第16話 艦内騒乱

 帝国艦隊と遭遇したガンダルヴァは優勢に戦いを進めていたけど、隠れていた敵に艦内に侵入されていた。


 僕たちは艦長の命令を受け、艦底部の格納庫にいた僕たちは急ぎ船体後部の機関室へ向かう。

 けれどもその途中で僕たちは敵に出くわした。その敵は五十人はいて、僕たちと同じくメイガスを来ていた。


 OCMMのメイガスとの違いは緑色、装甲を身に着けていない軽装で、ライフルや拳銃といった以外の武器がなかった。

 安価な簡易版だというのが見て取れるが、それでも同じメイガスを着ていることには変わりない。油断は禁物だ。


 茅の指示で僕は彼女と共に前に出て、パウリーネとアガットを後ろに回して支援を頼む。

 茅は右手に青い刀身の妖刀を、左手に小太刀の様な赤く短い刀身の妖刀を持ち、両刀を交差して身構える。


 僕も白のトンファーを両手に持ち、ファイティングポーズを取った。

 後方のパウリーネもメイガスに取り付けた、小さい傘の様なつばがある取手を鞘から引き抜く。

 鞘から引き抜かれると細長いビームが刀身となって現れ、彼女は右半身を前面に出して半身となり、光子の刃のフルーレを構える。


 アガットはメイド服の両裾からナイフを取り出し握り、それを前に突き出し身構える。

 同時に彼女の体から淡い光が放たれていく。僕たちに付加魔法バフを掛ける為に魔力を練っているんだ。


 そうこうしている内に最前列の敵が銃を構え――――




 大跳躍して僕たちを後方から飛び越した魔法少女が、そのまま先頭の敵にドロップキックをぶちかました。


「グベァ!?」

「な、何…アダラッ!?」

「芽亜里!?」


 変身した芽亜里が現れたと同時に、前に出た敵三人を叩きのめしてしまった。こちらに振り返り彼女は不敵に笑う。


「宇宙じゃ役立たずだけど、空気がある場所なら別だわ。ここは私に任せてみんなは機関室へ向かって」


 そう言って芽亜里は敵に向き直り、突撃していった。迎え撃つ敵は銃を撃つけど、素早い彼女の動きを捉える事が出来ず、接近を許し彼女の拳に横っ面を殴られた男が壁に叩きつけられ気絶する。


