でも、(1拍置く)もし生きていたらお世話になった先生にハワイのお土産でも渡したいですね」爽やか
患者A、「でも」の後でスッ…と遠くを見る。
医者
「しょ、しょうか⋯⋯」ガッタガタに震え続ける。患者Aが喋る事に震えが大きくなる。
患者A
「じゃあ、夜の便でハワイに向かうので僕は荷物の準備をしてきます」
医者
「あ、ああ。た、たたたたたた、楽しんで来なさい」
患者A
「楽しみだなぁ〜、ファーストクラス」爽やかに言いながら袖へ退場
医者、患者Aを見送ったあと、病院の横のナースコールを狂ったように連打
ナース
「は〜い。も〜、患者さん、そんなに押さなくてもちゃんと来ますよ〜」能天気に袖から登場
ナース、部屋に入る
ナース
「1番ベッドの⋯⋯あれ? 先生」どうしてあなたが連打してるの!? って感じ
医者
「き、きききキミぃ、院長に伝えといてく、く、く、くく、くれ!」
医者、バンと1回、足を鳴らして体の震えを止める
医者
「儂は今すぐブラジル旅行に行く!!!」大きな声で宣言する。
医者、袖へ退場
ナース
「は~い」
ナース
「ふ~、ふふ~ん。あっ、第2ベッドの患者さ~ん」
ナース、患者Bのカーテン開ける
ナース
「さっき診断内容を聞いたと思うんですけど、一部にミスがありました。最新の医療技術で3年後に退院できますよ」ニコニコ笑顔
患者B
「ううう、ホント、ゴホッゲホッ⋯⋯」
ナース
「はい。元気になったら自己負担する治療費の7500万円、返しに来てくださいね」
医療機器、『ピーーーー』
コント用台本 『余命1週間』 ちゃんちゃらめ @tyantyarame
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます