第37話:世界樹の新たなる再生。

実際のところ、世界樹が枯れて存在自体がなくなった場合、シルビリアースの

マナのバランスは崩れるかもしれないが、シルビリアースそのものが完全に

滅んでしまうことはないらしい。


そのことで何が起きるのかは誰にも分からない。


世界樹を作ったアルフェンリルでさえ、これは初めてのことだったので、

分からないことだった。


だからシリルビリアースに生存する人達の大半は世界樹に関心はなかった・・・

と言うよりも世界樹を救える手立てを見つけらなかっただけのことだった。


シルビリアースにいるワルキューレのそのほとんどが世界樹の魂を分けて

もらっている。

だからリンデやヴァーラにとっては他人事ではなかった。


リンデたちが月へ行っている間にヴァーラはバロールに住む光のエルフ、

ベルクウェンディに会いに来ていた。

ベルクウィンディってエルフは女性のエルフらしい。

見た目はヴァーラとさほど歳は変わらないように見えるが、エルフの歳は

分からないらしくて何百年も生きてるエルフもいるらしい。


「ヴァーラ、分かってますよ」

「ルートガルザが私のところに来る前から世界樹に異変がおきてることは

すでに分かっていました」


「ですが個人の力でどうこうなるものではありません」

「暗闇の妖精を排除することはできますが、私には世界樹そのものの命を

救うことまではできません」


「ベルクウェンディー、それはたぶん大丈夫って思うよ」


「今、ルートガルザとリンデとリンデの彼氏が月の精霊アルフェンリル様に

会いに行ってるから」

「みんなで力を合わせたら、きっと世界樹を救える」

「アルフェンリル様さえ腰を上げてくれてたらね・・・きっと今頃、世界樹の

ところに向かってると思うよ」


「そうですか・・・アルフェンリル様が出張ってくるなら、もしかしたら世界樹を

救えるかもしれませんね」


「そう言うことなら私たちも行きましょう」


ってことでヴァーラとベルクウェンディも世界樹へ飛んだ。


リンデたちが世界樹に着いた時、暗黒の妖精ドヴェルガたちが死の歌を歌っていた。

その光景を見た、アルフェンリルが言った。


「あの者たちの歌をすぐにやめさせねば・・・」


「世界樹の寿命がどんどん尽きようとしている・・・」

「アルズの泉も枯れようとしている・・・」


「世界樹の異変は人々が争いをやめぬからであろう・・・だが、それは自業自得

と言うもの・・・」

「ですが、この木が枯れてしまうと、さまざまな生き物に影響を与えよう・・・」


「シルビリアースからワルキューレがいなくなればヴァルハラの秩序も乱れます」

「なんとかせねばなりませんね・・・」


少し遅れてヴァーラとベルクウィンディが現れた。


「ごめん・・・遅くなった」

「ベルクウェンディを連れてきたよ」


「ヴァーラ、ご苦労様」


すぐにルートガルザが即座に労いの言葉をかけた。

こう言うところをスルーしない男がモテるんだろうな・・・。


「ルートガルザ・・・」


ルートガルザはヴァーラを優しく引き寄せたてキスした。

もはや自分たちの世界を構築していた。


「アルフェンリル様・・・ご機嫌麗しゅう存じます」

「ベルクウィンディ・・・久しぶりだな・・・」

「元気だったか?」


呑気に挨拶なんか・・・どうでもいいだろ、早くやろうよって俺は思った。

せかすと月の精霊さんが怒って月へ帰っちゃうと困るし・・・ましてや

リンデの母ちゃんだし・・・。


もしかしたら将来、俺の義理の母ちゃんになるかもしれない人だからな。


「では、さっそくドヴェルガたちのキミの悪い歌声をやめさせましょう」


ベルクウェンディはそう言うと、持っている杖の先から、聖なる光を

暗黒の妖精たちに向けて放った。

光を浴びた妖精ドヴェルガたちは、あわてふためき空気中に飛散しながら

溶けていった。

わずかに残った妖精も 大慌てて歌うのをやめて一目散にどこかへ飛び去った。


アルフェンリルが言った。


「 この世界樹はもう救えないかもしれませんね」

「だが、方法はまだあります・・・」


アルフェンリルは自分の首から下げていたロケットの中のブルーの液体を

アルズの泉に垂らした。


「これで、この世界樹は枯れても、また新しい芽が出てくるでしょう」

「ヴァーラもリンデも他のワルキューレも世界樹とシンクロしている者たちの

命は救われると思いますよ」


結局、今の世界樹は寿命が来てるってことで救えなかったみたいだ。

でもリンデやヴァーラにはなんの影響もでなかった。

それは枯れゆく世界樹の根元から、新しい芽がではじめたからだ。

みんなの運命は、新しい芽が引き継ぐ結果になった。


なんだか、めっちゃ大げさなことになったけど、リンデが元気なら俺は

それでよかった。

すべてが終わった後、リンデはアルフェンリル・・・自分の母親を月へ

送って行った。

親子で積もる話もあるだろう。

帰って来るのは、ゆっくりでいいからって、リンデに言っておいた。


ヴァーラはベルクウェンディを送って行った。


俺とルートガルザは、俺の世界へ先に帰って二人を待つことにした。


それからしばらくして、聞くところによると世界樹の新芽は順調よく育ってる

って話だった。


世界樹が元気でいるかぎり、リンデは元気でいられる。


世界樹の新芽はオーディーンの元から遣わされたアイルナ、イルドネ、ウランネルと言う三女神の監視下の元に大事に育てられてるとのことだった。


つづく。

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