 オーガの集団ですら子供を相手にするように圧倒した彼女だ。

 メイガスを着ているといっても限定的に狭い通路で機動力を生かしきれない敵軍は、煌びやかな衣装を身にまとう少女の嵐のような舞踏に巻き込まれ、次々と倒されていった。


 敵が芽亜里に気を取られている隙に、僕たちは敵に向かって駆け出し、思いっ切りジャンプする。

 そして背中のブースターを噴射して、敵の集団を上から通り過ぎた。

 気づいた敵が銃で撃ち落とそうとしたけど、アガットがバフを掛け、ブースターの出力が上がる。

 そのスピードについてこれず弾が当たることは叶わなかった。


「おい、敵が機関室に行っちまうぞ!」

「くそ、追いか――ゲゾッ!?」


 飛び越された最後尾の敵は慌てて追いかけようとしたけど、悲鳴を上げた。

 振り返るといつの間にか芽亜里が敵集団をすり抜け、最後尾の敵が彼女に叩きのめされてた。


「このガキ! いつの間に!?」

「まだステージは始まったばかりよ? 最後まで私のダンスに付き合ってちょうだい!」


 そう言って彼女は再び敵に突撃する。あの調子なら敵がこっちを追ってくる事は無さそうだ。

 むしろ彼らが全滅されるかも知れなかった。




 僕たちが機関室の近くまで来た時には、さっき通路で出くわした倍以上の敵がいた。

 けれども機関室の前の通路でたむろして、何やら言い争っている。


「何をしているんだ!? 敵は物陰に隠れるしかない能無しばかりだぞ! 火力も数もこちらが上なのに何故押しきれないのだ!!」

「ですが隊長、我々はライフルか拳銃しかもっていません。あのバリケードはかなり厚く積み上げているので、こちらの武器ではバリケードを破壊するのに時間がかかります」

「それにこの狭い通路では数の多さが仇となっています。前面に出て応戦できてるのは最大でも六人でしか無く、実際はこちらがジリ貧の状態ですから」

「なら全員突撃しろ! 多少犠牲は出るだろうがそれで突破できる!」

「ですから通路が狭くて無理なんです。こんなところで全員突っ走って、味方が転んだりしたら雪崩式に倒れて、最悪味方で通路を埋め尽くして通れなくなりますよ?」

「ええい! 何故誰もグレネードやバズーカを持ってきて無いんだ!? こんな無能どもばかり集めた馬鹿は誰だ!!」

「全部隊長が指示したんでしょ……」

「何か言ったか!?」


 どうやら機関室の前にバリケードが築かれていて、エンジニア達が抵抗しているらしい。それを突破出来ずにいて敵は立ち往生している様だった。

 機関室を取り押さえられてたら大変だったけど、その最悪がエンジニアのお陰で回避できていた。

 僕たちは敵をを一掃すべく、アガットにバフを掛けてもらい、僕と茅が前に出る。


「!? 後方より敵しゅヴァッ!」


 こちらに気づいた敵が知らせようとしたが、彼は僕の放った黒弾を食らい吹っ飛ぶ。

 それに気づいた敵は慌てて僕たちを迎撃しようと銃を構えたけど少し遅かった。


 前に出た茅が右手に持つ青い刀身の妖刀『綿津見わたつみ』を振り切った。

 この青い妖刀は人や物を切り裂く事は出来ない。その代わりエネルギーや『霊』を切り裂くことはできるらしい。

 綿津見に切られた敵兵は意識を失い、糸が切れた人形のように崩れ倒れてしまった。


 その後ろにいた敵兵が慌てて銃を茅に放つ。けれど、アガットのバフで身体能力と反射神経が格段に上がっていた彼女は、僅かに上体を反らして銃弾を躱した。

 二発目を撃とうとした敵だったけど、その銃身が半分に短く切り裂かれた、かと思ったら銃が燃え上った。


 何が起こったか分からない敵は思わず銃を手放したが、その隙に茅が綿津見で彼を切り払い、その意識を刈り取った。


 敵の銃を切ったのは茅のもう一つの妖刀、『禍津祓火まがつはらひ』と呼ばれる赤い刀身の小太刀だった。

 刀身から火を出す妖刀で、とてつもない切れ味を誇るらしい。

 前にヘルタさんが「オリハルコン製の盾を真っ二つにした時は自分の目を疑った」って言っていた。


 そりゃそんな希少な金属で出来た盾をスパスパ切られたら、たまったもんじゃないだろうなぁ。

 あれ何でできてるんだろう?


 そんな事を考えつつ、茅は禍津祓火で敵の銃を切り裂き、綿津見で敵を気絶させていく。

 僕も黒いオーラの盾で敵の銃弾を防ぎつつ、反対側のトンファーで敵を立て続けに打ちのめしていた。


 その僕たちの取りこぼしをパウリーネとアガットが後方でフォローして打ち倒し、僕たちは敵を削り続けていた。

 その地獄絵図を見ていた敵の隊長は金切り声を上げて喚き散らした。


「き、貴様ら! 状況を分かっているのか!? この俺を誰だと思っている!?」

「私達、あなたの事知らないんだけど?」


 本当にそうだ。茅の言う通り僕たち異世界から来たから彼が誰か全然知らない。

 この世界の出身のパメラさんなら知……らないだろうなぁ。

「今回の任務でそんな惑星があったのを初めて知った」なんて言ってたし。


 そんな僕たちの態度が舐められてると感じた敵の隊長は憤慨したようで、聞いてもいない自分の事をまくし立てた。


「ふざけるな! 俺は惑星メンテー自治区の総督の息子、宇宙隊隊長イーサン・ヴォイジャーだぞ! 下級市民が無礼千万な!!」


 いや、異世界から来た僕たちにそんなの関係ないよ……ん? 総督の息子だって?


