第29話:リンデを連れての帰郷。

俺は毎日、ルートガルザに買ってもらったバイクで大学へ通っていた。

こんなデカいバイクになんか乗ったことがなかったから最初はビビりながら

大学に通った。


雨の日も風の日も・・・他に選択肢がなかったからね。

その間も相変わらずリンデは自転車で大学まで弁当を持ってきてくれていた。

さすがに雨が降った時は、俺は学食を利用した。


リンデが雨の中を自転車に乗って弁当を届けるなんて、さすがにそんなこと

させられる訳ないもん。


バイクの運転にも慣れた頃、俺はリンデをバイクの後ろに乗せて俺の田舎に

帰ってみようと思った。


田舎の親父とお袋に元気で過ごしてるリンデの姿を見せたかったからだ。

バイク用品のショップへ行っってリンデ用のフルフェイスとライダースーツを

買ってやった。


俺たちは朝、早々に家を出た。

一般道と高速を走っておおよそ300キロあまり・・。

リンデは途中から、お尻が痛いって言いだした。

可愛くて小さなお尻が悲鳴をあげていた。


ドラゴンのタンデムシートは硬くて煎餅みたいだから誰かを後ろに乗せての

長距離は向かないんだ。

だから俺は時々インターや道の駅に寄って休憩しながら後ろのリンデのことを

気遣いながら走った。


「指輪があるから一気に田舎に飛ぼうと思えば飛べたんだけど、緊急でもないし

それに、それじゃつまんないと思ってバイクにしたけど、キツかった?」


「大丈夫だよ・・・私、セイちゃんの背中にくっついてるの好きだから」


リンデはお尻が痛いっていいながらでも頑張って俺にしがみついていた。

そうして俺たちは、なんとか無事故無違反で田舎の実家にたどりついた。


「ただいま」


「お〜い・・・誰かいる?」


すると奥から、お袋が出てきた。


「まあ、あんた連絡もしないで、どうしたの?・・・」


「急に思いついてね・・・それより、ほらリンデだよ」


そう言って俺は、俺の後ろにいたリンデを前にいざなって改めてお袋に紹介した。


「お母様、お久しぶりです・・・いつぞやはお世話になりました・・・」

「あの時のご親切と豚汁の味は忘れられません」


「まあ・・・あなた、元気してたのね」


「聖はズボラだから、あなたに飽きられてとっくに捨てられちゃってるのかと

思ってたわ」

「結局、あなた自分の家には帰れなかったのね?」


「いいえ、一度向こうに戻りましたけど、こちらに帰って来たんです」


「あ、そうなの?・・・せっかく戻れたのに?・・・」


「私、セイちゃんと暮らす幸せを見つけましたから」


「こりゃまた、びっくり・・・物好きだね」


「物好きって・・・彼女に失礼だし、借りにも俺はお袋の息子だぞ・・・

俺だってモテるんだからな」

「で?・・・親父は?・・・釣りにでも行ってるの?」


「年金だけじゃ暮らしていけないからね・・・パートに出てるんだよ」

「まあ、そんなところで立ち話もなんだから中に入りなさい」


俺はリンデの手を引いて懐かしの家に入った。

やっぱり、田舎は・・・ふるさとは落ち着く。


ここには俺の子供の頃の魂がまだ生きて走り回ってるんだ。


しばらくお袋と話をしてから俺はリンデを連れてリンデを見つけた海に行って

みることにした。


リンデを見つけた季節と違って、今は夏。


「毎年、暑くなるな・・・」


照り返す太陽・・・眩しくて、リンデの首筋に流れる汗がとってもセクシーに

感じた。

キャンプを楽しんでる家族連れ・・・砂浜で戯れる子供達・・・。


「今になってみると、リンデと出会ったことも懐かしいよな」


それはもう遠い出来事のように思えた・・・。


つづく。


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