第28話:前から見るとドラゴンみたい。

二日後、ちんたらちんたら自転車をこいでリッチな家に帰ると俺の家の

玄関前にバイクが一台止めてあって、ちょうどリンデがそのバイクを眺めていた。


「リンデ・・・そのバイクは?」


「さっき届いたばっかだよ・・これがバイクって言うんだ」


「そうだよ・・・リンデは初めて見るんだよね向こうにはこう言う乗り物

ないんだ」


「ないない・・・なんだか、ちょと怖い感じ」

「そうね、前から見るとドラゴンみたい・・・」


「あはは、そうだね・・・車体も黒だし、流線型であっちこっち尖ってる

からな・・・」


「そのバイクでいかがでしょう?」

「気に入っていただけると、よろしいのですが・・・」


いつの間にかルートガルザが来ていた。


「いやいや気にいるもなにも、俺なんかにはもったいないくらいです」

「こんな贅沢させてもらっていいのかな・・・」


「ルートガルザ、ありがとう・・・でも・・・」

「セイちゃん・・・気をつけてね」

「安全運転でね・・・このドラゴン君、走りそうだから」


「うん・・・飛ばさないようにするから・・・」

「週末にでもリンデを乗せて、ツーリングに行くかな・・・」


「おふたりラブラブでツーリングとは解放的でいいですね」


ルートガルザは満足そうにそう言った。

ルートガルザが、こっちの世界に来てから俺とリンデの生活は180度変わった。


改めて納車されたバイクのタンクを見たら、たしかに見たことあるエンブレム

が付いていた。


「わ〜1000CCもあるのか?」

「200馬力だって?・・・このバイクって値段いくらするんだ?」


あとでネットで調べてみたら220万って書いてあった。


で、俺はルートガルザに、あんな高価なバイクはもらえないって言うと、

たちまち彼は急に機嫌が悪くなった。

以前、リンデが言ってた・・・ルートガルザの機嫌を、そこねたら面倒

だって・・・。


その言葉を思い出した。


俺は、あわてて今言った言葉を撤回した。


「あ、今言ったことは冗談ですからね・・・」

「ほんとは、めっちゃ気に入ってるから・・・超嬉しい・・・だから謹んで

頂戴します」

「ありがとうルートガルザ・・・」


「どういたしまして・・・そうですか?気に入っていただけましたか?」


「そりゃもう・・・これで学校まで不便なく行けます・・・」

「家と言いバイクと言いほんとになにもかも至れりつくせりで感謝です」


「何言ってるんですか、私たち友達でしょ?」


「へ・・・・」


「リンデ様の大事な人は私にとっても大事な人なんですから・・・」


「あ、そうですね・・・はい、友達です俺たち」


人は友達って言った時点から友達になる・・・そしていつしか大切な人に

なって行く。


俺はとっても打算的になっていた。

ルートガルザが、この世界にずっといてくれたら、なにかと重宝しそうだな

って思った。


たしかにルートガルザは、この先リンデのために大変な活躍を見せることに

なるんだ・・・俺もだけど・・・。


つづく。

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