「……そんな偉い人の息子がコソコソと、ガンダルヴァに入り込んで何をしようとしていたんだ?」

「ハァ? 馬鹿かお前は? そんなのガンダルヴァを拿捕だほするためだろうが! そしてコイツを手土産に俺達の地位を確かなモノにするのさ!」

「『俺達』ってあなたの父親の総督も? 何で親子揃って帝国に寝返ろうとしているのよ?」

「そんなの決まっているだらう? あの腑抜けた自治区の知事や議員の元のいたら、一生卯建うだつが上がらないからだよ。かと言ってクーデターを起こしても連合の本軍が着てすぐに鎮圧されるのは目に見えているからな。だから帝国に援助を頼んだのさ。ただあいつら何か信用できる証を見せろと言ってきてな」

「…もしかしてそれがガンダルヴァを応援に寄越した理由なの?」

「そう、シャイニングメテオズが復活するって聞いていたからな。それを帝国に教えたら、あいつら目の色変えて俺たちにこの作戦を提案したんだ。それでこの船を拿捕出来たらクーデターを支援する。そして帝国での出世も約束するってな」

「そう言う事でしたか……」


 頭の足りない総督の息子のお陰で、今回の話の全貌が見えた。

 こんな浅ましい作戦にとうとう僕たちは引っかかってしまったのか。なんかやるせない。


「そういうわけだから運が無かったなお前ら? だが俺も鬼じゃ無い。大人しく投降すれば命バゴヴアァァ!!!?」


 何を勘違いしたのか、アホな敵とその作戦に呆れてうなだれていた僕たちを見た敵隊長は、僕たちに降伏を勧告しようとした。

 けれど、それを言い終わらない内に猛スピードでいつの間にか来ていた芽亜里が、加速に乗った飛び蹴りを敵隊長の鳩尾に食らわせた。


 矢のような鋭い飛び蹴りを食らった敵はほぼ水平に吹き飛び、後方にいた彼の部下を八人は巻き込んで、十メートル位後退してから止まり、気絶したのだった。


「……ブリッジを狙っていた別働隊を全部やっつけたからここに来たけど、何かあった?」

「いや、なんでもないわ。むしろ芽亜里ナイス」


 乱入した魔法少女は状況を理解できていなかったけど、直感で敵のリーダーを倒してしまう。

 隊長を倒された敵軍団は最初から士気が低かった事もあり、あっさり降伏したのだった。




 一方、ガンダルヴァから出撃したメイガス隊は、敵の人型機動兵器NGMを引き付けていた。

 だがガンダルヴァが敵艦に取り憑かれた事により、NGM全機がメイガス隊に襲いかかっていた。

 元々囮としてスピード重視の装備を取り付けていたメイガス隊は、二百近くの数を相手に何とか凌いではいたが、母艦が敵襲にあった焦りが連携に綻びを出し始めていた。


『くそ、敵を引きつけてもガンダルヴァがあれじゃあ意味がねえ!』

『隊を分けてガンダルヴァの救援に向かうか!?』

『今でもギリギリ持ちこたえているのに無理よ!! とにかく今は隙を待つしか無いわ!』

『それができりゃこんな苦労はしてねえよ!』


 焦燥感に駆られ、メイガス隊の面々はそれぞれ愚痴や罵倒が口に出てしまう。

 そんな中、メイガス隊の一人が敵の攻撃を回避したものの、完全には避けきれず左肩の小型ミサイルポッドが吹き飛んだ。

 更にその破片が背部のブースターに被弾し、不調をきたしエンストしてしまう。その兵士を敵のNGMがレーザー銃の銃口を向けた。

 シールドを装備していない兵士はそれを見て、全身の血の気が引き死を覚悟した。


 だが光が貫いたのはメイガス兵でなく、銃を構えた巨人の方だった。巨人の側面から、ビームが走り鋼鉄の巨体を貫き爆散させる。


 何事かとNGMの軍団がビームが来た方角に首を向けると、そこから今度はミサイル群や銃弾の雨霰、更には紫電が襲いかかる。

 その猛攻をモロに食らった人型機動兵器の一団は、三分の一が鉄屑と化した。

 その光景を見たメイガスを来た兵士達は呆気に取られたが、彼らに海賊船の制圧に向かっていたハズのヘルタが高速で近寄って来た。


『ヘルタ大尉!?』

『みんな無事!? 被害は!』

『ほ、報告します。装備の一部が破壊されましたが死傷者はいません。ただ、ガンダルヴァが敵艦に接舷されました。恐らく艦内に敵が侵入したと思われます』

『分かったわ。後は私達が敵を何とかするから、みんなはサポートに回って』


 そう言うとヘルタはブースターも無しに敵に向かって飛んでいく。その先にいるハズのNGMの軍隊は既にパメラ達と交戦していた。


 ミサイルポッドや荷電粒子砲ビームバズーカを撃ちまくり、プラズマの刃を纏う大斧を振り回し、巨人を真っ二つにするダークグリーンの重装騎士のパメラ。


 宇宙空間を気密スーツなしに魔法で自身を守りつつ、無詠唱で超高電圧の矢を作り出し、高速で魔法を放ち、次々と敵を貫いていく大魔道士のシアン。


 先の二人と比べると派手さは無いものの、0.51インチ径の弾丸を放つ、スナイパーライフルに改造した歩兵携行式レールガンを、正確無比に撃ち込み一撃で敵を沈める狙撃手マルコ。


