第30話:どこにでも現れる魔法使い。

「今になってみると、リンデと出会ったことも懐かしいよな」


それはもう遠い出来事のように思えた・・・。


「あの時、セイちゃんに見つけられてなかったら、私はどうなってたんだろ?」


「君をみつけることが俺の運命っていうか宿命だったんだよ」


「そうだね・・・きっとそうだね・・・私、セイちゃんと出会えてよかった」


「俺もリンデと出会えてよかったよ」


俺たちは、お互い感慨にふけりながら砂浜を歩いた。

どこまでも続く砂浜に残るふたりの足跡・・・それは永遠に続くようだった。

永遠なんてあるはずないのに・・・。


青くて深い海、どこまでも広がる空を見てると永遠はあるんだって思いたかった。


家に帰ると、おやじもパートから帰っていてリンデを見て喜んでくれた。


お袋はリンデのために、また豚汁を作ってくれた。

リンデは美味しい、美味しいって言いながら腹一杯豚汁を食べた。

ギャル曾根に負けないくらい、よく食う女神様。


今夜は、ここでゆっくりしてリッチな家に帰るのは次の日にすることにした。

あわてて帰る必要もないからね。


ゆっくり五右衛門風呂に入って・・・さすがに親父とお袋がいたから、

リンデとは一緒には入らなかったけど・・・。


お袋が出してくれた浴衣を着た女神様。

髪は、まとめてアップにしてあった。

浴衣の襟からのぞく首筋・・・浴衣の裾から見え隠れするリンデの足・・・

セクシーだし、めちゃ可愛いし・・・だから俺は欲求を抑えられなかった。

まあ、いつでもリンデを見て欲情してる俺だけど・・・。

俺とリンデは縁側に座って爽やかに吹く夜風に涼んでいた。


「で?・・・せっかく俺の実家に来たことだし・・・ね」


「何が、ね?・・・なの?」


「だから〜・・・」


「ダメだよ、お父さんとお母さんがいるんだからね」


「だってさ、環境が変わったらしたくなるじゃん」


「セイちゃんは環境なんて関係ないくせに・・・」


「なかなかいいところですね・・・」


「・・・・・・・」


「え〜っ、誰?・・・なに?・・・その声はルートガルザ?」


俺が振り向くと、そこに面倒見のいい魔法使いがいた。


「お〜っと、いつの間に・・・」

「どこにでも現れるやつだな」

「なんでここにいるんだよ、どうやって俺の田舎の場所を知ったんだ?」


「知りませんでした?私、人の心も読めるんですよ」


「え〜そんなことまで、できるのか〜って・・・」


「ルートガリザ、そういうことはやめてくれる?」

「プライバシーの侵害だよ・・・」


「あ、すいませんリンデ様・・・私がお聞きする前に、お二人が旅立って

しまいましたからね」


「親父やお袋よりルートガルザがいたら余計できないじゃん」

「欲求不満の上にストレスたまるよ、俺」


「向こうに帰るまで、我慢我慢」

「帰ったら、もういいって言うくらい私の愛で満たしてあげるからね」


「セイ様の田舎って空気も美味しいし、緑も多いし景色も綺麗だし、

ほんといいところですね〜」

「私、こちらに移住すればよかったです」


「いやいや俺から言わせてもらえばルートガルザやリンデのいた世界の方が

緑も多いだろうし空気だって綺麗なんじゃないかって思うけど・・・」


「それはたしかにそうですけど、こちらの世界ではってことです」


「あ〜そういう意味では、ここは環境はいいかもな・・・」

「ルートガルザ、いっそここに住めば?・・・って言うかさ・・・いつも

いいところに現れるよね」


「わざとじゃありませんよ」


「私に遠慮なんかけっこうですから・・・どうぞセックスでもエッチでも

ご自由にどうぞ・・・」


「人が見てる前でなんかできるかよ!!」


「私、大丈夫だよ・・・」


「うそお〜」

「さっき、親父とお袋がいるからダメって言ったじゃないかよ」


「えっ、そんなこと言ったっけ?」


「言ったよ、たしかに」


「相変わらずラブラブですね・・・」


ルートガルザは、からかうようにそう言った。


「いいから・・・もう帰ってくれないかな」


つづく。

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