第34話:世界樹の危機。

後で分かったことだが、ルートガルザの浮気はまったくの人騒がせだった

みたいで、リンデが向こうへ行ってルートガルドに会って確かめたところ・・・。


ルートガルザは女性の魔法使いに頼まれて南のリマリルって森に最近暗闇の妖精

ドヴェルガたちが頻繁に出没してるってことで不吉だからドヴェルガが来れない

ように結界を張ってくれって頼まれたらしい。

そのせいで女性の魔法使いと仲良くやってたって誤解されただけだった。


暗闇の妖精は、世界に異変がやってくる前兆と言われていて不吉な存在で忌み嫌われる妖精なんだそうだ。

女性の魔法使いの中でも、ヒーリング系に特化してる魔法使いは独自で結界を

張れない魔法使いもいるらしいからルートガルザが代わりに結界を張りに行ったってわけ。


ところが、それがルートガルザの浮気どころの話ではなくなっていたのだ。


その女性の魔法使いがルートガルザに話したところによると、いつからか

暗闇の妖精が少しづつ出没しはじめたらしい。

この不吉な現象はシルビリアースそのものに関わる、何か悪いことが起きてる

前兆かもしれないって話だった。


そして暗闇の妖精はこの世界の生命そのものと言われる世界樹に徐々に集まり

始めてるって話だった。

世界樹って言うのは巨大なトネリコの樹で、世界の中心に生える神聖なもの

だって話だ。

その世界樹を中心にシルビリアースはなりたっている。


つまりは、その世界樹の寿命が尽きかけてるってことらしい。

何万年、何十万年の月日を生きていた世界樹が、こともあろうに枯れ始めたのだ。


そこに持ってきて暗闇の妖精の出現によって世界樹の生命が尽きかけてることに拍車をかけてるらしい。

妖精ドヴェルガは空気中に毒を吐き、光をさえぎる。


そして世界樹の生命が尽きると、その恩恵を受けている人々の多くが滅んで

しまうらしい。

それは俺にとっては絵空事の話で、俺やリンデの生活にはなんの関係もないって

思ってたんだ。

シルビリアースに住む人たちの問題って・・・。


でも、それは大きな誤りだった。


何が俺にとって、問題なのかって言うとリンデや他のワルキューレ、それに

ヴァーラも含めて、みんな世界樹の生命とシンクロしてるってことだった。


それはなんでかって言うと・・・。

リンデはもともと、オーデイーンと精霊の女性との間に産まれた女神で残念ながら

死産だったため、オーディーンは世界樹の魂を少し分けてもらってリンデに与えた。

そして世界樹の根元にあるアルズの泉の水を飲ませてリンデを育てた。

それゆえリンデと世界樹の生命は繋がっているのだ。


他のワルキューレもみんな、世界樹の生命とシンクロしている。

だから世界樹の生命を救う方法を考えないと大変なことになってしまうって

訳なんだ。


そうか、それで最近リンデが疲れやすくなってたんだ・・・。

世界樹の寿命のせいだったんだ。

でも、今の俺には、何の手立てもなくて神に祈るしかないわけで・・・。


で、そんな話の中、ルートガルザとリンデはこっちの世界に帰ってきた。


「ルートガルザ、ごめんね、誤解してて」


ヴァーラは平謝りに謝った。


「いいんですよ・・・私が浮気なんかするわけないじゃないですか」


「私はセイ様とは違うんですよ」


「お〜い・・・俺だって浮気なんかしねえよ」


「私はヴァーラだけですからね」


「おい、無視かよ」


「あなた以外の女性のところへなんか行くわけがないでしょ」

「って、ことで今夜あたり、いかがでしょう〜?

「私も魔法使いであるまえに一人の男性ですからして・・・」


「いいよ・・・」


お〜お〜予約入れてるよ・・・いいよ、ああいいよ、あんたらで好きにやってくれ。


「リンデ様んちなんか、毎晩やってるみたいですよ・・・」


「え?・・・よく飽きないね」


「この人たち、おかしいんですよ」

「ヴァーラ・・・私が、超絶倫だからって呪い殺さないでくださいね」

「快楽の海に沈んでから昇天するのは受け入れますけど・・・」


「じゃ〜ふっか〜い海の底に、上がってこれないくらい沈めてあげる」


「のほほ〜それは楽しみです」


そう言ってルートガルザとヴァーラはラブラブで自分たちの住処に帰って行った。


「勝手にやれ」

「あいつらだって俺たちに負けないくらいエロエロカップルじゃないかよ」


俺は帰ってきたリンデから世界樹の話を聞いてたので、悠長にエッチなんか

してる場合じゃないだろうって思った・・・その時だけね。

けど、まあ滅ぶまえに好きなだけ、やっちゃうってのもありかもしれないな・・・。


よく地球が滅ぶまでに食べたいモノとかやっておきたいことは何って言う質問・・・

ラスメシとかバケツリストなんて言うけど・・・俺はやっぱりラスエッチかもな。


世界樹が危ないってのに、こっちの世界は対岸の家事状態って言うか、

人類の誰も世界樹のことなんか知らないことだし、知らないから誰も

関心を示すことはない。


でも俺たちだけは世界樹が枯れそうだってことを知ってる。

なんとかしないとリンデの命が危ないんだ・・・。

ここは真剣に取り組まねば・・・。


「じゃ〜そういうことで、うちもしようかリンデ?」

「シルビリアースが危ないって言うのに?」


「だって、いますぐどうにか、できるってもんじゃないだろ?」

「大丈夫・・・リンデは俺がかならず守るから、俺の命に代えて」


「世界樹を救う方法をルートガルザたちと考えようと思ったら、エッチしに

帰っちゃったし・・・だから、しょうがないだろ?」


「ってことで・・・ね?」


「男の人って、暇さえあれば、そのことしか頭にないんだね」

「あ〜セイちゃんだけか・・・」


「俺は、普通だよ・・・ノーマル、ノーマル」


「ノーマルな人は毎日エッチしたいなんて言わないでしょ」


つづく。

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