 そして宇宙空間を縦横無尽に飛び回り、掌からビームを放ち次々と敵を撃ち落とす最強の女兵士ヘルタ。


 先の奇襲でも手痛い打撃を受けたNGMの軍隊は抵抗を続けたが、この四人の容赦無い猛攻により壊滅していった。


『よし、このまま敵艦隊も叩くわよ。私が敵旗艦に向かうから二人は周りの僚艦を相手にして。マルコは援護射撃をお願い』

『分かった』「少し骨が折れそうだな」『…やれやれ』


 およそ少数精鋭の隊長と思えぬ大雑把で無茶な指示を、深い付き合いの戦友たちは了承した。

 そしてヘルタは真っ直ぐ敵旗艦に突っ込んでいき、パメラとシアンは左右に分かれ敵艦隊の正面から攻撃する。

 マルコは距離を取りスナイパーライフルで味方を援護する為、的確に敵艦の砲台を撃ち抜いていく。


 手負いとはいえ十数隻もある艦隊を、たった四人の生身の人間が相手取るなど普通ではない。

 だがシャイニングメテオズ、とりわけヘルタ、パメラ、シアンの三人は『普通』などという次元をとうに超えた怪物だった。


 たった数人の敵を相手に、かつて銀河系を支配下に置いていた帝国の一個師団艦隊は大軍を相手にするかの様に艦砲やミサイルを撃ちまくる。

 だがそんな抵抗も虚しくビームや稲妻等に撃たれた戦艦が爆発し、一つ、また一つ無残な鉄屑へと変わっていく。


 その地獄絵図を遠目で見ていたメイガス隊は、味方とはいえ空恐ろしいものを感じていた。




「一時はどうなる事かと思いましたが、何とかなりそうですね」

「ああ、艦内の侵入者達も鎮圧した様だし、コッチを狙っていた敵艦隊もヘルタ達に注意が向いている。後はこの船に取り付いた『コバンザメ』を排除しないとな」


 芽亜里達の活躍に、ヘルタ達の迅速な帰還で戦局は大きくこちらに傾いた。

 ガンダルヴァのブリッジから、戦場の様子を見ていたガリプが安堵の溜め息を吐く。その隣の艦長席に座ったクリスも同じ思いだった。


 あとは彼らが降参するか逃げるか、敵が意地を張って自軍の艦隊を全滅させるかのどれかだった。

 利口な指揮官なら早く、先の二つを選ぶだろうが、帝国の軍人は無駄にプライドが高いのが多く、後者を選択するという愚行を犯すことも珍しくない。


「艦長、ガンダルヴァに取り付いている敵艦から入電、『投降する、全ての指示に従うから船員の命の保証をしてほしい』との事です」


 ガンダルヴァに取り付いたメンテーの艦艇から降伏を申し出てきた。


 まだコッチの方がマシだな。


 帝国の石頭よりは賢いと感心する艦長。抵抗さえしなければ乱雑に扱うつもりは無い。

 とはいえこの場で保証しても彼らの身柄は後で連合に引き渡す事になる。


 そのまま連合に引き渡して、彼らの処遇を連合に任せるのがOCMMとしては当たり障りの無い対応だろう。

 だがクリスは面倒事は嫌いなクセに変に義理堅いところがあった。


 裏切り者は極刑と連合の法で決まっている。

 このまま彼らを引き渡せば、彼らの「命の保証」という投降条件を反故する事になりかねない。かと言って引き渡さない訳にもいかない。


