第32話:ヴァーラ・スキャールヴ。

女は入ってくるなり、俺たちのことを無視して俺のバイクのほうに興味を持った。


「ひゃーなにこれ?・・・こんなの見たことないわ・・・」

「すっげえ・・・私の使い魔と同じドラゴンみたい・・・」


その女はリンデと同じことを言った。


「ヴァーラ、よそ見しないで、こちらへ来てください」


「あ、ごめん」


その女はルートガルザに呼ばれて俺たちのところまで来た。


「今、ルートガルザ、ヴァーラって言わなかった?」


「たしかに・・・俺もそう聞こえた・・・」


「セイ様、リンデ様、改めてご紹介します」

「ディースのワルキューレ、ヴァーラ・スキャールヴです」


「ほんとだ・・・ヴァーラ」


その女を見てリンデが言った。


改めてヴァーラのことをおさらいすると、リンデがオーディンの下で働く

ノルンのワルキューレに対して、ヴァーラは自分の主人を持たず常にフリーで

動いているディースのワルキューレ・・・言わば傭兵のような存在で、

時によって敵にも味方にもなる、縦横無尽なワルキューレなのだ。


彼女は黒髪で普段はひっつめ三つ編みにしていて、瞳も黒くて、でもって

黒い戦闘服を身にまとった乙女戦士。

破滅と不吉の未来を予言する、人の運命に介入する役割を持つらしい。


リンデとはまた違って色気ムンムンの妖艶なワルキューレだった。


「ヴァーラ?」


「久しぶりだね、リンデ・・・」


「あ、久しぶりね、ヴァーラ」

「でも、なんで?ルートガルザ・・・なんでヴァーラが?」


「実はですね、私たち付き合ってるんですよ」


「うそお・・・まじで?」


俺たちは二人同時に驚いた。


「私たち、皇帝の魂をヴァルハラに送る儀式の際の一悶着あった後、仲良く

なりましてね」

「ヴァーラは私のどストライクのタイプな方なんです」

「それで、正直に自分の思いを、さりげなくお伝えしたところ、てっきり

断られるかと思っていましたら、おっけ〜ってお返事をいただきまして・・・」


「で、意気投合しまして・・リンデ様のことや、こちらの世界のことを

話しましたところ非常に興味を持たれたようで私について来るって

おっしゃるもんですから・・・それで、お起こし願った次第です 」


「あの〜リンデに聞いた話ではヴァーラさんって、そのリンデとは宿敵

なんじゃないんですか? 」


「それはまあ、時と場合によって、と言うことではないんでしょうか?」

「そうですよね、ヴァーラ 」


「むこうでは敵の時もあったけど、こっちは平和そうだから戦う理由

もなさそうだし・・・リンデには何の遺恨もないからね・・・」


「まあ、たしかにそうですね・・・ここは平和ですからね」


「ってことで、今日からヴァーラは私と暮らしますから、よろしく」


ルートガルザは自慢そうに嬉しそうに言った。


「はあ・・・よろしく〜」


ま、いいようにやってくれたら・・・俺は関係ないけど・・・。


「ヴァーラ・・・よろしくね、これからは仲良くやりましょ」

「まあ、それにしてもルートガルザとヴァーラがね・・・分かんないものね」


「男と女なんてそんなもんですよ、リンデさん」

「あなたがたも、私たちと同じでしょ・・・異種どうしで結ばれるって点ではね」


なんか悟りきったようなことを言うルートガルザだった。


ってわけで、ヴァーラ・スキャールヴが俺の世界に引っ越してきて 近所付き合いが始まった。

それにしてもルートガルザって、もっと清楚で純情そうな女性が好きなのかと

思ってた。

先入観って怖い。

あんな、色気の塊みたいなヴァーラとできるなんて分かんないもんだよな。


それにルートガルザって、なんか顔が広そうだし、まだ他にも誰か連れて来そうな

気がした。


ルートガルザとヴァーラって、あの二人もうエッチしたのかな・・・?

ヴァーラの誘惑でルートガルザがタジタジになってる姿が浮かんで笑えた。


つづく。

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