 茅の報告だと彼らは渋々命令に従っただけらしい。そこを説明して責任を首謀者に押し付け、何とか減刑を嘆願するのが精々だろう。


「面倒くせぇ」


 そんな軍人らしかぬ甘い事を考えている艦長はいつもの口癖をこぼした。

 そんな艦長を覗き込んでいたガリプは、彼の心情を感じ取ったのか思わず苦笑している。


 だがそんな緩い空気をブリッジに入った報告が一変させた。


『艦長! 大変!』

「芽亜里? 何があった」

『捕虜の一人が逃げ出したわ! 今クロムが追っている!』

「ハァ!? お前らがいながら何してんだよ!」

『全員武装解除させたから油断しちゃった…… 一人だけだしすぐ捕まるとは思うけど』

「分かった、応援を出す。念の為に当該区画の船員クルーは退避させ――」


 ドガァッ! 〜〜〜〜〜ォォォ……


 艦長が捕虜に逃げられた報告を受け取り、対応しようとしたその時、ガンダルヴァが大きく揺れた。

 そして非常事態を知らせる警報が鳴り響き、ブリッジ内を赤いランプの光が回転しながら照らし出した。


「今度は何だ!?」

「艦長! 艦内で爆発と思われる熱源を確認! 場所は左舷上部D区画の通路です! 同区画の気圧が低下! 爆発により通路の壁から装甲まで穴が空いたと思われます!」

「爆発だ!? あぁ、たくっ! 攻撃を受けた区画のクルーは直ちに別区画に退避、出来ないなら近くの部屋に避難してエアロック掛けろ! 非常用隔壁も出して閉鎖しろ! 空気漏れを防げ!」

「了解!」


 攻撃を受けた艦内から穴が空き、そこから空気が外に逃げていく。その吸引力は凄まじく、爆発源の近くにいたを無慈悲に宇宙空間に放りだした。

 同じ区画にいた船員達はその状況から逃れようと、艦内アナウンスに従い隣の区画へ逃げ出す。

 そこまで遠い者達は近くの部屋に逃げ込み、ドアを閉めエアロックをかけ部屋の空気を確保する。

 それと同時に、穴の空いた通路の両側の天井と床から隔壁がせり出し、通路を封鎖した。

 穴から漏れ出た空気が無くなり暴風が収まるが、艦内の空気が失われたのは全体のホンの一部に留まった。


「区画の閉鎖を確認。艦内の気圧安定しました」

「危ねぇなったく……面倒事は勘弁してほしいっつうの」


 艦内の被害を最小限に抑える事が出来たクリスは、ズレた帽子を整え安堵の溜め息を漏らした。


「しかし……なぜ爆発が?」


 だがガリプが艦内に穴を開けた爆発について疑問が湧く。敵は爆発物や重火器の類は持って無かったハズだ。

 だがそんな疑問を考えるを間もなく、知らせが入る。


「艦長、SPS(空間測位システム)を確認しましたが、クロム一等兵の信号が艦外から出ています! どうやら彼は今、宇宙空間にいるようです!」

「何だと!?」

「まさかさっきの爆発に巻き込まれて!?」


 艦内から発生したトラブルは宇宙空間に放り出されつつも、まだ一悶着をもたらすようであった。

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